借金奴隷!
やはり煩かったのか、酒の匂いに誘われたのか、ヘレナとパンサーが降りて来た。
「おお、ヘレナ! こっちで飲もうぜ!」
クレアがヘレナをパンサーから引き離す。そちらに、ジャスが合流して、親族の飲み会になった。
色々と拗れているから、解決できたら良いな。
それと、クレアとジャスは、ヘレナの自由都市群との関係を探って貰う段取りだ。
つまり、パンサーに借金奴隷の話をするのは、ルシウスと私だ。嫌だけど、頭の上に陣取っている白猫が許してくれそうにないんだ。
「おお、これは良い酒だなぁ! 食物ダンジョンの何階まで行ったのだ?」
ルシウスが十五階までだと話して、パンサーが何階まで潜ったのか質問している。
「もうかなり前の話だが、十六階で引き返したと思う。まぁ、依頼を受けて潜っていたからな」
そこから、金級に昇格する為の条件とかを尋ねたりしていたが、酒が進んで、パンサーが腕を無くした時の話まで、ずけずけと質問する。
「まぁ、運が無かったのさ。転移陣がある階だったら、腕を無くさずに済んだかもしれないな……」
パンサーもルシウスがじゃんじゃん酒を注ぐので、かなり酔っているみたい。
こんな、愚痴を言うタイプじゃないよね?
「エリクサーがあったら、腕は復活するんじゃないのか?」
酒を飲んでいた手を止めて、パンサーの目が光る。
「それを、態々、俺に言うのは……あるのか!」
ガバっとルシウスの胸元を掴むパンサー。
「でも、義手で冒険者に復活できているみたいだし、必要ないかなと思っているのさ」
「馬鹿な! この義手の為に冒険者で得た金の殆どを使ってメンテナンスしなくてはいけないのだ! その上、自由都市群に都合よく使われるなんて、俺は我慢できない!」
「その自由都市群との契約は破棄できるの?」
これ、重要だから私が質問する。
「破棄? メンテナンスに行かなきゃ良いだけだが……腕を失うわけには……」
「それなら、星の海からの提案だが、エリクサーをやるから、オークダンジョンの殲滅まで借金奴隷として協力して欲しい」
パンサーが真剣な顔で「あるのか!」と叫ぶ。
「ああ、ダンジョンでドロップしたのさ。オークションに掛けようか迷っていた時に、アンタに会ったのさ」
「何故、オークダンジョンの殲滅が条件なのだ? 確かに大問題だが、星の海がそこに拘る理由がわからない」
「まぁ、女神様の神命が降ったから、仕方ないのさ」
「女神様の? もしかして、アレクが愛し子なのか?」
「ルシウスがメインで話しているのに、何故、俺が愛し子なんだよ! 違うし!」
ルシウスは肩を竦めるし、パンサーは笑う。
「女神様の像を前に教会で見た事があるのさ。アレクはそっくりだからな。そうか、女神様の神命なら、協力しなくてはな! さぁ、エリクサーをくれ! 借金奴隷でも、何でもなってやる!」
酔って気が大きくなっているわけじゃないよね?
「でも、ヘレナはどうするんだ? パートナーだろう? 彼方は、自由都市群とどういう関係なんだ?」
パンサーは、一気に酒を飲んで答える。
「ヘレナは、自由都市群が私につけた護衛兼見張りだな。義手の調子が悪くなった時の護衛、そして自由都市群に連れて帰る……私をというか、この義手を持って帰る契約を結んでいる筈だ」
「二人は……恋仲ではないのか?」
おお、ルシウスが突っ込んだ話をしている。
「恋仲? 違うな! ビジネスパートナーだ。お互いに自由都市群から離れたいのに、離れられない感じが似ている」
「パンサーさんは、義手のメンテナンスがあるから自由都市群と繋がっているのはわかるけど、ヘレナは何故?」
「アイツは……自由都市群に子どもがいるのさ。七年の借金奴隷の間に、一人子どもを産んだと言っていた。それを取り返すまでは、真の自由とは言えないな」
「酷い!」と叫ぶ私を、ルシウスは制する。
「つまり、子どもを取り返したら、ヘレナは自由になるんだな! 義手を返しに行って、取り返したら良いだけだ!」
ルシウスは、冷静に話をしているけど、かなり怒っている。
「そうだな! 俺もヘレナには恩を感じてはいるから、協力させて欲しい」
「いやぁ、腕が生えていたら、自由都市群も変だと思うだろう。ここは、俺たちの方が良い」
そこから、借金奴隷の条件とかを詰めて、契約書にサインした。
エリクサー(劣)をパンサーに渡す。
「きっと、激痛に襲われると思うから、部屋で飲んだ方が良い」
パンサーは一刻も早く! とエリクサー(劣)を手に取ると、部屋に戻る。
「さて、ヘレナをどうするか?」
ルシウスが悩んでいる。単に、自由都市群と契約があるだけなら、ヘレナは大人なので勝手にすれば良いって感じだったけど、子どもを人質にされていると聞いたら、ほっておけない。




