暗闇ダンジョン十一階から
次の日、サンドウォームの皮で、マジックバッグを二つ作った。鑑定したら、マジックバッグ小とでたけど、白猫にフンと鼻で笑われた。
「ぎりぎり小だな。この遣り方は気に食わない」
ええっ、できるって言ったの白猫じゃん!
「鑑定! 鑑定! 鑑定!」を掛けたら、マジックバッグ小(劣)となっていた。
前日に作った方はマジックバッグ小だから、やはりケチっては駄目なんだね。ドッと疲れたよ!
ただ、余った皮で作ったマジックポーチは小と出たけど(劣)は付いていない。
「なぁ、これをオークションに出すのって詐欺になるかな?」
ルシウスとジャスも、マジックバッグが欲しくて頑張って迷宮ダンジョンを攻略したので、落札したのが(劣)だなんてショックだろうと悩む。
「資金は必要だが……」
金に細かいルシウスも歯切れが悪い。
「マジックバッグ小(劣)でオークションに出品したら良いだけだ。それに、マジックポーチ小も二つ出せる」
白猫に言われて、ルシウスとジャスも笑う。
「そうだな! 俺たちも劣だろうが、欲しいと思ったさ!」
ただ、これからはちゃんとしたマジックバッグを作ろう。
翌日から、白猫がうるさいから暗闇ダンジョンになったけど、ここって苦手!
「十一階からだよなぁ」
二人も十五階まで踏破していないみたい。
「前はゴーストには物理攻撃が効かなくて、撤退したけど、今回はこれがあるからなぁ」
ジャスが嬉しそうにピカピカの斧を振り回している。ルシウスもピカピカの剣を装備済みだ。
荷物持ちの機械兵と機械騎士を出す。マジックバッグがあるから、荷物持ちは必要ないけど、持っているのを知られたくないからね。
迷宮ダンジョンでは、他の冒険者達も機械兵達に慣れていたけど、暗闇ダンジョンでは一からやり直しだ。
「これは、俺の召喚獣だ! 攻撃したら、反撃するぞ!」
そう大声で告知したけど、ギルドで見慣れているのか、騒ついたけど武器に手を掛ける奴はいなかった。
ここに潜るのは、鉄級から銅級になったばかりの冒険者が多い。それも五階とか十階までで、転移陣で十一階に行ったら、誰も居ない。
「これって、荷物持ちの偽装いった?」
星の海だけなら、アイテムボックスに収納すれば終わりじゃん。
「下の階で他の奴らがいるかもしれないだろう!」
ジャスに笑われると、ムカッとする。
十一階は、また墓場だ。それも広い。暗いから「ライト!」を掛けておくが、見たくない物がよく見えて、テンションがダダ下がりだ。
「脳内地図!」で経路を調べると、途中から村になっている。
「ううう……きもい!」
墓場からスケルトン騎士が出てくる。その上、グールも! 臭い!
ルシウスとジャスは、ピカピカ無双しているから、私はパスしたいけど白猫がうるさい。
「ほら、ホーリーアローの練習をするのだ!」
白猫に言わせると、浄水を掛けなくても、愛し子の聖属性でホーリーアローが撃てるそうだ。
まぁ、二人が嬉しそうにバンバン討伐しているから、私は後衛としてホーリーアローの練習をしても良さそう。
「ええっと、ホーリーアロー?」
ただ、浄水を付けなくても大丈夫なの? って疑問が現れていたみたい。
グールの心臓は射抜けたけど、スケルトン騎士には矢を避けられた。
「もっと、ちゃんと聖属性を意識してホーリーアローを使うのだ!」
頭の上の白猫に尻尾で顔を殴られた。
「ホーリーアロー!」
聖属性と言われても、ピンと来ないけど、女神様の事を思い出して射る。
「ホーリーアロー! 話が違うんだよね!」
最初は、いつか子どもを産んでくれたら、後は自由に生きて良いって言ったじゃん!
「ホーリーアロー! あのクズ王子、死ね!」
それに、あのクズ聖王家! 天罰が下れ!
「ホーリーアロー! ホーリーアロー!」
色ボケ王なんかキショいんだよ!
白猫が呆れているようだけど、女神様を思い出したら、これまでの色々な怒りが噴き上げてきた。
「まぁ、ホーリーアローの練習はこのくらいで良い」
機械兵にスケルトン騎士の剣やグールの魔石などを拾わせる。
ちょっと苛ついたから、頭の上の白猫を出し下ろして、もふもふしておく。
「やめろ!」と白猫が嫌がっているから、猫吸いは今度にしよう。
私の手から逃れた白猫がジャスの肩に乗って文句を言っている。
「アレクは、ホーリーランスの練習だ。ジャスは炎の剣、ルシウスは……ううむ、ピカピカ剣だな」
えっ、ピカピカ剣が正式な名称なの? 鑑定を掛けようとしたら、白猫が嫌そうな顔をした。
「アレクに合わせていると、こちらまで低俗になる!」
まぁ、嫌がる白猫を無視して鑑定を掛けたら、光属性の剣と出たよ。
「うん? 聖属性の剣じゃないんだ?」
白猫は「さっさと村に行け!」と偉そうだけど、聖属性を光属性と間違えて付与したんじゃない? ピカピカ光っているけど、聖なる感じじゃないものね!
「アレク、馬鹿なことばかり考えず脳内地図で村を調べろ!」
へぃへぃ、都合が悪いと話を変えるんだよなぁ。
「脳内地図……げげげ……あれって自衛団?」
村への入り口をグール達がバリケードで塞いでいる。
「なぁ、村を通らずに十二階に行けないのか?」
ジャスが嫌そうに質問してくる。理由は……子どもグールがいるからかな?
開拓村っぽい建物に農民っぽいグール。私は、グールの時点で嫌だから感情移入はしないけどさ。
「あんなに広い空間だったのに、村を通り抜けないと十二階には行けないみたい。あっ、それと白い空間があるから、モンスター部屋もあるみたいだよ」
ルシウスは、子どもだろうとグールはグールだ! とやる気満々! モンスター部屋でお宝がドロップするのを期待しているからかも。
「ああ、あれは子どもじゃねぇ! グールだ!」
ジャスも近づくと臭いで割り切ったみたい。
白猫が機械騎兵を召喚して、バリケードに突撃させる。
ううう、バリケードは壊れたし、後ろにいたグール自衛団も踏み潰したけど、強烈な臭いが!
「ジャス、炎の剣で焼いて!」
これ、大失敗だった。腐った肉体を焼く臭い! 吐きそう!
「アレク、浄化だ!」
白猫に言われて「浄化!」を掛けたら、村の攻略終了になった。
臭いも無くなったから良いよね? ルシウスが出番が無かったピカピカ剣を鞘に戻している。
機械兵と機械騎士にドロップ品を拾わせるけど、相変わらず聖水とか魔石であまり嬉しくない。
「モンスター部屋はどこだ?」
気を取り直したルシウスに一番大きな建物、多分、町長の家だと教える。
建物の中、暗いから「ライト!」を掛ける。
ううう、嫌だ! 床には散乱した骸骨がゴロゴロ!
スケルトンって討伐したらドロップ品になるのに、この演出はいらないんじゃないの? 頭の上の白猫に文句を言いたい。
なるべく骸骨を踏まないようにモンスター部屋に向かう。
「この扉を開けたらモンスター部屋だよ」
ジャスが先頭でモンスター部屋に入る。
「ゲッ! ゴーストがみっちり!」
ここって、他の冒険者はかなり前から入っていないんじゃない。ドロップ品も期待できそうにないからさぁ。
ジャスが炎の剣でかなり数を減らす。その後は、私の下手くそなホーリーランスとルシウスのピカピカ剣で討伐したんだけど……ここのボスって、巨大ゴースト! それが農民っぽい人達の合体バージョン。
「なぁ、ゴーストってこれまでは球っぽかったのに、これって有り?」
それに口があちこちにあって牙を剥いている。ゴーストってエレメント系だと思っていたよ。神様の設定、良い加減だなぁ!
「良いチャンスだ! ホーリーランスの練習だ!」
キモい巨大ゴーストに「ホーリーランス! ホーリーランス! ホーリーランス!」を連続で掛けたら、消滅した。
ゴトン! と宝箱をドロップしたけど、どうせ回復薬だろうと期待しないで鑑定! 罠は無いから開けたら、鍵だった。
「これって、他のモンスター部屋の鍵かな? 開錠があるから必要ないんじゃないの?」
私はガッカリしたけど、ルシウスは期待している。
「モンスター部屋は、普通に入れるんじゃないか? 隠し部屋とかじゃないのか?」
まぁ、進めば分かるよね。




