食物ダンジョン十二階は……
十二階は、畑エリアだと脳内地図では出たけど……これって、稲だよ!
「何だぁ、一階や二階の畑かと思ったが……」
ルシウスもジャスも稲は知らないみたい。
「それに、水が多いぞ!」
足元がベチャベチャするのをジャスが嫌がる。
「あのう、この稲を刈りたいんだけど……良いかな?」
二人が怪訝な顔をして、私を見る。
「食物ダンジョンだから、食べられる物なんだろうが……家畜の飼料なんじゃないのか?」
ここは、北の大陸を出して嘘をつく。
「えええ、これは米って穀物なんだ。北の大陸の一部では食べられているのさ」
多分ね!
ナタで稲刈りをする間、ルシウスとジャスは出てくるジャイアントトードを討伐する。
「白猫、機械兵に手伝わして!」
白猫は、やれやれって態度だけど機械兵と機械騎士を出してくれた。
剣や槍で稲刈り? まぁ、剣はできるけど……今度から稲刈りカマを用意して来よう!
「なぁ、もうそろそろ良いんじゃないか? ジャイアントトードも米? 麦じゃない穀物をドロップするぞ」
えっ、ジャスが声を掛けたので、稲刈りをやめて、背筋を伸ばす。腰が痛い!
自分に回復魔法を掛けてから、米? の入った袋を見る。
「おお、白米じゃん! それも長粒種だけじゃなく、短粒種もある。うん? 餅米も!」
ウホホイ! ってテンションMAXな私をルシウスとジャスと白猫が呆れた目で見ている。
「それって美味しいのか?」
ううん、難問! 前世は日本人だったぽい私は白米でもおいしいと思う。ただ、こちらの人はどうかな?
「魔導書の『料理』が欲しいなぁ」
いや、米を炊くのは何とかなるんじゃない? いや、炊飯器がないと何回かは失敗しそうだけどさ。
「ふぅ、アレクに料理は期待できないが、森亭の親父さんなら何とかしてくれるんじゃないのか?」
ふぅ、異世界転移物語だと、主人公が料理で無双するんだけどさぁ。あれ? この記憶は何だろう?
まぁ、魔物がドロップするなら、稲刈りで時間を取る必要は無いね。
それに稲刈りって、腰が痛くなるんだよ。
機械兵と機械騎士もレベルアップして、ジャイアントトードを次々と討伐していく。
私は、脳内地図を調べて、デスビーがいないか探すよ。だって、ロイヤルゼリーと蜂蜜酒がドロップするのは美味しい!
「あっ、あっちは林エリアになっている!」
米は、また後でも取りに来れる。それに、炊き方が分からないから、今はこれで十分だよ。
白猫は、機械兵と機械騎士に引き続き魔物討伐させている。
「ぎゃぁ!」
大きな目玉が目の前に!
「ああ、それは巨大トンボだ! 食物ダンジョン以外だったら、目玉や羽が高価買取りされるのだが……」
ルシウスが惜しそうに、剣で一刀に切り裂く。
ドロップしたのは、何故か栗? ジャスが討伐した巨大トンボからは、銀杏。
「何だぁ、これは?」
固い実を、不思議そうに見ている。
「これは、料理の材料だと思うけど……」
茶碗蒸しとかにしか使わないよね。
「あっ、酒のアテにしても良いかも」
いっぱい食べたら駄目だった記憶もあるけど、異世界だから別物かな?
「ねぇ、この階って昆虫が多いの?」
あまり虫は好きじゃない。
水田を出ようとした時、彼方から巨大藪蚊の蚊柱がこちらに近づいてきた。
「わぁ、アイツら嫌いだ!」
ジャスが顔を顰める。ユスリカって前世では刺したりしなかったけど、こちらでは違うみたい。
「あれは機械ハチドリに任せてくれ! レベルアップさせたいからな」
機械ハチドリが何十羽も巨大蚊に向かって飛んで行った。
「ウェェ! 食べてるのか!」
ジャスが気味悪いと叫ぶ。
「愚か者! 機械ハチドリが食べるか!」
まぁ、そうだよね! ドロップ品があると、ルシウスが喜んでいる。
「巨大蚊からドロップがあるとは! 普通なら、刺されて痒くなったり、運が悪かったら熱がでる厄介な魔物なんだ」
蚊柱の下にはいっぱいキラキラした丸い物が……一瞬、宝石を期待したルシウスだったけど、ここは食物ダンジョン。
「鑑定! ……飴だぁ!」
甘味は大切だよね。それに、蚊柱には千近くの巨大蚊がいた。
「やったね!」と喜んでいるのは私だけ。ルシウスもジャスも酒じゃ無いのかと渋い顔。
「これをガラスの瓶に入れてルミエラちゃんにあげたら?」
私も、金熊亭の女将さんや女中さん、それに森亭のウェイトレスさん、チョコレート屋・アンジェラの受付さんにあげよう。
それに、いつか交易都市に行く事もあるだろうから、リリーにお土産にしても良い。
「そうだよなぁ!」といそいそと飴を拾うのを手伝ってくれるジャスをルシウスが呆れた目で見ている。
虫は嫌いだけど、ドロップ品は、なかなか嬉しい。
「もっと巨大蚊が居ないかなぁ」と言いつつも、林エリアへと向かう。
だって、そこには上級薬草も生えていそうなんだもの。
ただ、林エリアも虫の魔物が多い。どうせなら、デスビーがいれば良いのにさ。
巨大カブトムシ、巨大クワガタ、巨大カマキリ……うんざりだよ。
「おい! 気をつけろ!」
頭の上の白猫が叫ぶ。
「あっ、真っ赤だ!」
煩い昆虫の討伐に夢中で、脳内地図をチェックするのを忘れていた。
「ゲッ、巨大アントだ!」
ジャスも嫌そう。
「アイツら、何百匹もいるんだよなぁ」
ルシウスもうんざりした顔だ。
「機械騎士にやらせよう!」
機械馬に乗った機械騎士が巨大アントに突撃する。
こちらに逸れて来たのは、ジャスが盾の練習だと頑張っている。
私とルシウスは、後ろに控えている女王アントとの戦いに備える。
「アレクは巨大アントと戦った事があるか?」
「無いよ」北の大陸では見た事がなかったからね。
「特に女王アントは、防衛力が強い。だが、寒さに弱いと聞いているが……」
ふぅ、氷の魔法が使えたらなぁ。私は、神聖魔法と空間魔法だけだ。
「炎の攻撃も効くぞ」
白猫のアドバイスで、ルシウスが機械騎士が逃した巨大アントの討伐。炎の剣が使えるジャスと、空間魔法で私が仕留める事になった。