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プロローグ 出会いはドキドキ、硝煙の香り
硝煙の香りがした。
拳銃で武装した男達が路上に何人も倒れ、辺りには悲鳴が飛び交っている。血溜まりに汚れた路面に尻餅をついたまま、羽路色美は目の前に立つ脅威を見上げていた。
銃口。それを向けてくる長い赤髪の少女。
黒い軍服風の装いに身を包んだ少女は、全身に付着した返り血よりも禍々しい赤を瞳に宿していた。逃げ惑う人々に目も暮れず、標的だけを見据える。
「最期に言い残した事は?」
小さな唇から無慈悲な一言が漏れる。確実に訪れるであろう『死』を目前にして、色美の脳裏に浮かんだのは本来ならあり得ないはずの台詞だった。
「あなた、アイドルになってみない?」
「……は?」
磨けば光る原石は時に血の海から見つかるものだ。
潔癖すぎる選り好みはしない。あの日、悪人達をアイドルにスカウトすると決めたその時から、色美の覚悟は決まっていた。