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クズ聖王家から逃げて、自由に生きるぞ!  作者: 梨香
第四章 オークダンジョンを殲滅しよう!
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セーフエリアの先客

 セーフエリアには一組のパーティがいた。冒険者は、槍装備の女の人と盾と剣装備の男の人。それに荷物持ちが四人。

 赤毛の女の人、クレアに似ていると思って、振り向いてジャスの顔を見ると、凄く嫌そうに眉を顰めている。

 クレアの時は、苦手だって態度を出さないように頑張っていたけど、違う反応だね。


「おや、おや、ジャス坊じゃないか!」

 やはり知り合いだったみたい。だって、クレアに似ているから、親戚じゃないかなって思ったんだ。

「ここは、パスしようぜ!」

 ジャスがセーフエリアから出ようとするのを、赤毛の横に座っている男の人が笑う。その人は、片腕が義手だった。

「ヘレナ、甥っ子に嫌われているな」

 やはり親戚なんだね。でも、ジャスは嫌っているみたい。

 私も、サーシャの身内はクズばかりだから、親戚だからって付き合わなきゃいけないなんて思わない。


「次の階のセーフエリアで昼食にしよう」

 そう私も言ってジャスとセーフエリアの外に出ようとした。

 それなのに、ルシウスは立ち止まったままだ。普段なら、ジャスの気持ちを気遣うリーダーなのに?


「えっ、もしかしてパンサーさんですか?」

 その言葉で、セーフエリアを出ようとしていたジャスの足が止まった。

「パンサー? 何処かで聞いたような?」

 私が首を傾げていると、ルシウスが頭を押して下げさせる。

「ヨハンセンギルドマスターの相棒だったパンサーさんだ! すみません、コイツは新人なので知らないので……私は『星の海(シュテルンメーア)』のルシウスです」


 そっか、脳筋のギルドマスターの相棒の頭脳の方か。片腕をなくして、引退したって聞いたけど……義手って木じゃなくて、機械っぽい。魔導具なのか? いや、ジロジロ見るのって失礼だよね。


 ジャスもヘレナと呼ばれた女の人からは遠ざかりたいけど、金級のパンサーが復活したのには興味があるみたいで足を止めた。


「パンサーさん、冒険者を引退したと聞いたのですが……」

 ルシウスが尋ねると、義手をかざして笑う。

「リハビリをしているところさ。ヘレナには手を貸して貰っている」

 ふぅ、それは、それで良いんじゃない。


「昼食なんでしょ。ジャス坊もここで食べなよ。それにしても、機械兵に荷物持ちをさせているのかい? 豪勢だねぇ」

 ふぅ、ヘレナは嫌われても気にしていない態度。でも、私もここで食べたくないな。

「よくも……お前のせいで……」

 グッと拳を握りしめて、ジャスはセーフエリアの外に出る。

「またね!」と笑いながら、ヘレナは手を振る。

 防衛都市(カストラ)で冒険者として活動するなら、これからも出会いそう。


「十三階に行くか? 何処かで昼食にするか?」

 ルシウスもジャスの態度から、何か因縁があるのだろうと察して、セーフエリアに戻ろうとは言わない。

「ああ、済まん! アイツは、親父の妹だった。両親が亡くなった時に、金だけ持ってトンズラ。残されたクレアと俺は……」

 ジャスが吐き捨てた。


 これまでの口調で、クレアが苦労してジャスを育てたって感じはしていたけど、叔母さんは金を持ち逃げしたの? まぁ、碌なもんじゃないね。

「まぁ、人にはそれぞれあるさ!」

 そう言って、ルシウスはジャスの背中をバシン! と叩いた。

「さて、十四階に行く前に昼食にしよう」

 二人が歩いていく後ろからついて行く。ルシウスも何かあったのかな? 

 まぁ、私もいっぱいアレコレあったから、詮索はしないでおこう。


 セーフエリア以外でも休憩は取る事もある。

 特に、私は結界を使えるから、中途半端に知っているパーティがいない方が気が楽だ。

 見晴らしの良い場所に結界の魔法陣を張る。他の冒険者に遭遇したくないから、サッサと食べる。


「ギルドマスターは、パンサーさんが復帰したのを知っているのかな?」

 パクパクと肉を挟んだパンをエールで流しこみながら、ルシウスが呟く。

「パンサーも、何でアイツなんかと組んでいるんだ!」

 ジャスは、ヘレナと組んでいるのが気に入らないって態度。

「それより……あの義手は魔導具だよね?」

 蒸した火食い鳥(カセウェアリー)の肉を食べている白猫(レオ)に尋ねる。

「ああ、そうじゃなければ冒険者はできないだろう」

 

『ふうん? それって何処で買ったの? そもそも、買える物なのか?』


 三人とも同じ事を考えていた。

自由都市群(パエストゥム)だろうな」

 白猫(レオ)が言った一言で、ルシウスとジャスが唸る。

自由都市群(パエストゥム)かぁ!」

 ルシウスは、複雑な顔つきだ。

「ヨハンセンギルドマスターの相棒が復帰したのは嬉しいが、自由都市群(パエストゥム)の紐付きな疑惑が……厄介だな」


 ジャスは、その上に嫌いなヘレナと組んでいると首を横に振る。

「ギルドマスターの手助けどころか、足を引っ張らなきゃ良いのだが……。あの性悪女とコンビを組んでいるぐらいだから、パンサーも……」

 金級の悪口って言い難いのか、ジャスは言葉を濁した。『月の雫』のバッカスの悪口は、いっぱい言っているのにね。


 魔物や薬草の鑑定はできても、人の心はわからない。

 ただ、ヘレナって女の人は、ジャスに対して悪びれた態度ではなかった。

 まぁ、聖王家のクズ達も、悪いとは思っていなかったから、性根が腐っているのかもしれないけどね。

 パンサーの方は、判断材料がない。義手が自由都市群(パエストゥム)で得た物だろうって事だけ。

 問題は、これからも防衛都市(カストラ)で顔を合わせるって事だよ! 

 クズ聖王家の奴らに会いたくないから、ジャスの方に感情が傾くのは仕方ないよね。



 

 

 

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ポーション、色々あるんだな。奥が深い… 暗視、透明化、跳躍、耐火、俊敏、水中呼吸、治癒、再生、力、鈍化、負傷、弱化、毒…、などと ガラス、宝石辺りも、錬金術で作れるのかな? 火炎草とか、毒消し草も、で…
不穏な空気に… パンサーがいい人だったかはわからない パンサーが変わった可能性もある…
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