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クズ聖王家から逃げて、自由に生きるぞ!  作者: 梨香
第一章 クズ聖王家からの脱出
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神官殺しのアレク

 ああ、嫌だ、嫌だ! 私が一番嫌いなのは、幼い子に性的虐待をする変態だよ。

 ここで、神官を殺して犯罪者になろうとも、リリーをあんな目に遭わした奴を許してはおけない。

 

 それにアイツは、リリーがショックで口も聞けなくなったのを『女神の呪い』だと言ったのだ。許しちゃおけない! 


 えええ、身体の中の魔力が膨れ上がっている。この怒りは、私だけのもの? それとも女神様(クレマンティア)の怒りも加わっているの?


「アレク! お前、魔法の暴走じゃないのか?」

 ルシウスが心配している。

「感情のままに魔法を使ってはいけないと聞いたぞ!」

 ふぅ、一呼吸して、怒りを逃す。


「あれは、何だ!」

 後ろからついて来ていたジャスが教会の上に渦巻く黒雲を指差す。


「あれは、神官を捕らえている様だな」

 近づくと、神官は涙を流しながら、自分の罪を懺悔していた。


「可愛い顔をしたリリーは、私を誘惑した魔女なのです。だから、私は誘惑に負けてしまったのです。魔女を焼き殺せば、平和が訪れます」


「どこまで自分勝手な変態なんだ! 女神様(クレマンティア)の裁きを受けろ!」

 雷が神官の身体を焼き滅ぼした。その上に、教会にも八つ当たりして、燃やしちゃった。


 その頃には、交易都市(エンボリウム)の多くの住民、冒険者達が教会があった場所に集まっていた。

 このままでは、噂が噂を呼んで、リリーは魔女として焼き殺されるかもしれない。

 一緒に逃げようか? それとも、私が犠牲になれば、この騒ぎは収まるのか?


「集まった人達、よく聞いてくれ! 亡くなった神官は、幼児を性的に虐待した上で、ショックを受けたのを女神様(クレマンティア)の呪いと謀ったのだ。それで、女神様(クレマンティア)の裁きが下ったのだ」


 本当の事だけど、信じてもらえるかな? 今日、交易都市(エンボリウム)に来たばかりの若僧が言う言葉なんて!


 全員が跪き「女神様(クレマンティア)ありがとうございます」と泣きながら唱えている。


 その信仰の熱気が、私には眩しい。思わずよろめいたら、ルシウスが支えてくれた。


「何故、俺の言葉を信じたのだろう?」

 手を振り払って、自分で立って考える。

「そりゃ、あんたが女神の愛子だからさ。髪の毛、伸びてるぞ!」

 手にサラサラと当たる銀髪! 朝に切ったのに、夕方に元通りじゃん! あの苦労はどうなるのよ!


「これこそ、女神様(クレマンティア)の呪いだ! 苦労して短く切っても、伸びるなんて!」

 ギョッとした顔のルシウスが、よく切れるハサミをプレゼントすると約束してくれた。


 聞いてみると、あの神官、何人もの幼女に手を出していた。ショックで亡くなる子もいて、それを『女神の呪い』で済ませていたのだ。女神様(クレマンティア)も怒るよ!


 リリーの身体の傷は治してあげられるけど、心の傷は残る。

「もう大丈夫! お兄ちゃんが、あの神官に罰を与えてくれたと、パパとママが教えてくれたから。女神様(クレマンティア)が何個も雷を落として、アイツが粉々になったと聞いたら、ホッとしたの。もう、あんなことはできないんだもん」

 空元気なのかもしれないけど、強い子だ。


「リリー、この辛い思い出を取り出して、捨てても良いんだよ」

 多分、私にはできると思う。


「ううん、良いの! 今でもビクッとする時があるの。男の人が近くにいたらね。でも、宿屋だから、男の人も泊まるわ。それに、こんどあんな目に遭いそうになったら、全速力で逃げて、大声で『変態がいる!』と叫ぶから」


「リリーは強いな。でも、少しだけ女神様(クレマンティア)の加護を分けてあげよう。好きな相手以外と、性的な関係を無理強いされません様に!」

 祈りが届いたのか、天からキラキラと光がリリーの頭の上に降ってきた。


「これって、聖別なのでは?」

 ルシウスが驚いている。


「リリー、教会で修道女になりたい?」

 多分、女神様(クレマンティア)のお目に止まった子だから、何かギフトが貰えていると思う。


「ううん! 私はパパとママと『海亀亭(トゥラトゥラ)』をやりたいの」

 

「そっか、それが良いよ! もし、教会が無理やり連れて行こうとしたら、女神様(クレマンティア)に祈ると良い。きっとリリーに良いようにしてくださるさ」


 結局、タダで泊まって下さいと嘆願する亭主を説得して、半額にして貰った。半額でも、実は財布に厳しいけどね。


 海亀のスープは、美味しいし、ルシウスからは、よく切れるハサミをプレゼントして貰った。

 ぼんやりと幸福感を味わっていたけど、私って神官殺しの重罪人なんじゃ? いや、神罰を下したのは、女神様(クレマンティア)だよね。


 兎に角、防衛都市(カストラ)に早く行こう。目立ち過ぎたからね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 女神様の天罰キターー!!(歓喜) うんうん、ピンポイント複数落雷で死亡&建物崩壊(火災含む)は、『神の激しい怒り』ですもんね♪ ……可能なら、ギリギリ死なない程度に満遍なく竜巻(カマイタ…
[良い点] 切った髪が伸びるのは、神のご加護か祝福何でしょうが、日本人の私としては呪いで髪が伸びる市松人形のイメージが強くてアレクが呪いだと叫ぶ気持ちがよく分かりますw
[一言] 実際はこんなことを言っても、被害者が悪者にされることが殆どなんですよね。特に親や身近にいる人たちは自分の精神衛生上無かったことにしたいし、面倒ごとが嫌だから。 でも、自分とは関わりのない離…
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