3,エリュシオン街の洗礼 ~貴婦人の理不尽、街を震撼させる~
エリュシオン城壁をくぐった瞬間、イザベラ・ド・ヴァレンティアは優雅に鼻を鳴らした。
「ふふっ……なかなか立派な街ですわね。ヴァレンティア公爵領の首都に比べれば田舎ですが、許して差し上げましょう」
街の中心は大通り。石畳の道に馬車が通り、商人たちの呼び声が飛び交う。
冒険者ギルド、武器屋、魔法道具店、宿屋——典型的なMMORPGの街並みだ。だが、イザベラの姿は異様だった。Lv.8のナイトが、紅蓮騎士団の重鎧を着込み、木の棒を優雅に携えている。
傍らにはNPC村娘エミリアが、黒狼団のマントを羽織って小走りでついてくる。通行人たちがざわつく。
「なんだあの女……フルプレートなのにLv.8?」
「鎧が紅蓮騎士団のやつじゃね? あいつら最近消えたって噂だけど……」
「横にいる娘、NPCっぽいけど……連れ歩いてんのかよ」
イザベラはそんな視線を優雅に無視し、まずは目的地へ向かった。冒険者ギルド。巨大な建物に入ると、受付嬢が笑顔で迎える。
「いらっしゃいませ! 冒険者登録をお望みですか?」
イザベラは木の棒を軽くテーブルに置いた。
「ええ、当然ですわ。このヴァレンティア家のイザベラ・ド・ヴァレンティアが、正式に冒険者として登録して差し上げます」
受付嬢が一瞬固まる。
「……ヴァレンティア公爵家? あの……没落したって噂の……?」
イザベラの目が細くなる。
「没落? あらあら、失礼なことをおっしゃいますわね。ヴァレンティア家は今、この瞬間から再興の道を歩み始めますのよ」
エミリアが慌ててフォロー。
「お、お嬢様は本当にすごいんです! スライムも狼も騎士団も……みんなぽよんって!」
受付嬢は苦笑いしながら登録用紙を差し出す。
「では、こちらにご記入を。職業はナイト……Lv.8ですね。ランクは初心者からFランクスタートになります」
イザベラは優雅にペンを取り、流れるような筆致でサイン。
【冒険者登録完了】
【イザベラ・ド・ヴァレンティア Fランク】
【ギルドカード発行】
受付嬢がカードを渡しながら説明。
「Fランクの依頼は、薬草採取やゴブリン討伐など簡単なものから。報酬は少ないですが、経験を積んでランクアップを——」
イザベラがカードを一瞥し、優雅に微笑む。
「ふふっ、そんな下賤な依頼など必要ありませんわ。私は……もっと華やかなものを望みますの」
彼女は掲示板へ向かった。高難易度依頼コーナー。
【緊急クエスト:ドラゴン討伐(Sランク)】
報酬:1000万ゴールド + ドラゴンの鱗(レア素材)
対象:Lv.50以上推奨 パーティー推奨
周囲の冒険者たちが嘲笑う。
「は? Lv.8がSランク見てるぞw」
「バカじゃねーの? 即死コースだろ」
「貴族のコスプレか? 笑えるわ」
イザベラは静かにクエスト紙を剥がした。
「これを、受注いたしますわ」受付嬢が慌てる。
「え、ええ!? 無理です! Sランクは上級ギルド員のみ——」
イザベラが木の棒を軽く振る。
「無理? あら……この私に、無理などという言葉は通用しませんのよ」
次の瞬間——ギルド内にいた上級冒険者(Lv.45の剣士)が、からかうように近づいてきた。
「おいおい、嬢ちゃん。Sランクは命がけだぜ?お前みたいなゴミアカウントじゃ——」
イザベラが優雅に棒を投げる。 ブオンッ! ガキィン!!剣士の兜に直撃。
一撃でHPが半分以下に。【クリティカルヒット!】
【上級冒険者・ガルドに 45ダメージ】
ギルド内が静まり返る。
「……は?」
ガルドが呆然とする。イザベラは優雅に髪をかき上げた。
「ふふっ……これがヴァレンティア家の力ですわ。まだ本気ではありませんのよ?」
エミリアが拍手。
「お嬢様、すごいですわ!」
受付嬢は震えながらクエスト受注を承認。
【緊急クエスト:ドラゴン討伐 受注完了】
【パーティー未結成のため、単独挑戦扱い】
ギルドマスター(Lv.60の老人)が奥から出てきた。
「嬢ちゃん……本気か?ドラゴンは街の北の山脈に棲む古竜だ。一人じゃ死ぬぞ」
イザベラは優雅に微笑む。
「死ぬ? あら……この私に、そんな言葉は通用しませんわ」
彼女はギルドを後にした。─────────────────
次なる目的地:オークション会場。街の地下にある高級オークションルーム。貴族や上級冒険者しか入れない場所だ。
イザベラは堂々と入場。受付の男が止める。
「貴族の証明を——」
イザベラがギルドカードを差し出す。
「ヴァレンティア家のイザベラですわ。これで十分でしょう?」
男は渋々通す。会場内は豪華なドレスや鎧の貴族たちで満ちている。イザベラが入ると、ざわめきが広がる。
「ヴァレンティア家の……没落令嬢?」
「Lv.8でフルプレート? 何かの冗談か?」
「紅蓮騎士団の鎧……まさかPKで奪ったんじゃ……」
オークションが始まる。最初の品:【伝説の剣・エクスカリバー(レプリカ)】
開始価格:50万ゴールド
イザベラは静かに手を挙げる。
「100万」
会場がどよめく。
「いきなり倍!?」
「誰だあの女……」
さらに高額品が出る。【古代竜の鱗甲冑セット】
開始価格:300万ゴールド
イザベラが再び手を挙げる。
「500万」
貴族の一人が苛立つ。
「嬢ちゃん、金の出所は? ヴァレンティア家は破産寸前だろうが!」
イザベラは優雅に微笑む。
「ふふっ……心配無用ですわ。私はこれから、もっと稼ぎますのよ」
彼女は所持金を確認。黒狼団や紅蓮騎士団からドロップした装備を、街の露店で売りさばいた金
——すでに800万ゴールド以上。さらに、ドロップアイテムを次々売却。
【古代竜の鱗甲冑セット】落札:イザベラ・ド・ヴァレンティア 800万ゴールド
会場が凍りつく。
「800万……一撃で落としたぞ」
「マジかよ……あのゴミアカウントが……」
イザベラは新しい甲冑を即座に装備。
【装備変更:紅蓮騎士団の重鎧 → 古代竜の鱗甲冑(防御力+450、耐竜属性+50%)】
見た目が一気に豪華に。エミリアが目を輝かせる。
「お嬢様……本物の貴婦人ですわ!」
─────────────────夜。
イザベラは街の高級宿屋に部屋を取った。ベッドに優雅に腰掛け、ステータスを確認。Lv.8 → クエスト受注ボーナスでLv.9へ。
「ふふっ……ドラゴン討伐。楽しみですわね」
エミリアが心配そうに。
「お、お嬢様……本当に一人で大丈夫ですか?」
イザベラは優雅に笑う。
「心配無用ですわ、エミリア。この理不尽なバグがあれば……何も恐れることはありませんの」
窓の外、北の山脈に古竜の咆哮が響く。イザベラの瞳に、興奮の色が浮かぶ。ログアウト不能の絶望は、まだ消えない。
だが今、この世界で——ヴァレンティア家の名を、理不尽に輝かせる時が来た。




