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脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
45/126

02




途端に、黒髪を揺らし勢いよくこちらを振り向く篠原さん。

私は意地悪く、笑った。


「へぇ、口、聞けるじゃん?」

「……っ」


しまった、というように彼女は顔を紅潮させる。


「まー、嫌いなのはホントだけど?君は自分のことしか考えないから。いわば、自己中だねー。」


彼女を眺め、にこにこしながら全く穏やかでないことを吐く私。


……あー、言いたいことは言ったはずなのにまたモノ申したくなってきた。

ゴメン、小さい女ですから?ワタクシ。


息を吸い込み、笑顔を作ったまま話し出す。


「…大体さぁ篠原さん、人を人とも思ってないもん。そりゃ国崎だって逃げ出したくなるよ。君みたいなストーカー女、恐ろしすぎるから。

しかも関係ない人を誘拐してボコるって、手が古すぎ。コレ、何年前のドラマ?マジないわー。

あとさ、今、何時だと思ってんの?一日にこんなイベント盛り沢山じゃ、疲れるって。こっちの都合も考えてよ。それにさー……」


ベラベラベラべラ。


マシンガンのごとく口が動き、言葉が出てくる。…体は超疲れてるのに、口だけこんな動くって不思議だな。


「…………」


篠原さんはポカンと口を開けたまま、私のセリフを聞いている。


「…ナツちゃん……」

「スゲェ…やっぱ怒ってたんだ。笑ってるけどなんか笑顔が黒い…!」


斎藤の呆れた声&水谷の感心したような声が聞こえたが、口が忙しい私は何もツッコまない。


ザ・スルーだ。


ただただ、今までのストレスをぶちまけた。



―――

――



「……な、ナッちゃん。そろそろストップしたら……?」

「多分、もう20分ほど経ってるよ…?」

「…だって!だから………ん?アレ、もうそんなに経った?まだまだ話せるのにー。」


――完全に日が落ち、夜も更けてきたころ。

誰が点けたか知らないが、電灯が煌々と灯り、薄暗い室内を照らす。


そこには、ぐったりとする斎藤、水谷、そして篠原さん。

対照的に、蘭々と目を光らせ、さらに言葉を紡ごうとする私。

――が、映し出されていた。


えー?何で皆そんなに疲れてんのー?


「…………はぁ。いいわ、いい。…もう、分かったから。」


最終的に、篠原さんまでそう言いだした。さらに「コイツヤバいわ」みたいな目で見てくれる。

―よせやい。そんな目で見られると、照れるぜー(黙れ)


「あ、ホント?言いたいこと分かってくれたー?」

「…ああ、ええ、うん。ハイ。もうなんかボロボロよ……」


心身ともにホントに疲れてるような様子を見せる彼女に、私は一応満足した。ふっと笑顔がこぼれ出る。


「ん、じゃーいいかな。…斎藤、水谷。そろそろ帰るよ。」


そう後方の彼らに言いながら、踵を返そうとすると、


「ああ、……ってええ!?いいの!?これで!」


斎藤の、驚愕に満ちた声が追ってきた。


「えー。いいも何も……私は満足したし?」


ここまでやるつもりは、無かったけどね?


「っ、だって!そんなに痛い目に遭ったのに?」

「あーいいの、いいの。こんなん、どうせすぐ治るし。疲れたからもう帰りたいわ。」

「…………。」


どこか渋い表情を作ってじっと私を見る斎藤。しかしやがて諦めたように肩をすくめた。


「………ま、ナツちゃんがそう言うなら俺らは何も言わないけど……」


彼は嘆息しながら静かに私の肩に手を回すと、


「……次、こんなことが起こったら、どうするか分かんないからね?」


鋭い眼差しを、篠原さんに向けて放った。


「………!!」


疲れ切ってる中、一瞬で体感温度零度を体験した彼女は、ブルッと体を震わせ、


「…そ、そんな気持ち悪い女、頼まれたって、もう近付かないわよっ!!」


捨てゼリフを吐くと、また俯いた。


―流石、斎藤。しっかり釘刺したね。

私は斎藤にフッと笑いかけると、再度篠原さんの方を向いた。


「…じゃ、私はそろそろ行くけど……」


そして、彼女の瞳を覗きこむ。


「…な、なに?」


「……そうやって可愛げのある未央チャンの方が、私は好きだよ?」


鮮やかな、笑みを残して言ってやった。


「っ!!?」


突如顔に血が上り、真っ赤になった彼女。

―こういうトコ、可愛いんだけどな、と思いながら私はまた口を開き、


「ちゃんと改心して、人のこともっと考えられるようになりなよ?そしたら国崎レベルの男なんて、一発で落とせるからさ。じゃーね。」


ヒラヒラと手を振りながら、斎藤とドアを目指して足を踏み出した。



――



よろよろと、コンクリートを踏みしめる。

…うう、カッコつけてあんなこと言ったけど、やっぱまだ痛いや……

「大丈夫?」と声をかけながら支えてくれる斎藤に相づちを打つ。


――と私はふと、聞きたかったことを思いだした。

斎藤の方をちらりと見る。


「……あ、そうだ。斎藤。さっきの質問答えてよ。」

「…さっき?」

「うん。あの、何でこの場所が分かったかってヤツ。よく探せたよね?」

「ああ、それは―――」




「…な、何なのよ、あの女……!」

「まだ顔赤いよー、未央チャン?」

「う、うるさい、水谷信二っ!気安く呼ばないで!!」

「ハイハイ。…………あのさぁ、聖悟はもう諦めた方がいいぜー?ナッちゃん相手じゃ勝ち目無いって。」

「っ何で!?」

「だって―――」




「麗奈さんが見つけてくれたんだよ。」


「聖悟とナッちゃん、もうチューまでしたらしいから。」


「なつぅうううぅ!!!」




――斎藤のトンデモゼリフと、

案外近くで聞こえた、水谷の何言ってんだコノヤロウセリフと、

私の名前を呼び衝撃音と共に彼女(・・)が現れたのは、

全く、同時だった。



「…………」


―全員の動きが止まり、何度目かの静寂が辺りを包む。

通常の人間なら一時停止するのが普通だろう。

もうどうリアクションすればいいか、分かんないような状態だ。


「………っ、え……う、はっ!?」


一番に発声したのは私だったが、

視線をあちこちに飛ばしながら、言うべきことを見失ってしまった。


……

…あ、いや、ちょっと待とうか。これ、どこからとっかかればいい系?


斎藤に理由説明させる?水谷のセリフの弁解?それとも、彼女の対処?


…おいおい勘弁してくれよジョニー…

突っ込みどこ、多すぎるぜ?俺に全部拾えと?


――しかし、展開は待ってはくれない。

混乱する私を余所に、入ってきた人物は突然抱きついてきた。


「那津ぅ!!大丈夫!!?」


…もちろん、相手は例の、高宮麗奈お嬢様だ。

見てるだけで男はイチコロであろう上目使い+涙目で私の腰あたりにひっついてくる。


…色気の無駄遣い禁止令。誰を悩殺する気だ?君は。


私はどうしたものかとため息をつき、一応返事を返した


「……うん、大丈夫…」


―だから、とっとと離れろ。

押しつけられてる腰とかアバラが痛いから。


「ああ、よかった無事で!居場所はすぐ分かったんだけど、うちのSPに連絡を取ってたら手間取って来るのが遅れてしまったの、ごめんなさいね……。あ、でも那津、貴女ヒドイ怪我してるわ!すぐに手当てをしなきゃ……」


私の心の声は聞こえないらしい、基本KYの麗奈さん。

私にしがみついたまま落ち着きなく話し続けた。


って………は?居場所はすぐ分かった?SP?なんのこっちゃ。


「……麗奈さん、君どうやって私の場所を…」

「…ああ、那津の携帯のGPS機能を使って場所を特定したのよ。

ウチの社員は優秀だから。……って、そんなことはどうでもいいわ!何されたの?警察は呼んだ?あと……」


…以下、略。なんか同じような事繰り返していた気がするが聞いていない。


――や、どうでもよくないっすよ?高宮サン。

胸はって言われても、それ普通にやっちゃいけないことだろ!

てか、そんなことしたのか!?怖ぇよっ!!






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