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三文芝居の裁判劇

 デイモンの予想通り、時代遅れのカタナ装備で盲目的に暴れ回っていた浪人たちは、連携を取って銃武装した町の住民たちにはまったく刃が立たず、ガンスミスの焼き討ちから1時間も経たないうちに、その全員が射殺されていた。

 そして彼らとともに海を渡っていたニッポン人たちは彼らの仲間と判断され、まだ港の端でたむろしていたその全員が縄で縛られ、広場へと連行されていた。

「**……***……」

 彼らはどうやら日本語で釈明、あるいは命乞いをしているようだったが、町の人間には太平洋の向こうの言語など分かるはずもない。

「さっさと殺せ! 縛り首だ!」

「悪魔どもめ!」

 殺気立つ住民たちは、今にも私刑(リンチ)を決行しかねない、恐怖と怒りが入り混じった表情を並べていた。と――。

「お、お待ち下さい!」

 ニッポン人たちの前に、やはり同郷らしい東洋人が駆け込み、地面に頭をこすりつけるようにしてしゃがみ込んだ。

「この者たちは無関係にございます! あの凶行は浪人たちの暴走、暴挙によるものであり、彼らはまったく関係がございません! どうか、どうかお慈悲を!」

「んっ……んん?」

 突然現れた白髪の男に、住民たちはあっけに取られる。そこへ身なりのいい、明らかに町の名士と分かる男がやって来た。

「騒ぎを聞いて駆けつけた。一体どうしたと言うのだね?」

「あっ、ダンブレックさん!」

 ぴかぴかと光る保安官(シェリフ)のバッジを胸に付けたその名士は、住民たちに鷹揚な物腰で尋ねる。

「町が騒がしいようだが、何かあったのか?」

「そいつらですよ! その東洋人たちが町を焼いて回っ……」「何だって!?」

 住民が説明し終わらないうちに、ダンブレック氏は大仰に驚いてみせた。

「それで、あなたたちがその犯人と?」

 そしてまだ地面に頭を付けていた白髪の男に尋ねると、彼はがばっと顔を挙げ、もう一度、叩きつけるように頭を下げた。

「滅相もございません! 共に海を渡りはしましたが、彼らは我々とは無関係の者たちです! 恐らくは血気盛んが過ぎるあまり、町を略奪して回ろうとしたのでしょう。しかし、しかしです! 重ねて申し上げますが、彼らは我々とは無関係なのです! 我々は皆、善良な人間でございます! 虫も殺さぬような、罪なき者たちでございます! ですからどうか、どうかご慈悲を……」

「ふーむ、なるほど」

 ダンブレックはにこりと慈愛に満ちた笑みを浮かべ、彼の肩をとん、とんと叩く。

「お話は分かりました。なるほど、実際に襲っていた人間とあなた方は、衣服や持ち物からして違います。どうやら無関係であることは確かなようだ。

 どうだ、皆? 彼らの言うことを信じてやっては?」

 彼の言葉に、住民たちは一様に困惑した表情を浮かべた。

「いや……しかし……」

「そんな、どこから来たか分からんような東洋人を信じるって言うんですか?」

「なるほど、その意見ももっともだ。確かにこのニッポン人の言うことを、おいそれと信用できるものではない。しかしだ、私には彼らが悪い人間には見えない。そもそも銃やナイフも持っていない様子だし、無害であることは明らかだ。もし彼らが本当に善なる人々であった場合、処刑などしてはそれこそ我々が罪人となってしまう。『疑わしきは罰せず』のことばもある。確たる証拠なしに裁くことは、決して許されない。

 そこで提案だが、ここは彼らを私に任せてはもらえないだろうか。私の監督下に彼らを置く形で、彼らを新たな住民として迎え入れ町の復興と振興に貢献してもらう。万が一何か問題を起こした場合は、私の裁量で判断する。今回の件の償いを彼らにさせるとするなら、これがベストであると私は思う。この処置で納得してくれるか、皆?」

「いや……だけど……うーん……」

 渋る様子を見せながらも、住民たちは溜飲を下げる。

「でもまあ、あんたにそう言われちゃ、強情張るわけにも行かないしなぁ……」

「本当に何かあったら、どうにかしてくれるって約束してくれるんだな?」

「ああ、請け負うとも。私を信じてくれたまえ」

 ドンと分厚い胸板を叩くダンブレックに、ようやく住民たちは応じかけた。

「まあ……じゃあ……」

 と――そこに、二人の男女が割って入ってきた。

「その判決、異議アリだよ」

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