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9,絶望の峡谷 ~虚無の門と、裏切りの影~

切り立った岩壁が空を覆い、底知れぬ闇が口を開けている。

風が唸りを上げ、時折、遠くから獣の咆哮が響く。

ここは大陸最北の禁断地帯——『禁断の深淵』への唯一の入口、「虚無の門」が眠る場所だ。イザベラ・ド・ヴァレンティアは峡谷の入り口で馬車を止め、優雅に降り立った。

古代竜の鱗甲冑が朝の薄光を反射し、まるで黄金の彫像のように輝いている。

木の棒を杖代わりに、ゆっくりと歩を進める。エミリアが荷物袋を抱えて後ろからついてくる。

 「お、お嬢様……本当にここから入るんですの?空気が……重いですわ。息苦しい……」

イザベラは振り返り、優しくエミリアの肩に手を置く。

 「ふふっ……怖いなら、ここで待っていてもいいですわ。ヴァレンティア家の令嬢として、一人で片付けてきますのよ」

エミリアは首を激しく横に振る。

 「い、いえ! わたくし、お嬢様の側にいます!メイドとして……最後までお守りしますわ!」

イザベラの瞳が優しくなる。

 「……ありがとう、エミリア。では、一緒に参りましょう」

二人は峡谷の奥へ進む。道は狭く、足場は不安定。

時折、岩が崩れ落ちる音が響き、緊張が高まる。やがて——巨大な門が現れた。黒い石でできたアーチ型の門。

表面に無数のコードのような模様が刻まれ、中央に浮かぶのは渦巻く虚無の球体。

【虚無の門】

ここを通れば、禁断の深淵——侵入者たちの本拠地へ繋がる。イザベラは門の前に立ち、神託の指輪を光らせる。「セラフィナ……開けてくださる?」指輪が応じるように輝き、門の渦がゆっくりと広がる。  ゴオオオオ……門が開き、暗闇の通路が現れる。イザベラは優雅に一歩踏み出す。

 「さあ……行きましょうか」

通路は果てしなく続き、壁には古いログの断片が浮かんでいる。

【ERROR: LOGOUT PROTOCOL OVERRIDDEN】

【USER DATA CORRUPTION DETECTED】

【ETERNAL LIFE PROJECT - PHASE 3 INITIATED】

エミリアが震え声で。

 「お、お嬢様……これ……本当にゲームの世界なんですか……?」

イザベラは静かに頷く。

 「もう……ゲームではないのかもしれませんわ。でも、私たちはここで終わらせませんのよ」

通路の先で、光が漏れている。そこは——広大な地下ホール。中央に巨大なサーバー塔のような装置がそびえ、周囲を黒装束の影たちが取り囲んでいる。

人数は数十人。

全員が高レベルで、Lv.70以上。そして、塔の頂上に立つ一人の男。黒いローブを纏い、顔を覆う仮面。

手に持つのは、管理者権限を示す杖。

【元運営リーダー:コードネーム「オーバーロード」】

男が低く笑う。

 「よくぞここまで来た、イザベラ・ド・ヴァレンティア。管理者権限を奪ったバグアカウント……お前は予想以上に厄介だった」

イザベラは優雅に木の棒を構える。

 「ふふっ……お褒めに預かり光栄ですわ。あなたが、この世界を『永遠の牢獄』に変えた張本人ですのね?」

オーバーロードが杖を掲げる。

 「牢獄? 違う。これは『救済』だ。現実の苦しみから解放し、永遠に生きられる楽園……お前のようなバグが、それを壊そうとしている」

影たちが一斉に動き出す。剣、魔法、銃器——多様な攻撃がイザベラに集中。  ドガァン! ズドォン! ビュンッ!だが——  ぽよんぽよんぽよん!!すべてが反射。新たに付与された

【全ダメージ反射率 +50%】により、攻撃は1.5倍になって跳ね返る。影たちの半数が即座に倒れる。【倍返し反射ダメージ 大量】

【撃破数:18/数十】

オーバーロードが舌打ち。

 「……管理者権限の強化か。だが……お前はまだ知らない。この塔は『世界のコア』だ。ここで、私が管理者権限を完全に掌握すれば……お前のような存在は、消去できる」

彼が杖を振り上げる。塔全体が震え、空間が歪む。

【管理者権限:アカウント消去コマンド起動】

イザベラの体に赤い警告が浮かぶ。

【警告:アカウント削除プロセス開始】

【抵抗可能:管理者権限対抗中……】

イザベラは静かに笑う。

 「ふふっ……消去?ヴァレンティア家の令嬢を、そんな簡単に消せるとでも?」

彼女は指輪を強く握り、叫ぶ。

 「セラフィナ! 対抗を!」

指輪が爆発的に輝き、塔の光とぶつかり合う。空間が激しく揺れ、ホール全体が崩壊し始める。オーバーロードが驚愕の声を上げる。

 「な……何だ、この力は……!」

イザベラは優雅に歩み寄る。

 「これが……ヴァレンティアの誇りですわ。あなたたちの『永遠』など、私には必要ありませんの」

彼女は木の棒を高く掲げ、最後の審判を放つ。

 「『ヴァレンティアの審判』——最大出力!」

金色の光が爆発し、塔全体を包む。反射の連鎖が起き、オーバーロードの攻撃がすべて彼自身に返る。  ドガァァァン!!塔が傾き、オーバーロードが膝をつく。

【オーバーロードに 最終反射ダメージ 99999(上限突破)】


【撃破】


塔の光が弱まり、空間が安定する。イザベラは息を整え、優雅に髪をかき上げる。

 「……終わりましたわね」

エミリアが駆け寄り、涙を浮かべて抱きつく。

 「お、お嬢様……! 本当に……本当に勝ったんですのね……!」

イザベラはエミリアを抱きしめ、静かに呟く。

 「まだ……終わりではありませんわ。塔のコアに、真の管理者権限が残っていますの。これを解放すれば……すべての人に、ログアウトの道が開けるはず」

彼女は塔の中心へ歩み寄る。コアは青く輝き、セラフィナの声が響く。

 「よくやりました、イザベラ。最後の選択を……あなたに委ねます」

イザベラは優雅に頷く。

 「では……解放して差し上げますわ。この世界を、自由に」

コアに手を触れる。光が爆発し、世界全体が震えた。

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