in居酒屋
前回までのあらすじー♪
主人公、地味メガネの本城那津は、3人のギャル子のカモにされ、合コンに連行されました。
ムカついた那津は、それをブチ壊すために、ご自慢の面白い『キャラ』で大暴れ!!
結局、その合コンはご破算となりましたが、
何故か相手のイケメンたちに気に入られ、攻められたり、追いかけられたり、すったもんだしました。
平穏を望む那津は抵抗し、拒否し続けましたが、
イケメンの内の1人、国崎にまんまと騙され、
ついに、晴れて彼らとお友達になることになりました☆
あらすじ おしまい☆
……わー。何て下らない展開。
ベタすぎて誰もウケないって。
しかも、主人公が私とか。
ハハ……日本もここまで腐ったか。
「おい、いつまでも現実逃避してねぇで、戻ってこい。」
「……うるさい。逃避くらいさせろや。」
「那津?」
「………。」
「なーつー?」
「………。」
「黙ってないで、何か言おうか。」
「………。」
……ピッ。
『……なら、今すぐ君らとオトモダチ』「っわーーー!!分かった!分かったから、止めろ!!」
慌てて遮ると国崎の野郎はにんまりと笑った。
…やっぱり魔王だろ、君。
――今、私は国崎の車の中にいる。
前回と同じく運転席に国崎、助手席に私。…もちろん、例の居酒屋に向かうためだ。
不本意だが、ひっっじょーに、不本意だが!
私は、彼ら4人の友人となってしまったらしい。
しかも、ご丁寧にも先ほどの会話はすべて録音済み。
…言質も取られたか……ハァ。
「そんな落ち込むなって。別にカノジョになれって言ってるわけじゃねーんだし。」
「……トモダチでもなりたい子たちが、どんだけいると思ってんの。」
「さぁ?10ダースくらい?」
この野郎、人事だと思って気楽に笑いやがって。120人程度で済むワケねぇだろ。
各ファンが集まったら、もの凄いことになるに決まってる。
「ま、いざとなれば、俺が脅しにかかるから、大丈夫だって。」
「…脅し、ね。」
確かに国崎が本気で怒ると、怖そう。きっとニコニコと仮面をかぶったまま、追い詰めていくんだろうな…女子を。恐ろしい。
「もうすぐ着く。あいつらは先に席で待ってるって。」
「はあ…」
「これ見よがしにため息つくなよ。」
「つかずにいられるかよ。超憂鬱なんだけど。」
「あっそ。ま、頑張れ。」
彼はそのまま前を向き、アクセルを踏んだ。
…返事、軽いぞ国崎。この胸の痛みはどこにぶつけりゃいいのやら。
今日はヤケ酒コースかな………。
「着いたぞ、ここだ。」
黒い車が駐車場に停まる。どうやら到着したらしい。
私たちは車から降りて、アットホームな感じの居酒屋ののれんをくぐった。
「お、来たね。」
「やっほー、ナッちゃん。」
「奥の席どうぞ。」
店に入るなり、私と国崎を出迎えるイケメン's。
…にぎやかだね、ちくしょう。
私は促されるまま1番奥の座席に座った。国崎はその隣だ。
「あ、那津は説得してきたから。よろしくしてやって。」
「さっすが聖悟!」
「へー!どんな手使ったの?」
「んー、秘密。」
「教えて下さいよ。」
楽しく笑いあう4人を尻目に、私は無言を貫き、壁に目を向けていた。
――石だ、私は石なんだ。だから、おかまいなく。
「…よっしゃ、じゃ、腹ぁ割って話そうじゃねぇか!」
何を。
「とりあえず、生ビール、頼みますか?」
乾のスルー技術はなかなかのものだと思う。
「あれ?ナッちゃん、お酒ダメじゃなかったっけ?」
「………」
ちら、と国崎を見ると、ヤツはニヤリと笑いながら例の録音機のボタンに手をかけて…
…って、ダメッ!それ!
「…っ。れ、例のじいちゃんの教えは実在するが、私は去年から飲んでるから平気!」
慌てて早口で言う私。ったく、イヤな弱みを握られちまったぜ……。
「ダメじゃん、それ。」
「大体飲み会とかで、『私、飲めません。』とか、白けるだろ絶対。」
「は、言えてる。」
4人は同感、といった風にニヤッと笑った。
――グダグダと話していると家に店員が来たので、オーダーした。
…うーんお姉さん、顔赤いね。そして私に向かって『え?』って顔するの、やめてね。よかったら代わってくれてもいいよ?
「じゃ、カンパーイ!!」
ガチンッと、ジョッキをかち当てる音。そのまま、全員ぐいっと一口飲んだ。
…あーうめ。ビール飲むの、久々だなぁ。
私はいくらか気分をよくして、白い泡を飲み込んだ。
その後、ぞくぞくと届く料理たち。
適当に枝豆などをつまんでいると、サラダを山盛りに盛っている斎藤が徐に話しかけて来た。
「…ね、自己紹介とか、いる?」
「え、合コンで言ったじゃんか。」
「那津は、何1つ聞いちゃいねぇよ。」
「うわー、酷っ!ホントに俺らに興味無いんだ!!」
…悪かったな。その件に関してはすげぇ後悔してるから、触れるなよ。
私はまた一口ビールを流し込むと、バツが悪そうに視線を下げた。
「…別に、いいよ。顔と名前覚えときゃ、いいでしょ。」
「ダメだって。せっかくムリに友達になったんだから!」
…ムリに、ねぇ。
――そして、何だか知らんが、自己紹介をし始めた男たち。
…ああ、うん。一応聞いてるから、大丈夫だって。
だからそんな何回も聞き返してくんな。ウザいから。
「……斎藤 宏樹。19歳ね。今は、彼女より彼氏が欲しいかなあ。」
そして、斎藤 宏樹のターン。今日もキマッてる黒髪の彼は、そう言った。
…って、
……………は?
ちょっと、待て。聞き流すところだった。何か引っかかったぞ。
「……彼氏?」
ま さ か 。
「ああ、俺、バイだから。」
斎藤は至極簡単に、あっさりとした口調で答えて下さった。途端に空気が凍った気がした。
…主に、私周辺の。
ま、まさかのリアルBLが身近に!?しかも、こんな爽やかな男前が!!?
「冗談、だよね?」
「んーん、マジマジ。」
「…彼氏とか、作ったことあるんだ?」
「詳細に聞きたい?」
「や、遠慮しときます。」
「そ?あ、でも女の子でも全然OKだから。」
二コリと笑って手を振る、斎藤。…フォローになってねぇよ。
「…ククッ。驚いたろー?ナッちゃん。俺らも聞かされた時は、本気で貞操の心配したよなー。」
「聖悟なんか、一時期、本気で狙われましたし。」
「え、マジで!?」
「…食いつくな。今は、何でもねぇから。」
…昔は、あったんだ?
その昔を想像し、少し哀れみの視線を送ってやると小突かれた。いて。
――しかし、斎藤がまさかのホモ…いや、バイか。
BLとか別に偏見は無いが……意外すぎるわ。世の中は広いなあ。
「あ、でもさ、それ女子に言えば?『俺、男にしか興味無いんで』とか。」
「言って、聞くと思う?」
「…なるほど。」
イケメンも苦労しているようだ。
「…いやーしかし、聖悟もよく落としたよね。こんな頑固な子を。」
空になったジョッキにビールを並々と注ぎながら、斎藤がケラケラ笑う。
落としたとか、人聞き悪いこと言うな。頑固で悪かったね。
「別に大したことはしてねぇよ。何か自爆してくれただけだし。」
「は、よく言うわ。思いっきりハメたくせに。国崎いつか殺す。」
「ハハハ。」
笑い転げる水谷、傍観しながらひたすら食べている斎藤、時々助け舟を出す乾、そして、睨みあう私と国崎。
――居酒屋の1室で、酒を飲みながら、静かに夜は更けていく。
アルコールの熱に浮かされ、陽気に笑う男たちをぼんやりと見ながら、
―私は1度、冷静に考えることにした。
本当に奇特な野郎どもだ。
正直、ここまでするとは思わなかった。
最後は国崎の罠にかかった私が悪いが、こんな…ゴキブリ並みにしぶとくつきまとってくるとは。
もう何度もきっぱり断った。手札も全部使い切った。
それでも、ダメだったんだから……もう、私が折れるしかない気がする。
―なに、どうせコイツらの一時の世迷言。
私など、すぐに飽きて捨てられるにきまってる。それまで、適当にやればいいか。
私はついに降参した、と同時に、『これからどうするか』に思考をシフトチェンジさせた。
……よろしい、なら私のやることは、1つだ。
私は、眼鏡の奥の瞳を細めた。
「あのさ、」
私はすくっと立ち上がって、4人を見下す。
「私と友達になるにあたって、お願いがいくつかあるんだけど。」
「は?オネガイ?」
「何だそれ。お前にそんな権限無…「いいから、聞いて。」
…おお、初めて国崎の言葉を遮った。ちょっと快感。
いい気になりながら、私は息を吸い込んだ。
「まず、私以外の女友達を早急に作れ!しかも複数!」
ビシッと人指し指を突き付ける。良い子はマネしちゃダメだぞ。
「…は?女、友達?」
「え?」
当然のごとく、目を丸くする4人。私は気にせず続ける。
「口答え無用!とにかく可愛い子、数人選んで来い!むしろ彼女でもよし。」
「…防波堤かよ。」
「悪いか!このままじゃ、女子からの被害を被るのは確実に私なんだよ!何人かで怒りを分散した方が、得策。見目麗しい子なら、私は上手く隠れられるし!」
「…策士ですね、ナツさん。」
「ああ。こっちのことは全く考えてないあたりが。」
ふーん。どうせ自己本位ですよー。
君らと一緒にいるってのは、それだけリスクがあるんだっての。我慢しやがれ。
「ま、それはよろしく頼む!…んで、次ね。私、君らのメールアドレスさらすから。」
「おいっ!売るなっつったろ!!」
「何言ってんの国崎。あんだけ目立つことしといて、明日私はどうなると思う?下手すりゃ身ぐるみはがされんのよ?とりあえず餌まいて、彼女たちの怒りを鎮めてもらわなきゃ。」
「…なんか、イケニエみたいですね。」
「なるほどー。で、俺たちの携帯はパンクしてもいいって?」
「すぐにアドレス変えりゃ済む話でしょ。もしくは機種変更するとか。」
「…ホント、性格悪すぎ、お前。」
「ありがと。褒め言葉としてもらっとく。…で、あとはー。」
「まだあんのか?」
「最後だっての。んーっとね、…必要以上に私には関わるな。」
瞬間、水を打ったように突然静まり返った室内。
う、空気が重い。
「…何それ。やっぱ俺らと一緒にいるのは嫌ってこと?」
不審そうに尋ねる水谷。いつもみたく、軽いノリではない。
私も覚えず喉がごくりと鳴った。
「……違う。そこはもう諦めたから。私が言いたいのは、最低限のプライバシーは守れってこと。
誰でも人に干渉されたくないことってあるでしょう?ましてや、私らは異性なワケだし。」
「………。」
「…私は、キチンとけじめさえつけてくれたら後はどうでもいい。普通に仲良くできると思う。だからコレは守って。」
「ちなみにそれが守れないと?」
「大学内では話しかけずに、他人のフリするかな。」
「えー、そんなんヤダー。」
彼は打って変わって顔を崩し、クスクスと笑いだす。
…お、よかった。元の陽キャラに戻った。真剣な水谷はある種キモイからな。