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クズ聖王家から逃げて、自由に生きるぞ!  作者: 梨香
第一章 クズ聖王家からの脱出
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ルピナス号で南の大陸へ!

 下船したら、すぐ横が南の大陸行きの大型船のチケット売り場だった。効率的だね! ヨシュア港で、南の大陸行きの大型船のチケットを買っていた乗客は、そのまま移動している。

 

 ここには、色々な大型船が停泊している。値段も色々あるみたい。

 書いてある値段が複雑で、じっくりと眺めていると、中の女の子に笑われた。


「修道女見習いさん、南の大陸に行きたいの?」

 ソバカスがあるけど、笑顔が可愛い。

「ええ、でも元手が心許ないから、どの船に乗るか迷っているのです。それに、何が必要なのかもわからなくて……」

 その子は、暇なのか、親切に教えてくれた。勿論、三等の良し悪しだ。どう見てもボロな灰色の修道女見習いが金を持っていそうにない。


「南の大陸までは、二週間掛かる場合もあるの。風に上手く乗れば十日で着く事もあるそうよ」

 ふうん、そりゃ大変だね。

「だから、なるべく清潔な船、食事が真っ当な船を選ぶ必要があるの。ルピナス号がお勧めよ!」

 うん? ここの屋台は、ルピナス号って書いてあるけど?


「まぁ、私がチケットの売り子だから、そう言っているのだろうと思うのは勝手だけど、本当にマシなのよ」

 まぁ、どの船も知らないのだから、この子の笑顔を信じよう。


「三等のチケットはいくらなのですか? 値段は、色々書いてあるからわからないわ」

「食事付きなら、八銀貨(クラン)よ! 食事抜き、水だけなら六銀貨(クラン)。でも、お勧めしないわ」


 やはり高い! 八銀貨(クラン)だ。つまり八十銅貨(ペニー)

 私はアイテムボックスがあるけど、二週間も袋から食べ物を出していたら、絶対に怪しまれる。

 つまり食事付きしか選択肢はない。


「あら? でも水だけの乗客もいるのね?」

 女の子は、顔を思いっきり顰めた。

「ええ、すごいケチな商人は、乾燥した肉、カチカチの乾パンを持ち込んで、水をがぶ飲みするの。迷惑だわ!」

 それは、私には無理っぽい。


「仕方ないわ。食事付きの三等を一枚。食事が不味かったら女神(クレマンティア)様に言いつけますからね」

 少し脅しておく。

「大丈夫よ! ルピナス号のコックはパパだから。不味くはないわ!」

 

 それなら、少しは安心だね。ついでに船旅に必要な物を聞いておこう。

「修道女見習いさんは、魔法は使えるの?」

 おや、踏み込んだ質問だね。基本、庶民で魔法が使える人は少ない。

「ええ、簡単な物だけだけど」

 パッと笑顔が花開くみたい。笑顔良しの子だね。


「それなら、船長に伝えておくわ。船旅中にチケット代が浮くかもしれないわよ」

 つまり、一等や二等の乗客の浄化(ピュリフィケーション)をして稼げると提案している。


「でも、一日に一人か、二人しかできないわ」

 本当は、サーシャは女神(クレマンティア)様の愛し子だから、魔法量は多いけど、そんなの宣伝しなくて良いよね。


「それでも、船長は喜ぶわ! へへへ、船長はお祖父ちゃんなの!」

 ああ、一族経営なんだね。あれっ、お母さんは? 顔に出ていたみたい。


「お母さんは、パーサーよ! 私も早く船に乗りたいけど、弟や妹の世話もあるから、チケット売りよ」

 

 とんとん拍子に話が進み、なんと三等の値段で小さいながら個室の二等に乗せて貰えた。二等の料金は、三等の五倍! 超ラッキー!


 それと、チケット売り場の売店で、水の袋も買ったよ。水は食事の時しか飲めないから、これを持ち込むみたい。

 それと、ルピナス島の果物、干し肉、乾パン、干し魚、などが売店に並んでいる。なかなか商売上手だ。


「果物は欲しいけど、節約しないといけないの」

 見たことがない南国の果物、食べてみたいけど、我慢しよう。

「修道女見習いさんは、貧乏そうだからね。でも、一つおまけにあげるわ。私の事を女神(クレマンティア)様に良いように言っておいてね。マギーというのよ!」

 そうだね! こんな良い子の事ならお祈りするのも悪くない。


女神(クレマンティア)様、エンボス島のマギーは、とても良い子です。ご加護がありますように」

 マギーも信心深いのか、黙って頭を下げていた。

 本当にクソ聖皇国、こんな良い民の為にちゃんとして欲しい。


 私が二等客船の狭い部屋に入った頃には、三等客は既に乗っていたし、一等や二等の客も乗り込んだ。

 マギーのお祖父ちゃんの船長とも挨拶したけど、ママのパーサーと業務連絡する。


「今日は必要ないと思うけど、一等船室の三人は、隔日で良いから浄化(ピュリフィケーション)して欲しいの。後は、二等客船の五人ね。これは、リクエストがあればお願いするわ。一回、五銅貨(ペニー)で良いかしら?」


 ニヤけるのを押さえるのが難しかったよ。

 二週間、十日だとしても、一日十五銅貨(ペニー)掛ける十! 元が取れるどころかお釣りがくるかも?


「ふふふ、頑張ってね。サリー」

 うん、名前はここではサリーにしたんだ。

 あまり違う名前だと、呼ばれても気づかなかったりしたら変だからね。


 小さな部屋、確かにシーツは洗ってあるし、掃除もしてあるみたい。一応、浄化(ピュリフィケーション)を掛けておく。


 朝一というか、昼前だったけどルピナス号は出航した。

 今頃、エルビィ港では、ゲンペル男爵とカリンが青い顔で私を探しているのだろう。ああ、ルピナス島に行ったのがバレているかな?


 私が使える魔法は、神聖魔法と空間魔法だけ。でも、使い方では船足を速くできるかも? 追いつかれて、捕まるのは御免だ。

 浄化(ピュリフィケーション)のバイト代どころではない。


 私は、なるべく人目に付かないように過ごしたいけど、こっそりと甲板に上がって、帆に風を送ってみる。

 風の魔法は使えないよ。でも、空間魔法で、帆に空気を送り込むことはできるんじゃないかな?


「はぁぁ、疲れた!」

 やはり風の魔法持ちほどは、スピードは上がらない。

 ああっ、それより女神(クレマンティア)に祈る方が良さそう。

女神様(クレマンティア)、どうかルピナス号が速く南の大陸に着きますように!」

 修道女見習いが航海の無事を願っているのだろうと、船員達も頭を下げて一緒に祈ってくれた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも文句ばかり言っているのに女神様は願いを聞き届けてくれるのか心配だぁ。 浄化ができるのは、船ではありがたいですね。
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