酒! 酒! 酒!
ううん、酒って人を狂わせるんじゃないの? 私もエールが大好きだし、ワインとか日本酒っぽいのも味見したい。
「よっしゃぁ! ハヌマーンだぁ!」
初見で苦労したハヌマーンだけど、ワインの樽をドロップさせると知ったジャスは、うはうはで喜んでいる。
「ジャスはアレクを護れ! アレクは聖属性でハヌマーンを攻撃。白猫は機械騎士を召喚してヴリシャーカピのボスを俺と一緒に討伐だ!」
ルシウスも酒が好きだけど、それより高額買取りが目当てかも。
十四階で、ハヌマーンが率いるヴリシャーカピのボスの団体を狩りまくる。
「ふぅ、もう良いんじゃない? サルは飽きたよ!」
ワインの大樽が四個、エールの樽が十三個、日本酒っぽい樽が二個!
砂糖やポポ、それにバナナもいっぱいドロップした。
エールは自分たちで飲むのが決定! ちょこっと味見したら、防衛都市で買うエールより美味しかったんだ。
微炭酸っていうのか分からないけど、プチプチ弾けて、いくらでも飲めそう。
「十五階には転移陣があるから、そこで一旦は出るか? それか、セーフエリアで寝て、十六階に挑戦するか?」
何回か目のハヌマーンを討伐して、バリアを張って休憩しながら作戦会議。
「エールももっと欲しいから、十四階を周回しようぜ!」
ジャスは二杯目のエールが欲しそうな顔だけど、ルシウスは厳しい。
それに、酔っ払ってダンジョンは駄目だからね。
「十五階に進んだ方が良い。ハヌマーンの倒し方はわかっただろう。もっと、強くならなくてはいけない!」
白猫はミルクを飲んでいる姿は愛らしいのに、厳しいな。
「そうだな! 蒸留酒を手に入れたい!」
ルシウスは、欲望に忠実だ。強くなるのと、金になるのと、酒!
「よっしゃぁ! では、十五階に行こうぜ!」
ジャスは、またエールを取りに来たら良いだけだと先に進む事にした。私も、サル相手はウンザリだから、賛成だね。
十五階は、脳内地図で調べたら、草原エリアっぽい。
「トレントはいそうにないけど……うん? 草原の周りには木も生えていそう!」
「前までは十五階が深層階だった筈だ。だから、蒸留酒もここでドロップするんじゃないか?」
ルシウスの言葉で、やる気満々だ。オークションで出た蒸留酒、とても美味しかったからね!
でも、実際に十五階に降りて来たら、草原というより湿地とまでは言わないけど、湿気ていた。
「脚を取られないように気をつけろ!」
ズボッとはいかないけど、ズルッと滑りそう。
「ここは花とキノコが多そうだ!」
ルシウスは、花やキノコは高額ドロップが多いので嬉しそうに笑う。
「気を抜くな! ゴールデンベアの集団だ!」
白猫の警告で、ルシウスがトラウマを思い出しちゃった。
「またゴールデンベア! 食物ダンジョンでは黄金の毛皮はドロップしないのに!」
ヤケ糞攻撃中のルシウスとジャスにゴールデンベアは任せて、私はキノコを矢で射る。
白猫は、機械兵を召喚して、キノコ狩り。
「呼び寄せさせて、機械兵のレベルを上げたい」
機械兵は胞子で眠ったり、毒を受けたりしないから、良いんじゃない?
「それと、アレクはホーリーアローの練習をしたらどうだ?」
白猫って嫌いだぁ! このところホーリーアローは使っていなかったのに気づいている?
アイテムボックスの中から、弓矢を取り出して「ホーリーアロー!」と射る。
「ホーリーの効果が薄いぞ!」
白猫は、私の従魔だよね! 駄目だしして欲しくないよ。
「ほら、キノコだけじゃなく花も来たぞ!」
花の方が神聖魔法に弱い気がする。キノコは、効きが悪い。
「私は花を討伐するよ!」
花は雌蕊をホーリーアローで射抜くと一瞬で消える。
「花も、呼び寄せるかもしれないぞ!」
ゴールデンベアを討伐し終えたルシウスの欲にまみれた助言だ。
呼び寄せるのに注意しろじゃなくて、呼び寄せさせろ! そして、高額ドロップをゲットしたいって意図が見え見え!
「ホーリーアローの練習になるから良いぞ!」
白猫も気楽に言うね。花って、上の階では棘のある枝を振り回したり、花粉攻撃だったけど、深い階では、棘を飛ばしてくるんだ。
それに、その棘は爆発しちゃう。
バリアを掛けながら、ホーリーアローはなかなかしんどい。
「ホーリーアローに魔力を注ぎ過ぎだ。もっと魔力を節約しろ!」
ああ、白猫が煩い! 腹が立ったので「遮断!」を花全部に掛けちゃった。
「魔法の使い方がなっていない!」と白猫に叱られたけど、横で煩いんだもん。
ゴールデンベアのドロップ品は、やはり黄金の毛皮はなかった。
でも、ロイヤルゼリーの大瓶、すっごく嬉しい。
「これは、何だ? 酒か?」
「おお、これは蜂蜜酒だ!」
悪酔いしちゃうけど、美味しいんだよね!
ルシウスは、微妙な顔だけど、私とジャスはうはうは!
「ゴールデンベア狩りをしようぜ!」
「ロイヤルゼリー、蜂蜜酒がもっと欲しい!」
ジャスと気が合うなんて、私も冒険者に毒されてきたのかも。
「花は……おお、これは! 高級な香料だ! それに、ジャム! 最高級の紅茶!」
私が鑑定すると、ルシウスの気分も浮上する。金になるドロップ品は嬉しいよね!
キノコも、トリュフが山のようにドロップして、ルシウスの笑いが止まらない。お金、大好きだからね!
「なぁ、もう少し十五階を回ろうぜ!」
蜂蜜酒が好きなジャスの甘い誘惑に、私もルシウスも思わず頷いてしまった。
星の海の弱点は、酒かもしれないね。