エリクサー(劣)の効果
借金奴隷になる書類にサインして、パンサーはエリクサー(劣)を受け取ると、部屋に上がった。
白猫に「痛いのかな?」と質問したら「腕が生えるのだから、激痛だ」としゃあしゃあと答える。
「まぁ、本人の望みだから仕方ないさ。俺だって、腕を無くしたら激痛だろうが、エリクサーを飲む!」
ああ、ルシウスもかなり酔っ払っている。星の海のメンバーがそんな怪我をしたら、私が治療するに決まっているじゃん!
出会った日にジャスの指を引っ付けたの、忘れたのかな?
クレアとジャスに捕まったヘレンも酒をじゃんじゃん飲んだのか、ヘベレケだ。
赤毛の大女と大男が、机に突っ伏している。
勿論、クレージーホース、草原の風のメンバーも半分が潰れている。
短剣も飛ぶのが止んだので、女中さん達もホッとしたんじゃないかな?
金熊亭の女将さんは、酔っ払いは放置して、女中達に簡単に片付けさせている。
「もう、寝るぞ!」
一応、ルシウスに声を掛けたけど、シャムスと飲みなおすそうだ。
私は、パンサーが心配なので、朝一に見に行く予定だ。
つまり、酔っ払い達から別れて部屋に戻る。
冷風機を付けると、顔を冷やす。少し飲み過ぎたみたいだ。
解毒があるから、他の人よりは酒に強いけど、今日のはキツかったからね。
翌朝、パンサーの部屋をノックしたけど、返事はない。
「エリクサー(劣)だから、効果が無かったのかな?」
心配していると、部屋の中からうめき声が……。
「パンサーさん、入るよ!」
ドアには鍵が掛かっていたけど、魔法で開ける。泥棒はしないよ!
「パンサーさん!」
ベッドから落ちて、床に転がっている。
「ううう……痛い!」
ゲッ、腕が伸びている途中だ。やはりエリクサー(劣)は問題ありそう!
伸びている途中の腕を抱えて、激痛で床を転がりまくる。
こんなの見ていられない!
「治療!」を掛けたら、痛みは無くなったみたい。
「アレクか?」
やっと、痛みから解放されたパンサーが、手で顔の脂汗を拭いて、こちらを見上げる。
「ああ、エリクサー(劣)だから、激痛じゃないかと思って見に来たのだ」
やっと腕が生えて、手が現れる。遅くない?
「ううう……」
指先とか、ちょっとした怪我でも痛いよね? 指が生える時、パンサーは苦しそうなので「治療」をもう一度掛ける。
指先まで復活したので、手をグーパーして感覚を確かめている。
「あの激痛は辛かったが、私の手を取り戻せた!」
その代わりに、借金奴隷になったんだけど、それは気にしていないみたい。私なら、絶対に嫌だけど?
「ははは、女神様の神命に応えるのだから、借金奴隷だろうがやる事は一緒だ!」
もう、パンサーは私を女神様の愛子だと認定しているみたいだ。
「俺は、女神様の愛子じゃないぞ!」
言っても、相手にしてくれない。
「猛烈に腹が減った!」と下に降りる。私も朝食だから、部屋で寝ている白猫を連れて降りよう。
昨夜は、皆、飲み過ぎだったと思うのに、どんな体力なのか、朝食をがんがん食べている。
「ええええ! パンサーさん! 義手は?」
シャムスって目が良いから、一番に気づいた。
「ははは、『星の海』がドロップしたエリクサーを貰って、復活させたのだ。その代わり、俺は借金奴隷になったけどな! 女将さん、めちゃくちゃ腹が減っている! 大盛りで頼む!」
食堂が一瞬静かになり、その後、大爆発した。
「よかったな!」「パンサーさん!」「借金奴隷!」「エリクサー!」
全員が大騒ぎしているが、一人静かに朝食を食べ続けている。ヘレナだ。
パンサーは、ヘレナの前に座った。
「義手を自由都市群に届けてくれ」
ヘレナは、黙って頷いている。
ふぅ、ヘレナが自由都市群に子どもを人質にされているのは、見逃せないな。




