映画館でカップルの振り!?
志帆の直球の言葉に、俺は動揺した。
彼女は俺と一緒にいたいと言ってくれる。ただの兄妹ではなく、婚約者として。
なら、俺はどうか?
くすりと志帆は笑う。
「でも、兄さんがいきなり婚約の話を聞かされて、受け入れられるわけなんてないってわかっています。まだ香流橋さんのこと、好きなんですよね?」
そう。
俺は葉月にまだ未練がある。あんなにはっきり振られたのに。
カッコ悪いかもしれないけど、それは事実だ。
でも、それは変わっていくかもしれない。
今、目の前にいる優しい女の子によって。
「婚約の話をどうするかは少し考えてみるよ」
「はい」
志帆の瞳が不安そうに揺れる。
俺は志帆をまっすぐに見つめた。
「でも、俺は志帆の力になりたいし、信頼に応えたい。それだけは変わらないから」
「! ありがとうございます!」
志帆がぱっと顔を輝かせる。
婚約の話は俺の知らないところで進められた。志帆はそれを喜んで受け入れるつもりのようだが、俺は父やその他関係者と話し合わないといけない。
でも、それが白紙に戻ったとしても、俺と志帆は兄妹であることに変わりはない。
何より……。俺は志帆との婚約を受け入れても良いかなとも思っていた。
そうすれば、志帆という素晴らしい家族が永遠に自分のそばにいてくれるのだから。
「ね! それより、今は目の前のデートを楽しみたいんです」
「お姫様の仰せのままに。映画館はこっちだったよね」
「行きましょう!」
突然、志帆が俺の手をつかみ、引っ張っていく。
その大胆な行動に俺はびっくりするが、志帆もちょっと恥ずかしそうに頬を赤くしている。
本当に……カップルみたいだ。
変装しているとはいえ、街中をたぶん日本で一番可愛い女の子と歩いている。
そして、彼女は俺にとって一番大事な女の子だ。
映画館のある高層ビル(ビルごと配給会社の持ち物だ)に着き、チケット売り場に行くと志帆はワクワクした様子で顔を輝かせる。
「ポップコーンとコーラのビッグサイズを頼みましょう!」
「見る映画の種類じゃなくてそっち!? しかも、そんなに食べきれないよ……?」
「あたしは食べ切れます」
「志帆って……」
「大食いで悪かったですね」
志帆はくすくすっと笑う。
そして、「あっ」と看板を指差す。
「カップル割引ってありますね……」
志帆はちらっと俺を見る。もじもじとして何か言いたそうだ。
俺は微笑んだ。
「使おうか」
「い、いいんですか?」
「条件は男女のペアであればいいみたいだし。兄妹でも大丈夫だよ」
志帆はむうっと頬を膨らませる。
「婚約者なんだから、普通にカップルだと思います!」
「じゃあ、カップルシートとかも使う?」
俺は冗談半分でつい言ってみる。
カップル割引はポップコーンとコーラが安くなるだけだが、カップルシートは狭い空間で密着しながら映画を見ることになる。
それはさすがにちょっと恥ずかしいし、まだ恋人というわけでもないし、志帆も首を縦に振らないと思っていた。
ところが、志帆はこくんとうなずいた。
「に、兄さんがそうしたいなら……あたしもカップルシートに座ってみたいです」
「い、いいの?」
「あたしは兄さんとなら、恋人らしいことは何をしてもいいんですよ。婚約者ですから」
そう言って、志帆はいたずらっぽく片目をつぶったが、その顔はまっかだった。
次回も数日内にはお届けできればと思います……!
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