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脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
24/126

国崎、激怒



――カラ、カラン。


炭酸がグラスの中で弾け、泡をだす。

ぎっしり詰まった氷をかき交ぜながら、私はおもむろにグラスを傾け、黒いジュースを飲んだ。

―うん、コーラって、たまに飲むと美味しいよね。


「ちょっと、ナツちゃん、聞いてる?」

「…ん?あー、聞いてる聞いてる。」


私はグラスを机に置き、彼らの方に向きかえった。





麗奈さんの猛アタック宣言から、数日が経過した。

彼女は有言実行派らしい。あの日から、誰が見ても分かるくらいの好き好きオーラを発し、国崎に迫っている。


「…ナツちゃん、麗奈さんスゴいね…。」


斎藤は困ったように苦笑する。


「…だね。でも、元々彼女、国崎狙いだったから。」

「ちぇ、まぁた聖悟かよー。俺、麗奈ちゃん結構タイプだったのになあ。」


ストローを口に入れたまま、水谷が愚痴る。


「…でも、当の聖悟は、かなりイラついてるみたいですけどね……。」


乾は遠い目をして、アイスコーヒーを飲んでいた。


――私と乾、斎藤、水谷は今、

おなじみの大型ファミリーレストランでぐだぐだと雑談している。


『国崎君と2人きりになりたい』という、麗奈さんの希望だ。

国崎は、もちろん置いて来た。


「…ま、いいんじゃない?美男美女で、お似合いでしょ。」


私は今度はメロンソーダを飲んだ。

シュワシュワして美味しいな~。夏はやっぱ炭酸に限る。


「…うーん、ビジュアル的にはいいけど、性格はどうだろう?」

「あの人、なかなか面白いよ。恋する暴走乙女だから。」

「…ブッ、暴走って…!」

「そんな激しい人なんですか?そうは見えませんが。」

「実はそうなんだよ。特に国崎の話になると、さ。」


笑いあう私と3人の男たち。


テーブル席に3人のイケメン+私という構図だが、こいつらと付き合い始めて、もう1ヵ月弱、経つ。突き刺さる視線にも、慣れてきた。

…慣れって、怖いもんだな。


「―あ、そうだ。君ら、麗奈さんとどう?ちゃんと仲良くしてる?」


ぱっと顔を上げる。

せっかく集まったことだし、ちょっと本音を聞いてみたくなった。

うまく付き合えているんだろうか。…上手くいっていてほしいんだが。

―だが、


「…うーん、いい子なんだけど、ね。」

「俺は別に普通だけど、なんつーか……なあ?」

「前も言いましたけど、俺は苦手です。」


…なんだなんだ。

3人揃って茶を濁しやがって。


「…うまく、いってない感じ?」


聞かなきゃ良かったかな。

見た限りじゃあ、普通に仲よさそうだったんだが。


「いや、やっぱナツちゃんといるみたいには、いかないかな。」

「…私といるみたいにって?」

「本音では付き合えないかもって、言ってんの。その点、ナッちゃんは貴重だよなー。」


水谷に頭を掴まれ、ぐしゃぐしゃと撫でられる。

…痛いっての。


――しかし…ううん、残念だ。

いい人なんだけど、こいつらの評価がコレだと、友達としてやっていくには難しそう。


「…ねぇ、斎藤。女の子の方は、どうなってんの?」


私が選んだ子でダメなら、私は君らにまかせるしか、ないではないか。


しかし。


「あぁ、アレ?どうも無理そう。」


斎藤はカフェオレを飲みながら、サラリとそう言った。


…what?


「おい、ちょっと。無理ってどういうことだよ。」

「そのままだよ。女のコたちって、俺たちが選ぶと余計な勘違いするでしょ。

結構色々あたってみたんだけど、君みたいな子は相当レアだから。」


ちっ。それならそうと、さっさと言えよ。やっぱそうなったか。


「…私みたいって…口が悪くて、地味で、男に興味がない?」

「誰も、そこまで言ってないでしょう。自分を卑下するのは止めた方がいいですよ。」


恨めしげに尋ねると、乾にピシャリと反論される。

そして、私と目を合わせてきて、


「ナツさんは口は悪いけど、可愛らしい女性ですから。」


ニッコリと胡散臭い笑顔を浮かべて、断言された。


――けっ。可愛らしい、とか。

私相手に、リップサービスはムカツクだけだから、ヤメロって。

しかも口は悪いってトコは肯定するのか。わざと言ってやがるな?コイツ。


「それは、どうもありがとー。」


棒読みでヒラヒラと手を振って見せた。


「褒めましたのに。」


クスクスと笑いを零す彼。……はー、ウザ。


「…とにかく、そういうことなら、麗奈さんに頑張ってもらわないとね。あの人のおかげで、女子戦力はガタ落ちなんだから。」


アレはかなり助かったから、今後も活用したい手である。


「…へぇ。それで、聖悟とくっつけばいいって?」

「そ。だから、ここ数日は彼女に協力して、国崎には近づかないようにしてるんじゃないか。」


―そう。私は麗奈さんと約束してから、1度も国崎には会わずに過ごしてきた。

約束は、守る方だからな。基本。


「友達が無理なら、本物の彼女になればいいんだと思って、ね。」


私は再度グラスを傾けながら、ぼやいた。


―麗奈さん。

自己中心的で悪いが、私のためにも、どうか1つよろしく頼む。頑張ってくれ。


「ふーん。」


興味なさそうだな、斎藤。なら話振るなよ。


「…でも、ナツさん、それはちょっとマズいかもしれませんね。」

「は?何が?」

「多分、今に酷い目にあうぞ。聖悟から。」


突然、彼らが深刻な顔を作った。

……国崎から?酷い目?


「…なんで?」


マジ不明。


「…ナツちゃんって、自分には鈍感なんだね、他人には敏感なのに。」


斎藤が苦笑しながらそう言う。


―だから、なにが?

え、もしかして私、知らない内に地雷踏んでる?

私は考え込んだ、が、どう思い返してみても、問題行動は特になさ…そう。


?全然分かんない。


「……で、でもいい機会だろ?国崎の猫離れには。」

「……は?猫?」


3人の疑問符はキレイに揃った。


「…国崎がこないだ、言ってたんだよ。私は猫みたいだって。」


人間になりきれていない所が、悲しいが。


「だから、いい加減現実を見て、新しい恋でもしてもらわないとさ。」


フンッと鼻を鳴らした。

…別に親切心からの行動じゃ、ないが、国崎にとっても悪い話じゃないハズ。

これの、どこが悪いっての?


―すると、これ見よがしに、男性陣からため息を吐かれた。


「ナツちゃん…現実をみなきゃいけないのは、君の方かも……。」

「これは、聖悟も苦労するはずですね……。」

「そんなこと言う聖悟も聖悟だけどね……」


だ か ら !

さっきから何が言いたいんだよ!何のことだか、さっぱりなんだってば!なんか馬鹿にされてるみたいで、腹立つっ!


うー、と唸っていると、今度は水谷が、まじまじと私を覗きこんできた。


…何だ、水谷。アップで近付いて来んな。

慣れたとはいえ、こいつら全員顔が整い過ぎてる故、急な接近は心臓に悪い。


「…うーん、猫か。でも、言えてるかもなあ。」

「っわ!?」


水谷は目を少し細めたかと思うと、

突然私を後ろから抱き締めた。そして髪を撫でているらしい。


「ボサボサ頭に見えるけど、結構猫っ毛だしさあ。

なんか抱いてると温かいとか?でもナッちゃん、痩せてるからそれはないか。もう少し太ったら?」


ゴチャゴチャ失礼なことを言う声が、頭上から聞こえる。

…オイ、水谷。私が猫なのは分かったから、離せ。

あと、腰回りを触んな。セクハラだっつの。


「……っだーもう!離ーー」



バコォンッ!!!



すると、突然。

私が催促するのと同時に、なんかもの凄い音が聞こえた。近くで。


…は?今、何が起こった……?





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