拠点に引越
今回は、ちょっと話が長い‥長くてすみません。
暴力シーン少しだけ・・・・後半に有ります。
星の探索と移住のために 賢者達は、真っ先に拠点を作ることにした。
宇宙船からプレハブの資材を下ろし、移住への足掛かりとするためには、人力と人材が少なすぎる、そこで【プロメテウス】の提案を受け入れることにした。
【プロメテウス】の提案とは、宇宙船【Tbellus Terra】(ペッルス テラ) 後方の資材格納スペース【future=未来】と【hope=希望】を本体より切り離して地上に降ろしてはどうか?というものだった。元々切り離しが出来るようになっていて、小さいながらジェットエンジンも装備している。コンピュータ制御で離着陸可能だという。これを使わない手はない。
拠点決定までに何度も検討を重ね。大きくはないが、小さくもないだろうという島が、選ばれた。
島の中央には、大きな活火山があり、裾野には緑が生い茂っていて、樹海を形成している。動植物の育成環境の探査にも良いのではないかと判断された。
少し、離れてはいるが、海に近い利便性もある。地上の動物や、海洋生物の研究には、打ってつけの場所だった。また、拠点のすぐ傍に湖が点在していて、水棲の動植物の観察もできるし、検査後ではあるが、水の心配もなさそうな土地というので全員一致でここに人類最初の足跡を残すことに決めた。
生きていくためには、水は大事だものね。
【プロメテウス】の誘導により資材格納スペースを火山脇の湖の傍に降ろした。
120年もの間、宇宙を飛翔していたのだ、どこか傷んでいてもおかしくないと、不安な気持ちになる人々に対して、【プロメテウス】が宣う。
「宇宙には、酸素も窒素もないのです。故に錆びることも無ければ痛むことも無いのですよjと。
「それに・・・ちゃんとメンテナンスはしておりますので、失敗する事はありえません。」
モーガン総督と憲法作成中の劉とジェームスの三人を残して、9人の賢者が、地上へと降り立った。
花音が、格納スペースの扉を恐る恐る開けると、目の前には雄大な山がそびえたっていた。かつての地球では、見たこともない青い空、そして感じたことのない風景と空気に圧倒された面々。
その山を見た花音が、遠い昔に噴火し水没してしまった日本の富士山みたいだと言ったことから「フジヤマ」と命名され、海へと続く湾は、フジヤマに因んで東京湾と呼ばれることとなった。今の地球の地図には無い地名。
ほんの少しだけセンチメンタルで、懐かしい望郷の思いがよぎる。花音は、その憧憬にも似た風景に見たことも無い母の故郷へと思いを飛ばす。
「ああ、そうだ。ここには、桜を植えよう、きっと綺麗だと思うの・・」微笑みながら呟いた。
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地上探索を初めてから一週間が、経とうとしていた。はた目には、地球となんら変わりが無いように見えても真実そうではない。
まるで昔話や神話の世界に住むような生物を見かけた。
炎を纏ったトカゲ(サラマンダー)や、水の中に住まう馬ケルピーなど例を挙げればきりがない。
「小さい頃に読んだ童話の世界よね。」
「この星の何かが、魔法使いにしてるんだと思うけど・・身体的能力は、地球上の物とは特に変わらないわ。なにが、魔法使いにしているかよね。」
動植物観察と採取担当の4人と医師のソフィアで、持ち寄った情報のすり合わせをした。
「何が、違うか・・感覚的なものなんだけど・・。」花音が、言う。
「なんでも思ったこと・感じたことを話してほしいの。私たちの話し合いが今後に役立つと思って、欲しいのよ。男性と女性では、感じ方も違ったりするわけだし」
「そうね、ソフィアの言うとおりだわ。私は、ここの大気というか空気が、重いというか、濃く感じるのよ。」
「花音と同じように感じる人はいる?」
ソフィアの問いかけに全員が、挙手した。
「まず、それが何かを突き止めたいね。そして、それを見つけたら人体に影響がないかをソフィーが調べてくれるかい?」
「OK!エリック、植物はこのままオリーにお願いするわ。それとモーガン総督への報告もお願いね。」
「じゃ、これで一旦解散。明日は、特別休暇にするからゆっくり休んでくれ。休暇明けは、馬車馬のように働いてもらうからね。」
エリックが、みんなの顔を見ながらにっこりと笑いかけた。
「それと、ルーカスからの伝言で、花音が言ってた温泉があったということだ。明日から利用可能だそうだから皆で堪能しようじゃないか、残念ながら湯船は、男女別々だけどね。」
エリックの言葉でみんなが大笑いする。
「「楽しみですね、じゃ、解散!!」」
花音は、与えられている自分の部屋に戻ると、疲れて何もしたくなかった。
「温泉か~、ルーにお礼言わないとな。どんな温泉かな・・ふふ楽しみ~、それとペット飼いたいなー癒されたい・・・」
簡易ベットの上に横になるとすぐに眠りは、訪れた。
この星に来て、花音は、初めて夢を見た。
ああ、これは夢なんだと自分でも思える夢だった。聞いたことはあるが、訪れたことも無い。多分、これは日本。遥か昔に地震と気象変動により海の中に沈んだ国、今は無き母の故郷。
なのに・・桜吹雪の中で 私は娘の手を引いて名前を呼んだ『・・・・』
夢だけれど、私にはそれが私の娘だとすぐに分かった。娘は、柔らかなラベンダー色の奇麗な瞳で 髪は、私と同じ黒髪のまるで人形のようだ。柔らかく笑みを湛えて、『ねぇ。ママ・・パパは?』と、花音に尋ねた。
そこで、目が覚めた。不思議な夢だった。
そもそも、私には、恋人もいないし、男性と手を握ったことも無い。奥手というか、男性恐怖症。
どこから見ても東洋人の私の身形は、とても珍しいらしく子供の頃から危険と隣合わせだった。
父も母も純日本人の私は、血統書付きの犬のように珍しがられ、子供のころは何度も誘拐もされかけた。時には、大人しくしろと殴る蹴るの暴行・暴力を受けた。その経験が、恐怖の源となり記憶から消えてくれない。
一度は、本当に誘拐された。すぐに発見され、事なきを得たが、男性の怒鳴り声や暴力的な言葉を異常に恐れるようになった。正直、今も男性は苦手だ。兎に角初対面の男性は怖い。
男性の下心のようなものが、垣間見えてしまって、未だにキスすらしたことが無い。なのに・・いきなり子供の夢を見るなんてと・・・ひっそりと笑ってしまう。
今までは、交際を申し込まれても研究を理由に逃げ続けてきたが、これからは、そうもいっていられなくなった。入植後は、速やかにパートナーを見つけ、子供を設けないといけない。人類育成計画。兎に角人口を増やさないといけない・・・・。パートーを見つけられない場合は、人口受精という形もとれる。
一人で二人以上産まないと人口が増えないから、最低のノルマは子供が二人。これは、成人女性に課せられた使命でもある。産んだ後は、コロニーで育てる。
パートナーシップを取るより人口受精の方がいいかなと考えてはいるが、気が重くなる話だ。
気持ちを切り替えようと枕元にあった、タブレットを手に取り連絡事項や伝言を見た。
ルーカスから、温泉の場所の地図と写真が送られてきた。大きな浴場と洞窟の中だろうか?岩をくりぬいたような浴槽の温泉だ。こちらは、私へのサプライズらしい。あとで、お礼を言わないと。
ルーカスは、父の親友だった、父とは、母を取り合った仲らしい。
父母が、事故でこの世を去ってからは、独身の彼に育ててもらった。私のために婚期を逃したんじゃないかと思うと 申し訳なく、いくら感謝してもし足りない。
「よし、明日?今日は何もかも忘れて温泉三昧しちゃおー!」
今日の疲れは・・・今日のうちに!!
年取ると・・・疲れが翌日とか、翌々日で。気が付いたら疲れてるというショウもない私です。
良かったら。また続き読んでくださいね。