食物ダンジョンを制覇するぞ!
「やはり、食物ダンジョンは良いなぁ!」
十三階は、森林エリアだった。蒸留酒がドロップするグレートトレントはいなかったけど、木の実や果物、それに楓糖、トリュフ、香料など金になるドロップ品に、私たちはうきうき。
「アレクもキノコや花を討伐するのが上手くなった!」
ルシウスに褒められた。前は、雌蕊を射抜くのに時間が掛かったからなぁ。
特に、キノコは仲間を呼ばれて大変だった。
「キラービーかな?」
魔物の赤い点が固まっている。それに森林エリアでは、中級薬草と上級薬草がちょこっと。
「おお、俺たちはトレント狩りをしているから、アレクはキラービーと薬草採取をしておけ」
ジャスが斧を振り回しながら笑う。ルミエラの件で落ち込んでいたけど、こんな風に元気なジャスの方が良いよ。
二人の言葉に甘えて、私はキラービーの巣に向かう。頭の上には白猫がいるから、二対二に別れることになるね。
「機械兵と機械騎士を何体か出しておくから、トレント以外の魔物にも対応できるだろう」
あっ、キノコとか胞子で眠らされたら大変だよね。
「油断しないでいこう!」
迷宮ダンジョンや、暗闇ダンジョンの隠し部屋のドラゴン祭りに比べてしまい、食物ダンジョンは少し気を抜いていたかも。反省!
「げげげ……キラービーじゃない!」
キラービーも大きくて、ちょっと苦手だったけど、このデスビーは禍々しいオレンジ色と黒の縞模様。
「討伐方法は同じだろう」
白猫にサッサと討伐しろと言われてバリアを張る。空気を抜いていくのだけど、女王蜂だけじゃなく普通の蜂もガンガンアタックしてくる。
「バリア! バリア! バリア!」
何重にもバリアを張って、なんとか討伐できた。その間も、外に出ていたキラービーが戻ってきて、攻撃してきたんだけど、それは機械ハチドリが個別に討伐してくれた。
怖かった! 特に女王蜂! 真っ赤な身体でバリアを何回も攻撃してきたんだ。
「あああ! ロイヤルゼリーが山ほど! それに蜂蜜酒!」
嬉しい! 準竜の肝がなくても、ロイヤルゼリーがあれば、中級回復薬(優)ができるからね。特に女王蜂がドロップしたロイヤルゼリーの大瓶、助かるよ。
魔力も回復できるから、私にも必要なんだ。
それに蜂蜜酒、ちょっと悪酔いしちゃうのは難だけど、美味しいんだよね! デスビー! 顔は怖いけど、見つけたら討伐しよう!
「薬草は、中級が多いけど……上級も少しはある!」
オークダンジョンに行くなら、いっぱい回復薬も作っておかなきゃね。それに、ギルドマスターが絶対に納品して欲しがりそうなんだもの。
見張りに機械兵と機械騎士を出して貰って、薬草採取!
「本来なら、脳内地図で確認しながら採取するのだぞ」
白猫って、時々、ウザい。神様の時の癖なのかも。でも、見た目が可愛い中猫ちゃんだから許せる。
トレントの群れと足を止めたらやってくる魔物を討伐して、ルシウスとジャスが森の中にやってきた。
「デスビーからは、ロイヤルゼリーと蜂蜜酒がドロップするんだ!」
勿論、殆どは蜂蜜だったけど、ロイヤルゼリーの大瓶と蜂蜜酒は嬉しい!
「おお、それは良いな!」
ジャスは酒がドロップするなら、じゃんじゃん倒せと言っているけど、この階にはもういないみたい。
十三階にはグレートトレントがいなかったので、十四階を目指す。
「なぁ、食物ダンジョンは十五階なんだろう?」
ルシウスが前にそう言っていたような?
「中級ダンジョンは十五階迄が多いが……ちょっと前に食物ダンジョンが深くなったって噂が流れたんだよなぁ」
ジャスも聞いたのか頷いている。
「基礎ダンジョンも前は十五階迄だったが、二十階に成長した。食物ダンジョンも成長したのかもな!」
「あやふやだなぁ!」と私がぼやくと白猫が尻尾で顔を殴る。
「ちゃんと脳内地図を使え!」
「ええっ、同じ階しか分からないんじゃないの?」
これまではそうだったよね?
「使いこなせれば、下の階の地図も見える筈だ」
へぇ、そうなんだ!
十四階への道を歩きながら、脳内地図で下の階を調べる。
「ええっと、十四階は……畑?」
一、二階と同じなの? 変なの?
「もっと下も調べろ!」
十五階は、草原エリア? ええっと、その下は……あるんじゃん!
「十六階もありそう!」
あやふやな探索に白猫は怒っているけど、ルシウスとジャスは喜んでいる。
「きっと十六階にグレートトレントがいるんだ!」
「蒸留酒、いっぱいドロップしないかな!」
欲に目が眩んでいるけど、グレートトレントって強いんじゃないかな? 魔物辞典でも、魔法を使うって書いてあったような? ははは、蒸留酒をドロップすることしか見てなかったよ。
「馬鹿者!」
心を読むのやめて欲しい!
「食物ダンジョン、何階だろうと制覇するぞ!」
ルシウスが珍しく吠えた。多分、レッドドラゴンの幼体に手こずったのが悔しいのだ。まぁ、オークダンジョンを制覇するには、もっと強くならなきゃね!