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5,ギルドの再訪 ~仲裁のメイド、理不尽を止める~

エリュシオン冒険者ギルドの大広間。イザベラ・ド・ヴァレンティアは、古竜討伐の報酬を受け取り終え、優雅に背を向けようとしたその瞬間——

二階バルコニーから冷ややかな声が降ってきた。

 「まあ……下賤なゴミアカウントが、Sランクを騙し取ったなんて。笑わせないでちょうだい」

シャルロット・ド・ローレンツィア。

ローレンツィア公爵家の長女、Lv.65のトップ魔導士。

深紅のドレスに身を包み、杖を優雅に携えた完璧令嬢が、ゆっくりと階段を降りてくる。

 「イザベラ・ド・ヴァレンティア……でしたっけ?3年放置の没落貴族が、急に古竜を倒しただなんて。

どうせバグか、チートツールでしょう?」

イザベラは静かに振り返り、優雅に微笑んだ。

 「……あら、ローレンツィア家のシャルロット様。お久しぶりですわね。お元気そうで何より」

シャルロットが嘲笑う。

 「元気も何も、私たちは『本物の貴族』ですのよ。あなたのような、運営のミスで生まれたゴミアカウントとは違いますわ」

広間中の冒険者たちが息を飲む。

ギルドマスターが慌てて仲裁に入ろうとするが、イザベラが優雅に手を挙げて制した。

 「ふふっ……面白いことをおっしゃいますわね。では、証明して差し上げましょうか。この私が、本当に『理不尽』なのかを」

シャルロットが杖を構える。

 「証明? いいですわ。ここで、私の『銀月の審判』を受けてみなさい。一撃であなたの正体を暴いてあげます」

月光の槍が無数に浮かび上がり、イザベラに向かって放たれる。  シャァァァァン!!だが——  ぽよんっ! ぽよんぽよん!!槍がすべて跳ね返り、逆にシャルロットに向かって飛んでいく。シャルロットが慌ててバリアを張るが——  ドガァン!!バリアが粉々に砕け、シャルロットが後退。

【銀月の審判が反射されました】

【シャルロット・ド・ローレンツィアに 自傷ダメージ 3800】

シャルロットのHPが一気に3割減。広間が凍りつく。

 「……は?」

シャルロットが唇を噛み、杖を握り直す。

 「この……何ですの、このバグみたいな反射は……!許せませんわ……!」

彼女の瞳に怒りの炎が宿り、次の大魔法の詠唱が始まる。

【ローレンツィア家の秘奥義:月蝕の裁き(Lv.70専用)】

周囲を暗黒の月光で包み、対象を完全に封じる禁断の魔法。

一度発動すれば、回避不可能の範囲攻撃。月が歪み、黒い光が渦を巻き始める。イザベラは静かに木の棒を構え、優雅に笑う。

 「ふふっ……本気でお相手してくださるの?では、私も少し本気を出して差し上げますわ」

棒を投擲する構えを取った瞬間——

 「お、お待ちくださいまし!!」

突然、エミリアが二人の間に飛び出した。小さな体で両手を広げ、イザベラとシャルロットの間に立ちはだかる。

 「お、お嬢様! シャルロット様!ここで戦うのはおやめくださいまし!ギルド内ですし……街の皆さんが危ないですわ!」

イザベラが眉をひそめる。

 「エミリア……下がりなさい。これは貴族同士の話ですわ」シャルロットも苛立つ。「どいてちょうだい、NPC。これは貴族の名誉にかけた決闘よ」

だがエミリアは震えながらも、首を横に振る。

 「い、いえ……!お嬢様は……本当に強いんです。でも、シャルロット様も本当に強いんです!お二人が本気でぶつかれば……きっと、街が壊れてしまいますわ!それに……お嬢様は、ただ『この世界で生き抜きたい』だけなんです!ログアウトできないんです……!シャルロット様も、きっと……何か大切なものがあるはずですわ!」

広間が静まり返る。エミリアの瞳に、涙が浮かんでいる。

 「お二人が戦うのは……悲しいですわ。貴族様同士、もっと……お話しなさってくださいまし……!」

イザベラの表情が、わずかに揺らぐ。

 「……エミリア……」

シャルロットも、杖を下ろしかける。

 「……NPCの分際で……生意気な」

だが、その声にいつもの冷徹さは薄れていた。

イザベラはゆっくりと木の棒を下ろし、優雅にため息をつく。

 「ふふっ……エミリアの言う通りですわね。ここで派手にやっても、何も生まれませんわ」

彼女はシャルロットに向き直る。

 「シャルロット様。今は……お引き取りなさってくださいまし。でも、次にお会いする時は……もっと『本当の話』をしましょう。この世界が、ただのゲームではないということを」

シャルロットは唇を噛み、杖を収めた。

 「……覚えておきなさい、イザベラ・ド・ヴァレンティア。ローレンツィア家は、あなたのような存在を許しませんわ」

彼女は優雅に背を向け、二階へ戻っていく。広間がようやく息を吐く。イザベラはエミリアの頭を優しく撫でた。

 「……ありがとう、エミリア。あなたのおかげで、少し冷静になれましたわ」

エミリアは涙を拭き、微笑む。

 「お、お嬢様……わたくし、ずっとお側にいますわ!」

イザベラは街の夜空を見上げ、神託の指輪をそっと握る。ライバルの出現。

仲裁に入った小さなメイド。

そして、この世界の「真実」。すべてが、少しずつ繋がり始めていた。

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