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脳内計算  作者: 西山ありさ
本編
13/126

03




ひと通り、言い終えた。息もつかず言ったからか呼吸が苦しく、肩を大きく上下させる。

――本当に、私らしくない。乱されっぱなしとかなんてカッコつかないんだ。

しかも結構大きな声でさけんでしまった……

恥ずかしい。酷いザマだ。


「…言いたいことは、全部言ったか?」

「!…う、ん」


静寂の中、イキナリ発せられた国崎の声に少しびっくりし、私は1拍おいて国崎の顔を睨みあげた、が…

ヤツは口角を上げ、嬉しそうに笑っていた。


「……は?」


国崎の不可解な表情に、眉をひそめる私。

なに?Mか?君。罵倒が好きなんて、そんな本格的な変態だったのか?


だがそんなアホらしい思考も長くは続かず。


一瞬ふわりと国崎のにおいがした、と思ったら、

私はヤツの腕に包まれていた。


「――!」


国崎の体が近い。互いの心臓の音も聞こえそうな距離。私は身動きすらできずに固まってしまった。


――これは、どういう意味だ。

昨日のプレイバックか?こういうのを、ヤメロってんのに。

ぜんぜん、分かってない!


「っどけ!離せ!!」


ドンドンと、胸板を力いっぱい叩くが昨日のようにすんなりと離れてくれない。

それどころかさらに力を入れて抱き締められる。


っうあーっ、ヤメロヤメロ!!苦しいぃい!


「那津、」


抱き締めたまま、国崎がささやく。

なんだ!ハナせ!!


「…そんなに、俺のこと考えてくれてたんだ?」


~~!

傍から聞いても明らかに嬉しそうな声に、一気に体温が上がる。

…っなんだ、自意識過剰だろ!この俺様が!!そういう…恋愛的な意味じゃ、ねぇし!!

嬉しそうに笑ってんじゃねぇよ。殺すぞ。


「ちっ…違うし!誰が君のことなんか!」


うっわキモ。何だ私、何だその返答。

今時、ツンデレの人もこんなん言わないよ。


「可愛い。」


クスクスと、さらにヤツは笑う。


――その様子に、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。なんだか馬鹿にされたような気がしてイラッとくる。

私がこんなに焦って、ドキドキ(?)してんのにコイツの余裕そうな態度。

…そりゃあ、百戦錬磨の国崎君は怖いもんナシでしょうけど、私は人生のサブロードを地味に地味に生きてきたワケですよ、19年間。

気まぐれとか、ちょっとからかってやろう精神でこんなんをやられても、困る。


「……国崎。」

「ん?」


げしっっ!!!


ひとこと断りを入れ、私は国崎の革靴を思いっきり踏みつけた。……カカトで。


「―――!!?」


国崎は声にならない声を出し、抱いていた腕を緩めた。

その隙に、私はヤツから脱出。ステップを踏み、国崎から遠ざかる。

…ふう、心臓確保。ザマァみやがれ変態国崎。


「っ、那津……。」


余程痛かったのか恨めしそうに私を呼ぶ声が聞こえたが、フンと鼻を鳴らして冷たい目線を彼に向けた。


「君が悪い。」


先ほどと全く同じセリフを、今度はややスッキリとした気分で言う。


――そうだ、コイツは変態なんだ。マトモな神経で相手したら負けだ。何を血迷ってたんだ、私は。

思考を転換させ体も国崎の方へ向けて、ヤツを見下ろす。

なんか視界がクリアになった気がする。


―よかった、これぞ本来の私だ。戻ってきた。



私が仁王立ちしてたたずんでいると、ふいに複数人の足音が聞こえた。


「ナツちゃん!聖悟!こんな所にいたー!!」


斎藤だ。後ろから水谷信二と乾圭太朗も歩いて来るのが見える。

あーあ、オールスター揃っちゃったじゃん。


嘆息したくなるのを堪え彼らが来るのを待っていると、斎藤が私に向かって手を振る。


「ナツちゃん!今朝ぶり!どう、調子は?」


黙れ斎藤。こんな醜態をさらしたのは、元はと言えば君のせいだ。


「え、宏樹、ナッちゃんと会ったの?いいな~。ね、今度俺とも駄弁ろうよ。」


見た目通り中身もチャラいな、水谷。そんな予定は作りたくない。


「とりあえず外に出ましょうか。ここにいると、また昨日の二の舞になりますよ。」


あ、やっぱりこの人が1番常識人だ。乾のもっともな意見に、私は頷く。

ちらっと後方を見ると、女子がちらほらと集まってきていた。…恐ろしいことに。


「…あ、そう。じゃあ私は、これで。」


もう昨日のように強制逃亡は図りたくない。私は颯爽と右手を挙げて去ろうとする。


「どこ、行くんだよ。」


…やはり、国崎からストップがかかったが。

あ、やっぱり?つーかこれで通算何度目?


彼はどうやら足の痛みから解放されたらしい。足を軽く振りながらこちらに来た。

ずっと沈んでてくれて良かったのに…。


「…だって見てよ、あの女子軍。私100%カンケーないし巻き込まれたく無いから。」


冷静な声でそう反論する私。

正論だ。…正論だろう?単なる自己防衛のためだから。とっとと行かせてくれ。

――だが。


「…悪いけど、ソレ、無理。」

「は?」

「どうも…囲まれたみたいですね。相変わらずスゴい方々だ。」


―!

乾のその声に、私は絶句する。

こんな短時間で…だと?どんだけネットワークが繋がってるんだよ!?

てか、なにしみじみと言ってんだ!乾!


「んじゃ、逃げっぞ。」

「!?」


国崎がそう言うのと同時に、私の体は宙に浮いた。

はぁ!?な、なんだ、なんだぁ!?


混乱の中突如変わった視界。お腹辺りに圧迫感があり、足は投げ出されたまま。

そう、ヤツが私を抱きあげ左肩にのせたのだ。簡単に言うと米俵のように担がれている状態。


「…ちょっ、何してんの!降ろせ!」


私は足をバタバタと動かして、叫ぶ。

―が。


「ヒュー♪聖悟、やるねぇ。」

「じゃ、行きますか。」

「裏門イケそう?」

「一気に抜けるぞ。」


彼らに『聞く耳』は無いらしい。いや、人の話聞けよ。何で私も、逃亡班に編成されてんの?

――勝手なヤツらばっかだな、マジで。


そうやって私を無視し、2言3言、言葉を交わした後、4人は走り出した。…+私。

かなりのスピードだ。周りの景色がビュンビュン流れていく。


「っわーー!速いっ!速いって!!落ーちーるー!!」

「うるせぇ。あの女共の中に落とすぞ。」

「!!」


ひぃっ!!ドS再臨!!そうくると私は黙るしか無いじゃん!!

あとの3人もクスクス笑いながらも、余裕でついて来る。四方八方から迫り来る女子を避けながら……

…って女子、怖っ!!


「き…君ら、いつもこんな感じなの!?」


思わず、走る彼らに問いかける。

や、これ異常だろ。

よく1年間同じ大学にいて気付かなかったな、私。


「んー?いつもよりは、ちょっと激しいかもなー。」


『ちょっと』、なんですか?水谷君!!


「この学部は初めて来たから興奮してるだけでしょ。理系学部の子も、初めはこんなんだったんじゃない?」


…はぁ、そうですか。スゲェ。マジでアイドル並みだ。


「ゴチャゴチャ言ってねぇで、走れ。」


4人(+私)は、文字通り女子軍団の中を駆け抜けた。

もちろん、女子の皆さんは1人残らず私を睨んで行きましたよ、ええ。


明日からどうしよう。死亡フラグ何本か立ったな、こりゃ…。


……。

いや、明日にはもうこの世にはいないかも…。過激派に爆撃されるとか?

…あぁ、思えば短い生涯だったな……。ゴメン、兄ちゃん。私は先に逝きます―――


「…那津?聞いてんの?」


私が遠い目をしていたら、国崎に話しかけられた。

…何さ。私は帰って遺書を作成しなきゃ―――



「那津がいいなら、俺はこのままでもいいけど。」



…え。


そう言われて今の状況を確認すると、→国崎に担がれたまま、校門前。


「……わぁっ!?降ろせ!」


一瞬の沈黙の後、私は再び暴れ出す。

そうじゃん!何、この体勢!女子軍のせいで、すっかり忘れてたぁ!


「ハイハイ。」


喚く暇なく、今度は素直に降ろされた。すとん、と両足そろってコンクリートを踏みしめる。

…ハァ、良かった。久しぶりに地面と再会……。


「はは、ナッちゃん可愛いな。顔、真っ赤ー。」

「…見んな、水谷。」


―と、思ったら水谷に顔を覗きこまれた。どうやら私はすぐ赤面するらしい。

しょうがないじゃん。なんたって男性経験0女ですから。


「…うん。やっぱりそっちの方が素敵ですよ、ナツさん。なんか生き生きしてます。」


不機嫌な私の顔をまた覗きこみ、上品に微笑む乾。


へ?そっちって、なに。地が?こんな、毒舌で陰気なんが?

頭の上にハテナマークを飛ばしていると、また笑われた。

…なんか、感じ悪。やっぱりこの人たち、私と感覚違う。


「おい、圭太朗。口説いてんなよ。それよかどっか店入らない?俺、腹減っちゃった。」


唐突にそう斎藤が提案したので、私たちは近くのファミレスに入ることになった。

…そう。私も強制連行だ。


帰らせろ。


最近、家が恋しくて仕方ないのは、気のせいでは無いだろう。






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