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脳内計算  作者: 西山ありさ
その後の短編+番外編
109/126

ショートストーリーそのよん

シリアス入る前にギャグに逃げました(爆)

次回から本編です。




おまけ~前話その後~(台本形式)



ガチャ、バタン。


「ただいま、兄ちゃん。」

「ああ、那津…落ち着いたか。」

「うん、…ごめん、さっきは。」

「いや、気にするな。俺も取り乱して悪かった。…ところで、この男…」

「…聖悟が、どうしたの?」

「お前の、その、彼氏とか言ってるが…本当か?」

「そうだよ。あれ、言ってなかったっけ?」

「!!」


那津にあっさりと肯定され、目を見開く唯月。


「え?どうしたの兄ちゃん、固まって。…聖悟は何ニヤニヤしてんの?」

「別にー。」


遅れて部屋に戻ってきた聖悟は『どうだ』とばかりに唯月を見下した。

唯月はハッと我に返り、那津に掴みかかる。


「な、な、那津っ……お前、ホントにこの男でいいのか!?」

「わ、びっくりした。何、急に。」

「こいつはとんだ腹黒だぞ!裏表の差が激しいし、何考えてるか分かったもんじゃねぇ!」

「えー?聖悟の性格が悪いのなんて、今に始まったことじゃないし。」

「お前が言うなよ、お前が。」

「うるさいな。…とにかく、大丈夫だよ、兄ちゃん。こいつとはちゃんとした付き合いだから。」

「ちゃんとした、な。」

「あーもう、聖悟は黙ってて。」


二人の会話を聞き、さらにショックを受ける男。

しばらくして恐る恐る口を開いた。


「……ま、まあ、お前がそれでいいなら、俺は…何も言わねぇが…」

「うん?」

「ち、ちなみにお前ら……ど、どどどこまで…すすんで…」

「は?」

「どこまで進んでるかって?」


怪訝そうに首を傾げる那津を遮り、聖悟はニヤリと笑った。


「A~Cまで全クリですけど?」

「!!?」


それを聞いた途端、唯月は雷に打たれたような顔をし――白目をむいてばたーんと倒れこんだ。

那津もこれには驚いて、慌てて駆け寄る。


「!ちょ、兄ちゃん!大丈夫!?」

「ほっとけ。現実見てショック受けただけだろ。それより早く新幹線の切符、予約しようぜ。」


聖悟はどこか満足気にそう言うと、さっさとパソコンを立ち上げた。









いきなり童話パロ「シンデレラ」




「え、童話パロって何?今から何すんの?」

「劇をやれだと。ほら、台本。」

「は?私も出るの?めんどくさい。」

「主役のお前が出ないでどうすんだよ。とっとと衣裳に着替えろ。」

「わー!分かったから脱がそうとすんなっ!」




*******




文字数が多くなると読みにくいので(切実)話は飛んで舞踏会当日。

シンデレラは継母や義姉を送りだした後、一人家を掃除していました。


「はあ。私も舞踏会に行きたいなあ(棒)」

「わーナッちゃん、超棒読み~」

「うるさいな、こっちは無理矢理連れてこられたんだよ…って、水谷。君が魔法使い?」

「そうだよ。ほら、ステッキ。」

「…魔法、効かなさそうだな。」

「失礼な!じゃ、もうとっとと変身させてやる!」

「うわっ!」


ボンっと音を立ててシンデレラは煙に身を包まれました。

すると、なんということでしょう、彼女は一瞬のうちに綺麗なドレス姿へと変わっていたのです!

首元には真珠のネックレス、そしてガラスの靴を履いています。

シンデレラは驚いたように目を瞬かせました。


「わ、意外と仕掛けがすごいな。」

「夢を壊すようなこと言わないでよ。あ、馬車はそこにあるから。」

「こっちも本物の馬か…どんだけ金使っt「ちょっと黙ろうか。」


かくして、『0時に解ける』という制限つきの魔法をかけられたシンデレラはかぼちゃの馬車に乗って(押し込められて)、お城を目指しました。

もうどうでもいいことですが、お二方、台本通りの進行をしてくださいね。




「…王子、頼みますから舞踏会に出てくださいよ。」

「いい、俺は結婚なんかするつもりはない。」


舞台は変わってお城の中。とある一室で宰相さん(乾)と王子様(聖悟)が話していました。

二人ともなかなか様になっています。お芝居も上手いです。

…ああ、元からそうでしたっけ。


「そう言わずに。お美しい令嬢ばかりですよ?」

「お前たちが勝手に集めただけだろう。俺には関係ないことだ。」


渋る王子に苦笑する宰相。

豪奢な椅子に座っている王様(斎藤)も、たっぷりとしたおひげの隙間からため息をもらしました。


「一体何が気に入らないというのだ、王子よ。」

「…父上。」

「お前の未来のお妃を決める大事な会だというのに、お前が参加しないのでは意味がない…」

「ですから、俺には妃など必要ないと言っているでしょう!」


いいですね、王様も迫真の演技です。いい感じです。

先程のグダグダ芝居が帳消しになりそうです。王子様はさらに王様に追及しようと口を開きました。


―と、その時です。

玄関から来訪の合図であるラッパが鳴らされました。



「おや、どなたかいらっしゃったようですね。もう舞踏会は始まってるのに、誰――」


しかし、王子様は宰相さんの言葉を最後まで聞かずに部屋を飛び出しました。

本当は来訪者が誰だか知らないはずですけどね。何故でしょうね。

…まあ、彼も気になっていたんでしょうか、頬がゆるゆる緩んでいます。

王様と宰相さんはやれやれ、といった具合に肩をすくめました。


一方。

会場に着いたシンデレラは好奇の視線を受け、気まずい思いをしながらも中に進み、ご飯をつまんでいました。

花より団子です。

それにしても他の人に目もくれず一心不乱に美味しい料理を食べまくるとは。…ヒロインとしてはちょっとまずい気がしますが。

シンデレラが笑顔でワインを傾けているとき、バンっと勢いよく広間のドアが開かれました。

途端に周囲がざわつきます。華やかなドレスに身を包んだお嬢さんがたは頬を赤く染めています。


「王子様だわ!」

「やっといらしたのね!」


なんて声があちこちからあがり、辺りは色めき立ちました。そしてシンデレラは―


「…ん?おうじ?」


シンデレラは、ロブスターの殻を割っていました。

…ちょっと、ちゃんと芝居をする気がありますか、那津さん。

これ以上ナレーターを怒らせないでください。


王子様はきょろきょろと誰かを探すように視線を泳がせます。

そしてその人を見つけると他の女性には目もくれずに歩み寄って―


「…見つけた。」


嬉しそうに語りかけました。


勿論、お相手は白いドレスを身にまとったシンデレラ。

なんて素敵な王子スマイルなんでしょう。

全く関係ないお嬢様も何人かぶっ倒れるほどの威力です。シンデレラもうっとりしています。

…あ、片手にもっているステーキの皿は置いてください。雰囲気ぶち壊しなので。


―ごほん。気を取り直して。

王子様は跪いてシンデレラの手を取り、『私と一緒に踊って下さい』とダンスのお誘いです。

シンデレラも頷き、二人は広場の中央に足を進めました。

くるくると優雅に踊る王子と少女は一枚の絵のようで。

周囲の者は羨望の眼差しでそれを見ていました。

…一部を除いて。


「っ誰なの、あの女は!いきなり現れて王子様と踊るなんて!…わたくしの方がよっぽど美人ですのにっ!」

「あら、あの方…シンデレラにそっくりではありませんか?」

「な、なんですって!?お母様、本当ですの!?」


―ひそひそと話すのはシンデレラの義姉(未央)と継母(麗奈)です。

中央にいるシンデレラを悔しそうに見つめています。

ギリ、と歯噛みする姿はとても演技には見えません。――ってあれ未央さん、もしかしてそれ、素ですか?


……。

ま、まあ、そんな外野はともあれ、

王子とシンデレラは静かなものに変わった音楽に合わせ、身体を揺らしながら二人だけの世界を作っていました。


「綺麗だ。よく似合ってる。」

「…そういうことを素面(しらふ)で言うかな、君は。」

「事実だからな。」


純白に着飾ったシンデレラを見て、王子は嬉しそうに笑いました。



――ゴーン、ゴーン。

しかし、幸せな時間もつかの間。

お腹の底に響くような、重い鐘の音が鳴り響きました。

例の、十二時の鐘です。

シンデレラの一夜の魔法が解けてしまう頃合いとなってしまいました。



「(…えっと、ガラスの靴を途中で落として退場、だっけ。)

ごめんなさい、王子様。…私、もう行かなくては。」



シンデレラが台本を思い出しつつ、ドレスのすそをまくって走り出しました。

ガラスの靴を鳴らしてまっすぐ出口を目指し――


――ですがそれは果たして、失敗に終わったのです。

シンデレラは手を掴まれ、あっという間に王子様の腕の中に戻されてしまいました。


「ひゃっ!」

「逃がすわけないだろ?」


びっくりして王子様を見上げるシンデレラ。

王子様はいたずらっ子のような表情を作ります。


「ちょ、待って!私、逃げないといけないんだけど!」

「だから、逃がさないって。」

「台本無視!?」

「…俺、思うんだけどさ、惚れた相手をみすみす逃して後日探す、なんて面倒な手段を取った王子は腑抜けだろ。とっとと捕まえてしまえばよかったんだよ、こんな風に。」

「ガラスの靴の存在意義は!?」

「知らん、そんなもん、いらん。」


きっぱりと男らしく言う王子様はニヤリと笑いました。

あらま、ガラスの靴涙目ですね。

ていうか、物語のクライマックス、総無視ですね。


呆然とするシンデレラ。

ちなみに魔法はとっくに解けてしまっているので、シンデレラは元の地味な灰色の服に衣裳チェンジしています。

しかし、王子は彼女のみすぼらしい姿を見て、にっこりと笑いました。



「…貴女がどこの身分の者であろうと関係ない。俺は貴女を妃に望みます。」



王子様はそんな完璧な台詞を口にし、完全に〆に入っちゃってます。

それも、世の女性を一瞬で虜にしてしまうような甘くとろける笑顔で。

…シンデレラは引き続き絶句しているようですが。


―しかし、台本がだいぶ書き変わってしまいました。

もう無茶苦茶です。

どうしましょうねえ、こんな結末でいいのでしょうか。

あ、でも審査員は『これでも全然アリ!!』と言ってますね。鼻血を出してる女性もいます。

…まあ、イケメンは何やっても許されるってやつですね。

これでよしとしましょうか。



「なー、もう帰っていいだろ?劇終わったし。」


そうですね、いいですよ。どうぞ彼女ごと持ち帰っちゃってください。


「ちょっ!物語ぶち壊しっ!?」


物語の冒頭からぶち壊した貴女にとやかく言う権利はありません。

ほら、とっとと行きなさい。リア充が。


「ほら行っていいって。てか我慢できないから、ここで襲ってい?」

「ちょーっ!?」


こうして王子様に捕まったシンデレラはそのまま城に留まり、幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし♪





END







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