プロローグ
「今日から新しい生活が始まるんだ…」
彼女は心の中でそうつぶやいた。男爵家の次女として、幼少期から礼儀作法や魔法の基礎を学んできたアリスだが、この魔法学園に入学することは彼女にとって大きなステップだった。新しい友達、新しい経験、そして…恋。
「いつか素敵な彼氏を作りたいなあ」
アリスはこれまで恋愛に興味がないわけではなかったが、周囲には彼氏にしたいと思うような相手は見つからなかった。幼なじみのレオンは常にそばにいてくれる存在だったが、彼に対して恋愛感情を抱いたことは一度もない。レオンは幼い頃から彼女を助けてくれる「頼れる幼なじみ」だ。アリスにとって彼は兄弟のような存在であり、それ以上でも以下でもなかった。
しかし、今日は違った。今日から彼女は魔法学園の生徒として、新しい友達と出会い、そして新しい恋を見つける機会を手にするのだ。彼女の胸の内には、期待と不安が入り混じっていた。
「大丈夫、アリス。きっと素敵な人に出会えるはずだよ!」
自分を励ますように小さな声でつぶやき、彼女は学園の門をくぐり抜けた。
そのそばには、いつも通りレオンがいた。レオンはアリスと同じくこの学園に通うことになっていた。彼は公爵家の跡取りであり、幼少期からその美貌と才能で周囲から注目されていた。背の高い体躯に、整った顔立ち。彼が歩くたびに、道行く生徒たちが振り返って彼に見惚れていた。
「アリス、もう行くよ。遅れると大変だよ」
レオンの落ち着いた声に、アリスは我に返った。
「あ、そうだね!急がなきゃ!」
アリスは笑顔で応え、彼と並んで歩き始めた。彼女にとって、レオンは「いつもそばにいてくれる安心感」の象徴だった。彼と話していると、自然と心が落ち着き、どんな不安も消えていく。
だが、レオンは内心、アリスの言葉に少し戸惑っていた。彼女が最近、頻繁に「恋をしてみたい」と言い始めるようになったことが気になっていたのだ。