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脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
47/126

黄金の檻


前回までのあらすじ、パート2~


日曜日、国崎と成り行きでデートすることになった本城那津。

那津は国崎にセクハラされながらも、水族館でそれなりに楽しむが、彼の家へ向かったとき、国崎の元カノである篠原未央が現れた!!


それを口実に帰ろうとした那津は、何者かに背後から殴られ、拉致されてしまう!


――目が覚めたら廃屋の中におり、那津は、実は篠原未央が国崎関係の問題で、自分を拉致したことに気付く。


そして未央の言うコトにあまりにも腹が立った那津は、一度はキャラで自分を守ろうとしたものの、あっさり素を見せ、未央に説教をかました。


怒り狂った未央は『トモダチ』の男たちに那津を襲わせる。


ボロボロになった那津だったが、斎藤・水谷が助けに来てくれ、事なきを得た。


しかし、


その後さらに高宮麗奈が現れ、今度は彼女の家に拉致されることになった那津だった………



「…ねぇ、いい加減にしろよ、作者。今日1日でどんだけ話進めるつもり?」



※いけるトコまでです。



次ページから本編だよ→






「……………。」


なんで、こんなことになったのかしら。


「さ、那津。手当てもしたし、もう安心よね?たっぷり話してもらおうかしら。」


どこが、安心だ?

ホコリっぽい廃屋からゴージャスな黄金の檻に変わっただけじゃないかっ。


「さて、サクサク白状してもらおうじゃない。」


そして、君はなんで当然のような顔でここにいるのか?

麗奈さんとバトる予定はどうした?


目の前でほほ笑む、2人の美女。でも私には、閻魔サマにしか見えません。ハイ。


……もう、ヤダ。私、今日が命日かもよ?マジで。



―――

――



廃屋から連れ出され、車で運ばれた先は、見たこともないような大豪邸だった。門から玄関までが異様に長く、家の端から端も見えないわ、庭に噴水はあるわ………


まったく、スゲェのひと言に尽きる。


内装もタダゴトじゃない。ゴージャスなシャンデリア、贅をこらした調度品、やたらたくさんいるメイドに執事……


…マンガか。もう着いていけない世界だ。


――そして、私は着くなり麗奈さんかかりつけだという医者の往診を受け、即座に手当てされた。


体中に包帯が巻かれ、薬を塗られる。幸い骨は折れていなかったが、やはり打ち身、ねんざ、擦り傷がひどく、全治1週間…とか。…案外、かかるな。


看護婦やメイドが手当てを手伝ってくれ、なんだか気恥ずかしかったが、

まあ治療費はいらないらしいので、よしとしようか。


………ここまでは。



「……では、那津様。浴場に参りましょう。」

「……は?いえ、いいですよ。そんな…」


ひく、と引きつった笑いでメイド服の女性を見上げる。

…まさか、風呂までついて来る気か?このメイド。


「しかし、麗奈お嬢様の言い付けでございます。怪我をしている身では入浴も難しいだろうから、と……」


おいぃい!麗奈さぁあん!!だから、いらねー気回すなって!


じりじり迫るメイドさんに、後ずさりする私。


「……や、いいですっ!お風呂貸していただけるだけで十分です!だから……ってうわぁああぁ!!?」



………その後のことは、ご想像におまかせしよう。


うう、もうお嫁にいけない……ぐすん。



―――

――



お風呂から出た私を待ちうけていたのは、入浴済みらしい麗奈さんと篠原さんの姿。

湯あみ後の彼女らは女神さながらに美しい、が。


「那津。こちらにいらっしゃい。」

「ほら、早く。」


……眼差しは悪魔を凌駕するくらいだ。

私は恐怖に怯えつつ近付き、これまた豪華な丸テーブルに3人、顔を合わせて座った。


――そして、冒頭に至る。


2人は笑顔、私は冷や汗まみれ。


うう、何から話せば……何話しても怒られそうなんだけど……


「…あ、麗奈さん。ありがとう。手当てとか、お風呂とか……」


とりあえず無難にお礼から述べる。


「礼には及ばないわ。その服も、似合ってるし。」

「……ホントに?」


嘘つけ。


先程、悪夢の入浴が終わり、用意されたものに着替えたはいいが……私はちらりと自分の着ているものを見た。


――レースがふんだんにあしらってある、フリフリのネグリジェ。しかも、白。


……麗奈さんの私服だろうが…ぜっっったい、似合うワケないだろ。私に。しかも、髪も緩く巻かれているし。


…この服装も私のテンションを下げる要因のひとつなんだが。


私は、がくりと項垂れた。



そして、


「………」

「…何よ、その目。」


ジトリ、と目の前の黒髪の美女を見る。何でこの人はここにいるんだろうか。

私をボコしといて、この余裕。反撃とか復讐されるとか、考えてないのか?


……や、しないけどね。面倒だし。


でも、空気悪い上に気まずいな。ったく……

素知らぬ顔で紅茶をすする篠原さんを見て、またため息が出た。


「……さて、そろそろハッキリさせましょう?」


篠原さんに気を取られていると、麗奈さんが本題、とばかりに冷静な声で話しかけてきた。

その声色に甘さは一切含まれておらず。とびきり濃いコーヒーミルク抜き砂糖抜きのような、厳しい感情がひしひしと伝わってくる。


ビクリと私は体を震わせた。こ、これがこの人の真の姿……?


「は、はっきりとは…なんですか?」

「いい?那津。ホントのことだけを、答えてね。」


む、無視…!ヤバい、本気だこの人…!

視線が冷たすぎる……っ


「ち、ちなみに嘘ついたら?」

「…そう、ね。大学退学、とか?不可能なハナシではないし…」


………!!!顔が恐怖でビシリと固まる。


戦慄だ!たかが嘘つくだけで何その報復ーーー!?

鬼畜すぎるぞ!この女ぁ!


……いや、しかしこの人ならやりかねん。

なんてったって、国崎のためならどこまででも暴走していくような女だ。ためらいなく、やるだろう。それくらい。


……………。


――考えに考えた挙句、仕方なく、私は覚悟を決めた。


「………わか、った。」


すっと表情を消し、彼女らを見据える。


この時点で、私の選択肢は一つしか残っていない。

――すなわち、


真実を話して、死ぬこと。


……死ぬこと前提ってあたりが私だなー。ま、ほぼ確実な未来だし?

とりあえず大学退学だけは、絶対ヤダからね。


「…ふふ、那津は頭がいいものね。そう言ってくれると思ったわ。」

「お褒めにあずかり、光栄です。」

「こんなときも余裕なのが、貴女らしいわね。」


別に余裕なわけじゃないけどね。ただの強がりですよ、お嬢様。


私はふう、と息をついた。一瞬体の力を抜き、また表情を引き締める。


…っはーー、話す内容が内容だし、やっぱり緊張する。

―しかし、もう腹をくくったことだ。

2人の視線が集中する中、私はすうっと息を吸い込み、話しだした。


「……私は。確かに奴、国崎聖悟と、キスという名の皮膚接触をいたしました。」


…宣誓かよ。


…いやしかし、白状させられる凶悪犯の気持ちってこんななのかなー……仕方ないことなのに、言ってから後悔するような。


「…!やっぱ本当なのねっ!」

「皮膚接触って……」


各々リアクションをとりつつ責めるような目つきで見てくる2人。

私は気迫に飲まれ、後ずさった。

や、やっぱり予想通りのリアクションを取ってくれますね、君ら!


「…や、でも事故だからね!なんかその……あれ、恋愛的なヤツじゃなくてっ」

「どこをどーなってキスなんて事故が起こるのよっ!」

「もっと詳細に事態を説明して!!さあっ!」


……うぅ~怖いよ君たち……何その目…今から誰か殺しにでも行くのか?……あ、私?


――結局、私は涙目で、ことの顛末を全て語ることになったのだった。



―――

――



「…い、以上です、ケド……」

「…………」

「…………」


話し終え、怖々、彼女たちの様子をうかがうと2人とも仏頂面で何か考え込んでいた。

……な、何か反応してもらわないと、こちらも動きようがないんですけど。


やっぱり、怒ってる?

…どうしよ、いきなり刺されたりしたら。


明日の新聞に記事でるかな?『刺殺死体発見』とか?


…………


い、いやだぁああ!こんな形で新聞載りたくないぃいいい!!


「……那津。」

「え、は、はい!」


私が最悪の事態を考えていると、横から麗奈さんが話しかけて来た。

な、なんだ!どんな言葉が出てくるんだっ!ちょ、待って、まだ心の準備が……!


「…それで……貴女は聖悟君のこと、どう思っているの?」

「……は?」


―が、思っていたのとはそれも違う返答。

え。罵倒が来ると思ったのに、まさかの質問?思わず聞き返しちゃったよ。しかも……


「どう、思ってるって?」

「ったく、鈍いわね!聖悟のこと好きかどうかってことよ!」


イライラしたような口調で篠原さんも口をはさむ。


…ああ、さいですか。すいませんね、馬鹿なもので。


私はとりあえず息をつき、テーブルに置いてあった高級コーヒーを一口飲んだ。


「……そんなこと言われても、国崎はただの友達だよ?」


何度も言ってるのに、何で誰も信じてくれないんだろう?


「嘘でしょ、絶対。」


ほら。


「いやいや、ホントだって。彼を……その、レンアイ対象として見たことないから。」

「…じゃ、好きじゃない?」

「あー好きじゃない、好きじゃない。だから、国崎のコトを狙いたいんならどうぞご勝手に。私は関係ないですから。」


…投げやりっぽくて、悪いな国崎。だが私のためだ。辛抱してくれ。


私がそうきっぱりと言い切ると、麗奈さんと篠原さんは露骨にため息をついた。


「……はぁ、国崎君も可哀想に。」

「なーんにも、伝わってないわけね。」

「へ?」


だから、何が?

…アレ、なんか斎藤たちにもそんな感じのこと前に言われたような?


何でだろう、と首をひねっていると、篠原さんはニコリと笑って私と目線を合わせた。


「…ま、いいわ。気付いてないなら好都合だし、ね。」


何に、気付いてないって?

あーもう意味分かんないんですけど。ここまで理解不能な会話が繰り広げられるとなんか腹立つな。


私が仏頂面を作って唸っていると、彼女はコホン、と咳払いをして改まった。


「―そこで、アナタに1つお願いがあるんだけど。」

「…?何。」


お願い、つか命令だろ、どうせ。注文の多い人だな。何だよ?



「聖悟には近付かないでくれる?」

「…は?」



話、聞いてなかった?私は単なる友達だって言ってんのに。

篠原さんの謎な言動に、私の頭の中は疑問符でいっぱいだ。


「……何で?」

「何でも、よ。たかが女友達でも目障りだもの。」


め、目障りって。酷い言われようだな。


「いいでしょ?本城さん、聖悟のことを何とも思ってないんだし。」

「…………」

「アナタ面倒なことが嫌いなんでしょ?」

「……うん…」


私は言いながら頭を回転させる。


――うん、そうだな。

その通りといえば、その通りだよ。


元はと言えば、ヤツと一緒にいたからこんな騒動が起きたワケだし。…そろそろ国崎の方も私に飽きるころだろうし?

もう、振り回されるのはこりごりなんだろ?那津。なら別にいいじゃないか。


―国崎とは、もう会わない方がいい。


「…そしたら、君は私にはもう関わらない?変な誤解はしない?」

「ええ、いいわよ。約束する。」

「…なら――」


私は口を開いた。



「……分かった。国崎には、もう近付かないから。」



――ズキン、


「………?」


言った瞬間、何故か胸が痛んだ。

チクっと、刺すような痛み。心の、内側から。


…何だろ。なんか病気か、もしかして?


原因不明の痛みに胸を押さえる私を一瞥し、

篠原さんは「そう、」とだけ答えてまたニコリと笑った。








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