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脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
46/126

03




改めて高宮麗奈という人に恐怖を感じていると

ひとしきり言いたいことは話したらしい麗奈さんは私に回した手を解き、今度はへたり込んでいる女に目を向けた。


「……あら、篠原未央さん、ではなくて?」

「高宮、さん……」

「…どんな人が那津にこんな酷いことをしたかと思えば、貴女だったの。そんなことだから貴女は品がないのよ。」

「っ、少し美人で金持ちだからって、調子のらないで!!」


あまりよろしくない雰囲気のなか、見つめ合う2人。間には火花が飛び散っている……気がする。

なんとなんとまさかの、知り合いのようだ。


どういう関係なんだろ、世界狭いな、………帰りたいな

2人が交わす、女特有のギスギスしたトークを聞きながらぼんやり思った。


「……ナツ、ちゃん。」

「…?」


しばらくして、放置していた男子たちに背後から耳打ちされる。


「…さっさと抜け出さない?この人たちに関わったらまた厄介なことになるよ?」

「俺も女の修羅場はゴメンだし、圭も待たせてんだよ。な、行こうぜナッちゃん?」


………うん、激しく同意だ。君らもたまにはいいこと言うな。私も彼らに向き返って、頷いた。


「…そうだね。じゃ、こっそり退散――」


そのまま出口の方へ1歩2歩と足を出す。

だが、


「…あら、どこに行くつもり?那津。」


――次の瞬間、がっちりと両肩を掴まれた。片方は、篠原さん。もう片方は麗奈さん。


…あは、そう簡単に、逃がしてくれるわけ、無いか……

…ですよねー。

2人は私の心中を知ってか知らずか、肩に手をのせたまま話しかけてくる。


「まだ行くには早いわ。私が篠原さんと決着をつけるまで待ってて。」


待ちたくねぇよ、麗奈さん。何時間かかるんだそのドラマは。


「待ちなさいよ、まだアナタには聞きたいことがあるのよ!」


もう黙ってくれよ、篠原さん。私には話すことはナイから。

すると、


「……あら、何かしら。那津に聞きたいことって。」


恐ろしいことに麗奈さんが篠原さんの話題に乗ってしまった。


―…は?

何でそこで私の話になるんだよおおおっ!誰が君らの舞台に参加表明したか!?


女たちの会話に、露骨に嫌な顔をしたまま静止する私。

――しかし、本当に顔に色がなくなったのは、この後だった。


「そうよ、大事なこと。……本城さん。さっき水谷信二が言ったことは本当?」

「?」


……さっき…?

私が黙って首を傾げると、彼女は焦れたように叫んだ。




「アナタ、ホントに聖悟とキスしたのっ!!?」




爆 弾 投 下 。

彼女のセリフを聞いた途端、本当に息が出来なくなって困った。


……!!!

な、に言ってくれてんだ、このアマぁああ!!!

……いや、水谷ぃいい!!

麗奈さんの登場でどさくさに紛れて忘れてたが……あんの野郎、わざわざ刺激するようなセリフ言いやがって!!

……つか、何で知ってるか、ソレを!!!


「………な、つ?」


すぐ近くで発せられた低い声にビクッと体を魚のように跳ねさせる。心臓がこれでもかってくらい、速い速度で脈打つ。


…後ろ?振り向けないに決まってんだろ。石化するぞ?


――聞いたこともないような麗奈さんの声に、ビクビクするばかりの私。


頭が真っ白だ。これから何が起こるか、全く分からない。予測不能。

なんてことだ、私はまた未知に挑まねばならないのか…!


「………那津?聞こえ、ないの?」

「っひゃ、はひ!!」


ヤバい、これは酷い。呂律が回りません、隊長!!

スリル満点のジェットコースターに強制乗車させられている気分の私は、恐る恐る前を向いた(向かされた)。


「那津、それはどういうこと?」


案の定、麗奈さんがキラキラとした笑顔で、私を問い質してくる。


「……あ、えっと嘘です。全くのデタラメです、ハイ。」

「じゃあ、何で水谷君がそんなことを言うの?」

「それは、その場のノリでヤツが適当言っただけで……」

「適当でそんな言葉はでないわよ?普通。」

「…………。」


……ちっ、ダメだ、信頼性の低い言い訳しかできない……!

麗奈さんも、いつもは騙されてくれるのに今日はやたら突っ込みやがる……


―どうするよ?私。本当のことなんか、言えるワケないし。

かといって、真実を隠し通す技術も、私は持っていないし……


―それきり黙って悩みだす私に、だが麗奈さんの呆れたような声が降ってきた。


「はぁ………分かった。貴女も疲れているものね。問い詰めるのも可哀想よね…」


それを聞いた途端に、道が開けたように気分が浮上する。


…お、これは、諦めてくれたのか!?ラッキー!女神だ、貴女様は!!


「そ、そうだね。今日はもう遅いし……」


顔をパッと上げて便乗する私に、麗奈さんはニコリとほほ笑んだ。



「……そう。だから、後は私の家でゆっくり聞かせてもらうわね。」




……………。


私は、意識を一瞬飛ばした。そして、再度聞いてみる。


「………え、今、何て?」


思わず聞き返してしまうくらい、衝撃の発言が聞こえたような、聞こえてないような……?

いや、聞き間違いだよね!最近幻聴が酷くてまいったなぁ……


―しかし、彼女はいともたやすく私の夢を打ち砕いてくれる。


「だから、今日は私の家に泊まって、ゆっくり話しましょうって。」


っ、やっぱ幻聴じゃなかったーー!!!

てか、なにそのホラー企画!?私にひと晩で何回死ねというんだ!!


「……そうそう、篠原さんもいらっしゃい。決着は今夜、家でつけましょう?」

「…ええ、いいわ。望むところよ。」


えええええぇ!何で君までーーー!?

しかもこの2人なんか結託してないっ!?いつの間に!?


「…や、私お邪魔みたいなんで今日は遠慮「さ、行きましょ、那津!表に車が来ているから。」

「あの、私は行きたくな「逃がさないわよ?本城那津。今夜のお礼は、たっぷりしてあげるから。」


ああ、もう駄目だ。日本語通じねぇや、この女ども。


唖然とする私の腕をぎゅっと握り、麗奈さんは歩き出す。篠原さんはその跡をついて来る。

本気でヤバいと感じ始めた私は顔をひねって味方と思える彼らに向かって、叫んだ。


「斎藤、水谷!何とかしてくれ!」


―しかし。


「…うーん、俺にはどうしようもできない、かな?」


斎藤、テッメェ!首かしげても可愛くねえから!


「…水谷!」

「だって、事実じゃん?しょうがなくね?」


諸悪の根源が何をいうかああぁあ!!


「…ちょ、待て!君らは君らで話してていいから、私は置いてけ!!

もういい加減にしろぉおおおお!!!」


私の悲しげな悲鳴は廃屋の中に響き渡り、そのまま消え失せた。

――高級車の、エンジン音とともに。




――



「…あーあ、行っちゃったかー。」

「信二のせいでしょ。何であんなこと言ったわけ?」

「だってさ、そろそろハッキリさせた方がいいだろ。あの人たちも……ナッちゃんも。」

「はぁ、ま、分からなくはないけどさ。そんなこと言ってるとまぁた聖悟に殴られるよ?」

「うげ、それだけは勘弁!」



カチャ、

ピ、ピ、ピ……PLLLL……

……ガチャ



「……もしもし聖悟ー?ん、あー居たには居たけど……。違う。あ、待て切るなって!実は―――」





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