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脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
2/126

3匹のギャル



それは突然訪れた。

今日も無事に講義が終わり、昼食をハンバーガーセットにするか、牛丼味噌汁付きにするかで迷っていた頃。


「ねぇ~っ本城さん!この後ヒマぁ~?」


やたら語尾を伸ばす女ども(計3人)が私の正面に現れた。

…言っておくが、少し後ずさってしまったのは私のせいではない。

彼女らのハンターが獲物を刈り取るかのような勢いが怖かった。ただそれだけである。

てか、私の周囲の野郎どもも若干引いてたし。


目を向けてみると、やはり何処をどう見てもド派手な女子たち。

髪はくるくると巻かれていて、マツゲは瞬きする度にバサバサと音が鳴りそうなくらい。さらに、化粧と言うよりはもはや仮面と言えるくらい塗り固められた顔面。

―そう、いわゆるギャルの方々だ。

付け加えると私が最も関わりたくない人種でもある。


――ん?これから暇か、だと?



「…え、何で?」


一応返したものの、嫌な予感がバシバシする。

そしてそれは。


「あのさぁ~今夜、4対4の合コンするんだけどぉ~ミーコとうちとアミでぇ3人しかいないわけ。もう1人女の子がいるの。そんで、暇そうな本城さんにチャンスをあげようと思って!

今日のメンツ、マジイケメン揃いなんだって!!」


次にそう続いた彼女のセリフで、ああクリティカルヒットしたな、と思った。


「………。」


…まあ実を言うと『あのさ』の時点で状況は完全に把握していた。

合コンの人数合わせね、要は。

現れた時点で公害のような彼女らだが…よくもまあ、なんとも面倒くさいことを突き付けて下さったな。


ミーコもアミも君も私は知らないし『暇そうな』って失礼すぎるだろ。

私、今日はバイトあるんですけど。

つか、話が長すぎ。無駄が多すぎるな。

少しはナイ頭振り絞ってきちんと文を頭ん中で構成してから口を開け。


――とは言えないわけだが。

いや当然じゃないですかー。無理ですよ普通に。

でもとっとと断らないとなあと思い、口を開く。



「悪いけどきょ…「わぁ~っありがとう!行ってくれるんだぁ!!」

「…いや、だか「ほんと助かったぁ。あ、場所はねぇ……。」


…人の話、聞けよ。

やっぱり強制参加かよ。拒否権すら認められてねーのか。

しかしヤツらの目が「断ったりするわけないよな…?」と言っている。

チキンな私がビビるには十分すぎる程の睨み。ちょ、怖いって。


――結局、私はしぶしぶ頷いた。

なるべく波風はたてたくないからな。しかも向こうは超強そうだし。勝ち目無さそうだし。何か起こったら面倒だし。

…ねえ?


なんて自分自身に言い聞かせていると、3匹のギャルは手早く場所をかいたメモを私に渡してきた。そして「じゃあよろしくー!!」と言って、嵐のごとくその場を立ち去りなさる。


残された私はというとなんだか微妙な空気の中、周囲から白い目で見られていた。

ジロジロ、チクチク。

好奇の目で私を見てくる野次馬共。


見んな。私だって意味分かんないんだから!

厄日か。今日は厄日なのか。

私は愕然としたまま頭を抱えたくなった。



…とりあえず今日の予定は埋まったらしい(強引に)。

いやしかしマジでどうしよう。こんな事態久々だな。

まだ『自分たちの引き立て役に地味なやつ誘おう。』なんて作戦、実行するような古い人間がいたのか。


しかもよりによって合コンなんて。何それ、都市伝説じゃなかったの?

ははは…笑えない。


頼みの綱のバイトも…シフト、確か10時からだっけ…。

ヤツらの言っていた集合時間は6時…ああ、バリバリ間に合う感じ、だな…。

ちくしょう。シフト変更だしやがった竹内(31歳、独身男)を恨むしかねぇ…。

あとで一発殴ろう。うん、そうしとこう。


内なる決意を心の奥にしまい、私はとりあえず居心地の悪かった室内を飛び出し外に出た。


―もう昼飯はどうでもいいや。とにかく何か策を考えないと。

そう思い立ち、幸い今日の授業は午前のみだったので私は早々に帰ることにした。

私の家は大学を出て10分くらい歩いたところにあるアパートである。多少ボロいが、通学に非常に便利だ。

そういうわけで、私はすぐに家に着き悶々と考え始めた。





随分と考え込んだが、いい回避策は思い浮かばなかった。

今までああいったたぐいは上手く切り抜けてきたのだが、流石に今夜となっては……。

しかも実際に予定は無いので断る理由もない。

あれこれシミュレーションするも、最終的に彼女らの押しに負ける結果となる。

――本気で困ったな。どうしよう。

なーんて堂々巡りをしてる間に、時計の針はもう5時を指していた。

向こうが指示してきた場所に行くには、もう出なければ間に合わない。


行きたくない…が、行かないと後が怖い。やはり行ってイケメンたち(仮)のお目汚しになるしかないか?

どうせあのギャルたち、いつも以上に派手なメイクとぶりっ子を決めてくるだろうしなあ。浮きまくるよなー、私。


人の目にさらされるのは好きじゃない。つーか嫌い。でも上から目線で鼻で笑われるのはもっと腹が立つ。

……なんか、あいつらの顔を思い出したら、怒りが…


「…………。」


はあ…。なんかあんなギャルどものことで悩んでんの、アホらしくなってきた。もう行くしかないのは分かってる。でも……


―どうせならぶっ潰すか?この合コン。


ふと、そんな物騒な考えが浮かんできた。

どうせ私は地味な恋愛対象外女。なら、それを逆に利用しようじゃないか。

それで…話を聞かないバカどもに復讐、とかどうよ?


「……クッ」


ふいに笑いがこみ上げる。


なかなか楽しそうじゃん?やってやろうじゃないの。

私を呼んだのを後悔しろよ?


いいよ、君らの合コン、台無しにしてやるよ。




私は思考をそこで停止して、シャワーを浴びにバスルームへと移動した。

そしてお湯を頭からかぶりながら今夜に向けて計画を練る。


――今夜の合コンはカラオケだと言っていたから…

…こうきたら、……

……………


ある程度思考がまとまった所で、シャワーの蛇口をひねった。キュッと音を立てて止まる水勢。

汗を流して気分も幾分かさっぱりした感じだ。


――よし。多分イケるだろう。

気合いを入れ直しバスタオルを巻きながら適当に服を着替え、たいした時間もかけずに準備する。

間違ってもおよそ今から合コンだという女の心持ちではないだろう。

例えるなら、戦場に赴く戦士だ。


私は鏡を見てニヤリと笑った。




……さあて、ショーの始まりといこうじゃないか。

今夜限りの、特別な『私』で、な。


私は不気味な笑みを浮かべ目的地のカラオケ屋を目指して、ゆっくりと街道を歩き始めた。




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