表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
7/126

変な男たち




朝起きたらすべてが夢だったことに気付いた。

いきなりギャルに絡まれたりしてないし、合コンにも参加してない。あの国崎のボケと会ってない。

カフェで会話なんてもってのほか。


あーよかった、夢かあ。びっくりさせんなよぉ全く。

そーだよね、私がこんな面倒くさいことに巻き込まれてるワケないよね。


さ、今日も1限からだ。いつもやる気なさそうな教授に会いに行こう。

アハハハハハ………


―よし、

現実逃避はこれくらいにしておくか。そろそろリアルに戻らないと。


夢であってほしかったが、めったに着信の無い、私の携帯電話に来ていた1通のメールがすべてを物語っていた。


『今日、忘れるなよ。

          国崎』


そう、昨日の別れ際にメールアドレスを交換し(させられ)たのだった。

で、今朝早速来た連絡がこれね。

ご丁寧に名前まで入れてありますね、ハイ。


……………。


あーー、困った。

合コンのときより50倍はうろたえている自分に気付く。

なにしろ生まれたときからこの外見に、この性格。あんな生まれながらのスター☆みたいなヤツにどう対処していいか、全然分からない。

はーぁ、なんでまたあんなヤツと会うハメになるかな。正直会いたくねぇ。


あんな読めない男は初めてだ。

関わるとまたなにか厄介なことになる気がする。

いやそもそも、私をイジってそんなに楽しいか?

私はごらんの通りの本城那津よ?可愛いわけでもなければ、スタイルがいいわけでもない。

地味で、暗いし、貧相だし………あぁ、自分で言っていて空しくなってきた…。

とにかく、外見にセールスポイントはゼロ。かといって、中身に自信があるかって言われても微妙だけどさぁ。

…私って、男側からするとむしろ避けたいタイプじゃないか?

昨日だって、あのままサヨナラ。の方があっちにとっても都合が良かっただろうに。


……ホント、あいつ謎。


私はがしがしと頭を掻き、寝ぼけている脳を目覚めさせる。

そしてふらりと立ち上がり、そのまま洗面所に向かった。

そろそろ換え時な歯ブラシを口にくわえていると、ぼんやりとしていた頭がだんだんはっきりしてくるのが分かった。

思考を続ける。


――いや実際はまったく謎、というわけではない。一応、あいつが私なんぞに絡む理由は分かっている。

原因はあの例の、KYキャラだろう。私の予想以上にアレがウけ後を引いた。それだけだ。

あんなんやったから、国崎なんぞに興味持たれたんだ。

あーあ、こんなことなら変に意地はらずにひっそり息を殺して、地味で終わっときゃよかったよ、全く……。

『後悔先立たず』、だな。まさに。




洗面所を出て、頭をすっきりさせるためにコーヒーを入れる。さらに6枚切りの食パンを1枚、トースターに放り込む。普段朝食は食べない派だが、今日こそは国崎に言い負かされないためにもカロリーをとっておくことにした。トーストにかじり付きながらコーヒーを飲むと、幾分か落ち着いた気分になる。


さて。

もう過ぎたことを悔んだってしゃーない。やめとこう。

別に国崎は何をするってわけでもない。ただ私のことを珍しがってるだけ。

私はただ、今日を無難にやり過ごし、もう借りを作らなきゃいいんだ。

そしたらあいつだって、その内私のことなんか飽きるし。


…うし、頑張ろう、私。

私はガチャンとシンクの中に皿を入れると、ガッツを入れ、気合い十分に家を出た。





……何か、緊張してきた…。


時刻は11時50分。待ち合わせの10分前。

私は約束通り、例のカフェの白いイスに座って国崎を待っていた。

それにしても、あんなに90分の授業って短かったか?誰かが時計進めたんじゃないか?チャイムが鳴ったときビクッとしたのは初めてだぞ。

ふうと息を吐きだし、辺りを見回す。学生らしき男女が談笑しているのが見えるが、未だ国崎聖悟は現れない。

少し早く来すぎたかなと、私はデート前の乙女(キモイ)のようにソワソワとしながら視線を戻す。


――と、理学部の棟から標的である国崎がゆっくりと歩いてくるのが見えた。

少し長い茶髪を揺らしながら、長い足で1歩1歩近付いてくる。


…何、その余裕そうな顔。ムカツクな。笑顔なんか浮かべやがって。


「お待たせ。」


私の目の前にまで来た男はそうやって定番なセリフを吐く。から、


「待ってないよ、今来たとこ。」


私も、これまた定番なセリフを返した。

そのうちに国崎が私の前の席に座る。私はそれとほぼ同時に話し出した。


「えーっと、じゃあ、何奢って欲しい?昼はもう食べた?」


――先手必勝。当たり前だ、私は早く帰りたい。そして縁を切りたい。


「そう、急がなくてもいいって。お茶でも飲もう。」


私の心情を察したのか、国崎は呆れたように言いつつこちらをチラリと見た。

…あー、ゆっくり話すつもりはないから。昨日みたいにズルズルいくとか、冗談じゃないし。


「いや、借りは早く返したい性質なもんで。用事もあるし。」


『用事』をいやに強調して言い、ニコリと口だけで笑いながら国崎を睨む。


訳すと『とっとと飯を奢ってテメーと離れたい。私は忙しいんだ。』

国崎にも裏の意味は読めたらしい。苦笑をこぼした。


「…ククッ。やっぱお前、面白い。そんなに、俺が嫌い?」


嫌いです。言えないけど。


「高いもんでもいいよ、どうぞ。」


私は国崎の言葉を全無視して先を促した。

すると、国崎は口を閉じて少し黙る。何を言おうか迷っているのか、メニューを思い返しているのか。


「…じゃあ、スペシャル苺パフェ。」


…後者だった。てか、本当に高いヤツ頼んだな。

しかも甘党か。今流行りの甘党男子か。意外すぎるわ。


「OK。じゃ、待ってて。」


しかし彼の趣味に言及するつもりはない。

特にリアクションせず、私は鞄をもって席を立ちカフェに並ぶ人の最後尾に並んだ。


よしよし、後はパフェを買って終わりだな。結構簡単に済んでよかった。

国崎に会わないためならパフェでも何でも買いますとも。ええ。





さて。

無事に『スペシャル苺パフェ』を手に入れた私は国崎の元へ戻ろうとしたのだが、

―――何、アレ。

私からはヤツの姿が見えなかった。ものすごい女子の群に埋もれているのだ。

多分、20人前後はいるだろう。どいつもみんな顔を紅潮させているのが分かった。

それを見て、呆然と立ち尽くす私+パフェ。


…うわ、やっぱりすごい人気なんだ国崎のヤツ。危ない危ない。

これ以上関わったらあの内の誰かに刺されるところだったよ。…夜道とかで。


早めに見切りつけといて、助かったぁ、と心の中で安堵のため息をつく。

しかし、どうしよう。パフェを渡して終わり、のハズが最後にこんな障害が。

いや、モチロン渡すよ?いったん約束したことは、最後までやりとおすのが義理というものだし。

でも、かと言ってこんな群れの中に突っ込む勇気もないしなあ…。


う~ん、とうなっていると。


「ナッちゃん!!」


国崎…じゃない男の声が恐ろしいことに集団の中から聞こえた。

まぁ、あいつは私のことを図々しくも呼び捨てで呼ぶからな。

こんな某清涼飲料水みたいには呼ばない。


…ていうか、今、私を呼んだのか?他に夏子さんとかいるんじゃないか?

夏子さん(仮)?呼ばれてますけど。


「本城那津さーーん!!」

「っ!!?」


だが次いで耳に届いたのは、明らかに自分の名前。ビクッとして思わずパフェを取り落としそうになった。

あ゛ーー!フルネームで呼ぶなよ!何か予想はしてたけど、やっぱり私のことですか!!

あわあわと分かりやすくうろたえる私。絶賛パニック中なう。


うわ…女子のみなさん、冷たいまなざしを一斉にこちらに向けないで。

ん?つーかこの声、聞き覚えが…。


「あ、ちょっとキミタチ、通してあげて!」


混乱の最中色々ごちゃごちゃと考えてると、女子の中にいるらしいその男の声が響きパッと道が開けた。

――直後、私は衝撃的な光景を目にする。


増  え  と  る  。


…正確に言えば、合コンに参加していたイケメン全員が、国崎を囲んでイスに座っていたのだ。


…………。

っっそうきたかーーー!!


予想をオオハバに超えた展開に、私は軽く眩暈を起こした。


お前かっ、国崎ぃ!!

頬杖をついて、ニヤニヤしている男を振り返り、ギロッと睨む。

様々なパターンを想定してはいたけど、これは予想外すぎだっ!

というか、みんなS大生だったのね……。知らんかった。やたら親しそうですし。


「ナツちゃん、1日ぶりー!」

「ちょっと、俺にもメアド教えてよー。聖悟だけなんてずるいしー。」

「パフェ、美味しそうですね。俺も買おうかな。」


ちょ、一気に話し始めんなって。何コレ。何この状況。

イケメン達に囲まれた1人の女……?

ベタな逆ハーレム少女マンガか、コレ?

だったらもっとマシな主人公選べよな。私が主役なんて、シャレにもなんねぇよ。


「…ちょっと、一遍にしゃべられても。」


とりあえず困った顔を作って正論を言うことに。ホントはちょっとどころかかなりまいってるわけだけどね。

……もう君ら、みんな消えてくれないかな。私のことは放っとけって。


「…あぁ、ゴメン。でもまた会えてうれしいよ、ナツちゃん。

合コンのとき連絡先も教えてくれなかったし、聖悟が出くわさなかったら、もう会えなかったかも。」


私が心の中で国崎をメッタ刺しにしていた時、

黒髪をワックスでたたせ左耳にピアスを1つ付けた、爽やか系イケメンがそう言った。

…名前はもちろん知らない。


――いや、私は会いたくありませんでしたけど。一生。

故意に国崎が会いに来させただけですけど。


「あー、ハイ。そうですね。」


私は黒髪の言を適当に流し国崎の前にパフェを置いた。…若干、力をこめて。

ヤツはフッと笑って、「どーも。」と受け取った。ああ…殺してぇ。


―と、


「おい、聖悟。女のコに奢らしてんの?フツー逆だろー?」


4人の中で1番チャラそうな、茶髪メッシュの体育会系イケメンが口を挟んだ。

…名前はもちろん以下略。


そう、もっと言ってやってー。

コイツ最低だからー


そしてもう1人の黒髪眼鏡の、インテリ系イケメンも私に顔を向ける。

…名前は以下略。



「そうですよ。スイマセン、俺がお金払いましょうか?」

「…いや、私が奢るって言ったから、いいよ。ありがと。」


わー、なんて紳士。そういやあの日この人が1番私的に印象良かった気がする。


いい人だな、眼鏡の人は。…それに比べて最悪だな、国崎は。

どうせ皆を集めて私があたふたするのを見たかったんだろ。

悪だ。君は『聖悟』から『悪悟』に改名すべきだ。

こいつの親も何考えてこんな漢字あてたんだか。聖人でも何でもねぇよ、実際のこの人。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ