『クレージーホース』と『草原の風』
パンサーにエリクサー(劣)で借金奴隷にならないかと持ちかける前に、『クレージーホース』と『草原の風』にオークダンジョンの殲滅に協力して欲しいと言う事になった。
だって、白猫以外は、借金奴隷に落とすとか、話しにくいよね。
夜、森亭を貸切にして、トレント肉やポートワイン、酒類を提供して、宴会を開く。
ルシウスも、シャムス達の酒癖の悪さは知っているから、酔わないうちに話を進める。
「オークダンジョンの殲滅を一緒にしないか? 勿論、金級のクランもギルドから請け負うだろうが、それとは別行動で」
『草原の風』のシャムスは、難しい顔だ。
「俺たちは『月の雫』には懲り懲りなんだ! バッカスの顔は、見たくない!」
「ダンジョンは『クレージーホース』の専門じゃ無いからなぁ」
クレアも乗り気じゃ無いみたい。
ルシウスがどう説得しようかと悩んでいたら、白猫が口を開いた。
「オークダンジョンの殲滅は、女神様からの神命なのだ!」
驚く『クレージーホース』と『草原の風』のメンバー達。
「「猫が喋った!!」」
ルシウスが全員を静める。
「この白猫は、女神様からアレクに遣わされた従魔なのだ」
シーンとする店内。
「それって……アレクはやはり女神様の愛し子なのかい?」
クレアが代表して質問する。
「違うよ!」と私が答えるのを、ジャスが手で口を押さえて止める。
「神命が降りたのだから、あきらめろ!」とルシウス。
「そうか……神命があるなら、協力しなくてはいけないな! ただ、『月の雫』は勘弁して欲しい!」
シャムスは信心深いみたい。冒険者って荒くれ者のイメージだけど、命がいつなくなるのか分からない生活だから、女神様を信心するのかも。
「アレクが愛し子なのは、秘密だ! それは、後で誓約して欲しい。その代わりと言っては何だが……マジックバッグを提供しよう!」
マジックバッグ小(劣)を二つ取り出すルシウスに、クレアとシャムスが驚いている。
「これは? ダンジョンでドロップしたのか?」
「値打ちを知っているのか?」とクレアは心配そうだ。
「ああ、迷宮ダンジョンには隠し部屋があるのさ。オークダンジョンの殲滅は、何年もかかるかもしれない。途中で、資材を取りに行くのも良いな」
クレアは、ジャスの着ているシャツを摘む。
「このシャツの生地も迷宮ダンジョンでドロップしたのかい?」
「ははは、目ざといな! まぁ、それはオークダンジョンの後だ!」
少し相談させて欲しいと、クレアとシャムスが言うので、別テーブルのメンバーとの時間を取る。
「『クレージーホース』は協力する! 女神様に逆らうのは良くないからな!」
そう言いながら、クレアはマジックバッグ小(劣)を握りしめる。
「あっ、お金は貰うからな! 仲間だから安くしておくよ」
えっ、あげるんじゃなかったの? やはり、ルシウスはケチだ。
「まぁ、安くしておいてくれよ! 仲間だからさぁ!」
シャムスは、長い時間、メンバーと話し合っていた。
「『草原の風』は、二つに分かれる事になった。俺たちは、『星の海』と共同するが、普通に探索だけで食べていけると考えるメンバーは抜けるそうだ」
数人は席を立つ。ルシウスが「秘密だぞ!」と言う前に、署名した誓約書を提出してきた。
「女神様に逆らう事はしない! 私達は、別の道を選ぶけど、オークダンジョンの殲滅をして欲しい!」
抜けたメンバーは女の人が多かった。オークは御免だってのは理解できる。
「『草原の風』は、元々、緩い縛りのパーティだからな。仕方ないさ」
だから話し合いが長かったのだ。そこからは、誓約書に署名して、ドンチャン騒ぎになった。
森亭、出入り禁止にならなきゃ良いんだけど……。
クレア、ジャス、ルシウス、シャムスは、四人で真剣に話していた。マジックバッグの値段かな? とルシアに酒を飲まされながら、考えていたけど……パンサーとヘレナについて話し合っていたみたい。
「まぁ、アレクが神聖魔法の使い手だと知っていたから、あまり驚きはしなかったよ!」
交易都市からの護衛依頼で、あれこれやらかしていたからね。
「そう、そう! 私の怪我も一瞬で治してくれたもの」
ルシアがしなだれ掛かってくる。まだ女だと気づいていないのか?
蜂蜜酒を飲むと、『草原の風』のメンバーは、短剣を投げる悪い酒癖が出る。
「森亭は、出禁になりたくないんだ!」との叫びで、金熊亭で飲み直す事になった。
「もう、十分飲んでいるじゃないか!」と思うけど、ルシウス達は飲み足りないみたい。
金熊亭、ほぼ私たちの貸切状態だけど、パンサーとヘレナも泊まっているんだよね。
「あまり騒ぐのは良くないんじゃない?」
私は、毒物も平気だから、酒の回りも他の人よりは遅い。
「良いのさ! 酔った勢いで、話をつけた方が良い場合もある!」
ええええ! ルシウス、それって……良いのかな?




