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幼少期

その翌日、レオンは再び庭でアリスと会うことになった。彼女の提案にしぶしぶ従うつもりだったが、心のどこかで昨日のような楽しい時間が待っているのかもしれないという期待も感じていた。


「おはよう、レオン!」アリスは庭に現れるなり、明るい笑顔で手を振った。「今日はもっと楽しいことを思いついたよ!」


「楽しいこと?」レオンは少し疑いの目を向けながらも、彼女の元に歩み寄った。「何をするつもりなんだ?」


「秘密!」アリスはにやりと笑いながら言った。「まずは目を閉じて!」


「目を閉じるって…何をする気だ?」レオンは戸惑ったが、アリスの期待に満ちた表情に逆らえず、ゆっくりと目を閉じた。


「よーし、そのまま動かないでね!」アリスはレオンの手を取り、彼をどこかへと導き始めた。草の上を歩く感触と、時折聞こえるアリスの笑い声だけが頼りだった。


「どこに連れて行くんだよ?」レオンは少し不安になりながらも、彼女の手をしっかりと握りしめた。


「もうすぐだよ、あと少し!」アリスの声はますます楽しそうで、レオンはますます不安と好奇心が入り混じる感覚を覚えていた。


「はい、着いたよ!目を開けて!」アリスが言うと、レオンはゆっくりと目を開けた。


目の前には、色とりどりの花々が一面に広がる花畑が広がっていた。昨日見た花壇よりもはるかに広く、色彩豊かで、まるで夢のような光景だった。


「どう?綺麗でしょ?」アリスは嬉しそうに言い、花畑の真ん中に立って、まるで自分の宝物を見せるかのように両手を広げた。


「…すごいな。」レオンは思わずつぶやいた。これほど美しい景色を目にしたのは初めてだった。


「ここは私のお気に入りの場所なんだ!時々一人で来て、花とお話しするの!」アリスは無邪気に笑いながら、花々に囲まれて軽やかに舞うように歩き回った。


「花と…お話?」レオンは驚きながらも、彼女の楽しそうな姿に引き込まれていった。「お前、本当に変わってるな。」


「変わってるって、褒め言葉?」アリスは楽しそうに笑って答えた。「でもね、花って本当に色んなことを教えてくれるんだよ!例えば、季節やお天気、それにどんな気分かも分かるんだ。」


「そんなの、ただの空想だろ。」レオンは呆れたように言ったが、アリスは全く気にする様子もなく、さらに話し続けた。


「だって、レオンも感じるでしょ?この花畑にいると、なんだか気持ちが落ち着くって。」アリスはレオンに近づき、彼の顔を覗き込んだ。「花は、そうやって私たちを癒してくれるんだよ!」


「…まあ、そうかもしれないな。」レオンは少し照れくさそうに認めた。確かに、この場所には不思議な安らぎがあった。そして、アリスと一緒にいると、なぜか心が軽くなるような気がした。


「今日はここでお花を摘んで、ブーケを作ろうよ!」アリスは興奮気味に提案した。「お母様にも喜んでもらえるし、レオンのお母様にもプレゼントしよう!」


「ブーケか…」レオンは考え込んだ。花を摘むなんて自分には似合わないと感じていたが、アリスがこんなに楽しそうにしているのを見ると、断る気にもなれなかった。「まあ、やってみてもいいか。」


「よし、それじゃあ、まずはこの花から!」アリスは満面の笑みで、レオンに花を差し出した。


レオンはそれを受け取り、慎重に花を摘んだ。「こんな風でいいのか?」


「うん、上手だよ!」アリスは嬉しそうに褒めた。「レオン、やればできるじゃない!」


「お前に言われると、ちょっと変な気分だな…」レオンは照れ隠しにそっぽを向いたが、内心では少し嬉しく感じていた。


二人はしばらくの間、花畑の中で静かに花を摘み続けた。レオンは自分でも驚くほど、この作業に集中していた。アリスがそばにいて、無邪気に話しかけてくることが、彼にとって心地よい時間になっていた。


「レオン、今度はこれを組み合わせてみて!」アリスはいくつかの花をまとめて手渡し、彼の手を取って一緒にブーケを作り始めた。


「こうやって…まとめるのか?」レオンは不器用ながらも、アリスの指示に従って花を結び合わせた。


「うん、そうそう!上手だよ!」アリスは微笑みながら言った。「もう少しで完成だね。」


「こんな風に花をまとめるなんて、初めてだ。」レオンは照れくさそうに言った。「でも、悪くないな。」


「うん、きっと素敵なブーケになるよ!」アリスは嬉しそうに言った。「それに、レオンが一緒に作ってくれたから、特別なんだ。」


その言葉に、レオンは一瞬ドキッとした。彼女の無邪気な言葉に、なぜか胸が高鳴るのを感じた。「特別…か。」


「よし、これで完成!」アリスはブーケを高く掲げ、満足げな表情を浮かべた。「すごく綺麗にできたよ!」


レオンはそのブーケを見つめながら、いつの間にか笑顔になっている自分に気づいた。「本当に…いい出来だな。」


「レオン、笑ってる!」アリスは嬉しそうに叫び、彼に向かって駆け寄った。「やった!やっぱり、楽しいことをすれば笑顔になれるんだ!」


「お前のおかげかもな…」レオンは小さく笑いながら、ブーケをそっとアリスに渡した。「ありがとう、アリス。」


「こちらこそ!」アリスは受け取ったブーケを大事に抱え、満面の笑みで言った。「これからも一緒に、もっと色んなことをやろうね!」


レオンは頷きながら、心の中で何かが少しずつ変わっていくのを感じた。アリスの無邪気さと明るさが、自分の心に温かい光を灯していることに気づいていた。

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