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脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
27/126

04



「……おいちょっと待て。お前、さっきのキスとか、今抱き締めてるのとか、罰ゲームだと思ってんのか?」


え、違うの?


「は?怒りまかせに嫌がらせしてたんじゃないの?じゃ、なんで?」

「………。」


国崎は、絶句している。

え、何、その地球外生命体を見るような目つきは。

なーんか変なこと言ったか?


「……もう、いいや。それで。」


しばらく固まっていたが、最終的にヤツはそう言った。…自分自身に言い聞かせているように。

一方、私は、首を傾げるばかりだ。

…えっと?結局、何だったんだろ。


「ちょ、国……「じゃ、これも罰だ。受けろよ。」


リアクションも取れないうちに国崎は、今度は私の首筋に唇を近付け、

――吸った。


「――!?」


チクッと痛みが走り、思わず体をそらす。


「っ今度は何だよ!!」


私は慌てて自分の首筋を押さえた。国崎が口をつけた所が、熱い。

ん、待て。……まさか、これは噂に聞く――


「キスマーク、だけど?」

「!?」


再び、私は頬を真っ赤に染めた。―またもや、人生初イベント。


……キ、キスマークって!


手鏡を覗いて確認してみると、確かに、鎖骨あたりに真っ赤な跡が見えた。


「…っ、ちょ、これ困るんだけど。」


…めちゃ目立つ。元々肌が白いものだから、くっきりと赤く跡がついている。


「だから罰だっての。隠すなよ?隠したら、またつけるから。」


何プレイだ。君の趣味に私を巻き込むなよ。


「…この、ドS。変態。」

「もっかいキスでもしてみる?」

「っい、いいです!遠慮します!」


私は慌てて否定した。

…この野郎、私が男に免疫ないからって、全部そっち方面に話をもっていくんじゃねぇ。

今日の、他の女子が見たら絶叫するぞ。……私もだが。違うイミで。





「とにかく、あの女とは絶交して来いよ。」


車の中、国崎は、私が帰る段になってそう言った。


…やー、それはムリだろ。普通に。


「……そう簡単に言うなよ。あ、そういや、君ら、今日どうやって別れたんだ?」

「ああ、俺が振った。」


――え!?


「えぇっ!?告られて、しかも振ったんかい!!」


思ったより話が進んでるじゃないか!


あまりにもびっくりして、シートベルトにブザマに引っかかった私。

…しかし、国崎は何でもないように話した。


「告白はされてないけど、それに近いこと言われたから、拒否った。別にいちいち言うことでもねえだろ。」


…いや、そうだけど。うわ~あんな美人振るなんてもったいない。

やっぱり、こいつの趣味が違ったんだな。麗奈さんも可哀想に……。


「…一応、理由聞いていい?」


今後の参考に。あと、迫り来る女子たちの質問攻め対策のためにも。

国崎はちらっと私を見て、また前を向いた。


「……無理だから。」


…完全な拒否だな。


「…いや、もうちょい具体的にお願いします。」


さすがにそれじゃ、彼女が不憫すぎる。


「…俺、がっついてくる女、嫌い。どんだけ美人でも引くわ。」


あ、アタックが裏目に出たか!?


「じゃ、じゃあどんなコがタイプ?」

「…好きになったヤツ。」


……これまた、なんて抽象的な。こりゃ、ジャンルは絞り辛いな。

私がしかめっつらをしていると、国崎は一瞬ためてから、また口を開いた。


「てか、…今好きなヤツ、いるし。」

「!!」


……え、マジか!初耳だ。

…ってことは麗奈さん、最初から不戦敗だったのか……

タイミングが悪かったなあ。


「え、そうなんだ。じゃ、その子と付き合えばいいじゃん。」

「それが、中々落ちないんだよ。しかもすげぇ鈍感だし。」


へぇー。国崎に落ちない女とかいるんだ。

鈍感、ね。イメージ的にはド天然で脳内お花畑な不思議ちゃんかな。

私とは全く正反対だな。ふふ。


「ふーん、まあ頑張って。」

「うん、頑張るよ。」


国崎は何がおかしいのか、笑いながら私を見送った。

…あ、なんか感じ悪いぞ、君。





「……うーん。」


私は家に帰り、風呂に入ったあと座イスの上であぐらをかいていた。そして今後のことについて考える。

主に、『彼女』のことについて、だ。


……麗奈さん、残念だったな。

あれだけ意気込んで国崎に突っ込んで行ったのに、全部裏目に出るとは。なんとも悲しい話だ。


―しかしあの3人にも不評のようだし、彼女がこれからも私たちと付き合っていくのは、無理だろう。

どう説得するかなー。結構ねばりそうだよなー麗奈さんは。


憂鬱すぎる明日のことについてイメトレをしていると、フッとあることが思い浮かんだ。


――つーか、もし私がヤツとキスしたことがバレたら、殺されるんじゃない?――


私は急に悪寒を感じ、身震いした。


うわ、怖っ!ホントにありそう!あの人の情報網はすごいらしいしな……

――ったく、国崎のヤツも何で…キ、キスなんて……


………。


――っ!


い、いかん!また思い出した、あの感触!

無意識に口元にあてていた手を慌てて戻す。


…落ち着け、那津っ

あんなん、あいつにとってはただの衝動っつーか、遊びっつーか……

とにかく!そんな感じのモノだったんだっ!!

だから犬に噛まれたと思ってさっさと忘れろ!

消去だっ!deleteだっ!


ぐぁーとか、うぉーとか、よく分からない声を出して、悶えまくる私。…キモイ?分かってるよ、んなこと。


……ああ、こういうとき、恋愛偏差値が低いと困る。

経験をそこそこ積んだ女性なら何でもないような感じなんだろうが、

いかんせん、私は恋愛の『恋』も『愛』も知らない女。

唇の皮膚接触ごときで、こんな始末だ。


「はあ………。」


私は思わず深いため息をついた。

抱きつかれるのは慣れ(?)たが、こんなことまでされるとは。

避けた結果がこれじゃあ、悪化してるじゃないか。


どうすりゃ、いいんだ。


国崎 聖悟。

……厄介だよ、君。私が今まで出会った男の中で、1番。





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