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幼少期

魔法の国アルティア、陽光が優しく降り注ぐ小さな村。その村の一角に、男爵家のアリスは無邪気に育っていた。彼女の心には好奇心と冒険心が満ち溢れ、毎日が新しい発見に満ちていた。アリスは特に春の訪れを待ちわびており、村の花々が色とりどりに咲き乱れる様子を見ながら、自らもその美しさに負けないように、元気いっぱいに過ごしていた。


一方、隣の公爵家に住むレオンは、幼少期から美少年と称され、多くの人々に注目を浴びていた。しかし、彼の心の中には秘密が隠されていた。彼は幼い頃、侍女に襲われるという恐ろしい経験をし、その影響で心に深い傷を抱えていた。周囲の期待や称賛を背にしながらも、彼は自分の心の闇から逃れられずにいた。普段は冷静沈着であったが、孤独に過ごす時間が長くなるにつれて、その心の壁はますます厚くなっていった。


レオンの両親は、彼の変化に心を痛めていた。自分の子が無邪気に笑ったり、友達と遊んだりする姿を思い描くことができず、毎日が辛かった。ある日、彼の母は心配しながら夫に言った。「レオンがこんなに引きこもっていては、どうにかしなくては。彼に友達を作らせたら、外に出てくれるかもしれないわ。」


「どうすればいいのか…」父は少し考え、「親交があった隣の男爵家のアリスを思い出した。彼女なら、レオンを少しは変えてくれるかもしれない。明るくて無邪気な子だから、彼の心にも何か影響を与えるだろう。」


その春の日、両家の親が集まって顔合わせを行うことになった。アリスはその日のことを楽しみにしており、早朝から準備に取り掛かっていた。彼女は特に自分の好きな花を摘んで、小さな花束を作り、レオンにプレゼントすることに決めた。心の中で「きっと喜んでくれる」と期待を膨らませていた。


午後、両家が集まった庭には色とりどりの花が咲き乱れ、和やかな雰囲気が漂っていた。アリスは父と母の隣で、レオンの登場を心待ちにしていた。ふと、空を見上げると、青空が広がり、風が心地よく頬を撫でる。そんな穏やかな時、待ちに待った瞬間、レオンが庭に姿を現した。


彼は金色の髪をさらりと揺らし、周囲の注目を集めていた。その美しさに驚き、アリスは思わず息を呑んだ。「こちらがレオンです。」アリスの父が彼を紹介した。アリスは目を輝かせながら彼を見つめていた。その瞬間、アリスはレオンの美しさに心を奪われた。彼の青い瞳は、どこか悲しげでありながらも、光を宿していた。


「こんにちは、アリス。」レオンの声は少し硬かった。周囲から注目されていることが少し恥ずかしかったのかもしれない。


「こんにちは、レオン!今日は一緒に遊ぼうよ!」アリスはニコニコと笑顔で応えた。その笑顔は、彼女の無邪気さを象徴するもので、レオンは一瞬、心が和むのを感じた。


「遊ぶって、どうするの?」レオンは冷たく返した。彼の心の中では「またこの子か…」という思いが渦巻いていた。


「例えば、かくれんぼとか!それとも、私が提案したお花を摘みに行こう!」アリスは目を輝かせながら続けた。「お花がいっぱい咲いている場所があるんだ!」


レオンは一瞬考え込んだ。「それって、子供がすることじゃないの?」


「ううん、そういうわけじゃないよ!大人だって楽しめる遊びだよ!それに、私がレオンと一緒にいると楽しいと思う!」アリスは声を大にして言った。彼女の無邪気さに心を打たれたレオンは、少しだけ心が動いた。


「まあ…やってみるか。」レオンは渋々承諾したが、内心では「どうせすぐ飽きるだろう」と思っていた。


「本当に?やったー!」アリスは嬉しそうに跳ね上がった。「じゃあ、最初はかくれんぼをしようよ!」


「かくれんぼ?」レオンは疑問の目を向けた。「そんな遊び、今さらして楽しいのか?」


「もちろん!それに、レオンはかくれんぼが得意なんじゃない?」アリスは目を輝かせて言った。「私はレオンが隠れているところを探し出すのが楽しみなんだ!」


「そういうことか…」レオンは少し考え、内心のモヤモヤが消えていくのを感じた。彼は少し微笑みながら、「じゃあ、俺が隠れる番だな。」と告げた。


アリスは大喜びで、「よし、じゃあ10まで数えるね!」と言った。


「数えるのは早くしろよ。」レオンは少し恥ずかしそうに言った。


アリスは元気よく「1、2、3…」と数え始め、レオンは急いで近くの木の影に隠れた。レオンの心の中には、不安と期待が交錯していた。果たしてアリスは、どれほど自分を探し出すのか。それが楽しみでもあり、同時に怖くもあった。


「…9、10!いくよー!」アリスは元気に叫んで、探し始めた。「レオン、どこにいるの?」


隠れているレオンは、彼女の声が近づいてくるのを感じた。「この子は本当に無邪気だな…」と、彼は苦笑しながら思った。普段の彼にはない、ほのかな期待感が芽生えてきていた。


「こっちにはいないみたい…」アリスは何度も声をかけ、周囲を走り回って探していた。彼女の笑い声はレオンの心に響き、その瞬間、彼は一瞬だけ心が軽くなった。


「レオン、見つけたー!」アリスは突然、レオンの隠れた場所に近づいてきた。レオンは驚いて身体を硬くした。


「えっ、もう見つかったのか?」と驚くレオンに、アリスは満面の笑みで言った。「もう、かくれんぼは簡単すぎるよ!もっと隠れられる場所を探さなきゃ!」


「じゃあ、今度はお前が隠れる番だ。」レオンは少し照れくさそうに言った。


「いいよ、でも今度はレオンも本気で隠れてね!」アリスは目を輝かせて言った。


レオンは心の中で「こんなに楽しいと思わなかった」と思いながら、彼女の純粋さに少しずつ心を開いていくのを感じた。


その後も、アリスとレオンは数回かくれんぼをし、笑い合いながら遊んだ。レオンは少しずつアリスとの時間を楽しむようになり、最初は鬱陶しかったはずの彼女の存在が、少しずつ心地よくなっていった。

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