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今日も今日とて敵対視  作者: リュウ星群
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第七話「二人っきり(?)作戦」

「全治おめでと〜!」


 それは私の家に上がったモエカの第一声。謎にクラッカーまで用意して、部屋中に紙片が散らばる。


「なんだこれは」

「せっかく風邪が治ったんだから、盛大にお祝いしないとね!」

「大袈裟すぎる・・・・」


 変に盛り上がるモエカだが、今日の本題は全くの別だ。最近疎かになりつつある作戦会議の再開のために集まったのだ。


「今日の作戦会議なんだけどね、良い案あるよ」


 モエカがニヤッと笑う。その時点でなんとなく嫌な予感がしたのだが、次の瞬間に拍子抜けする。


「二人っきりになろう!」

「・・・・・・・・」


 二人っきり。その言葉を聞いて以前の出来事を思い出す。それは私がヒデを家に上げたときのこと。

 改めてそのときの状況を俯瞰して、ボッと顔が赤くなる。しかもそんな状況下でヒデは「可愛い」などと言ってきたのだ。今更だが恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。


「ど、どうしたのサヤカちゃん!? と、とりあえず落ち着こうっ」


 記憶を体内から絞り出すかのように体を捻る私を見てモエカが慌て出す。


「まあ、二人っきりというのは今に始まった話ではないが・・・・」


 ふぅと息を吐いて落ち着いた私はそう説明する。すると、モエカが驚きの顔を見せた直後に目を輝かせた。


「も、もしかしてこの前佐木山君が隠してたやつ!?」

「ヒデが何か言ってたのか?」

「今日は極力会いたくない、って。絶対何かあったと思うんだけど、話してくれなかったよ」


 即座にそれがこの前ヒデを家にあげた時のことであると私は察した。

 モエカのことだ、きっとしつこくヒデに付きまとったことだろう。あの出来事を外部に漏らさなかったのはこちらとしてもありがたい。心の中で静かに感謝する。


「で、何があったの?」

「き、企業秘密だ」

「企業って・・・・・・・・ん? 顔真っ赤じゃん! 絶対何かあったじゃん!」

「ああー!秘密ったら秘密だ!」

「えぇ〜ケチ〜」


 モエカが芝居がかったそぶりで拗ねてみせる。


「泣いても駄目だ」

「な、泣いてはないじゃん!!」


 心理的に秘密を吐かせるやり口は図星だったようで、モエカは今度こそ本心から拗ねてみせた。


「まあいいや。・・・・・・それでね、二人っきりって言っても色々シチュエーションあると思って」


 するとモエカがポケットに手を入れて、そこから携帯を取り出した。そして流れるような動作で操作し、その画面を見せてくる。


「じゃーん、お洒落なお店見つけたんだ〜」


 古さを魅力的に取り込んだ全体的な壁や床。そしてその雰囲気に合ったメニューの一覧。それは誰でも一目でお洒落だと分かるカフェのまとめ記事だった。


「綺麗だな」

「でしょ? 場所もそんなに遠くないよ」


 ただカフェとなると、欠点がある。


「私はコーヒーが飲めない」

「べ、別にコーヒーじゃなくてもいいんじゃ・・・・・」

「ダメだ! 威厳を失ってしまう!!」

「さ、最初からあったかどう・・・・・う、ううんっなんでもないよぉー」


 ギロリとモエカを睨み、その言葉を慎ませる。


「まあとりあえず」


 気持ちを切り替えたモエカがずいっと顔を近づけて、


「二人でカフェ行ってきてください!!」

____________________________________


「はいはい、逃げないよ」

「む、無理だ! 離せッ!」


 どういう状況だろう。

 僕の目の前でサヤカさんがモエカさんに腕を掴まれている。


「ほら、繰り返して。一緒に」

「一緒に」

「カフェに」

「カフェに」

「行こう」

「行こう」

「よしよし、言えた言えた!」

「・・・・・」


 言えてる?

 まあ、ひとまず置いておいて・・・・・。


「カフェですか?」

「う、うむ。こんな場所があってだな」


 そう言ってサヤカさんは携帯の画面を見せてきた。


「へえ、綺麗な場所ですね」

「うむ。それで、どうだ。こ、今度一緒に・・・・・」

「はい、是非」


 僕が承諾したのをみて、サヤカさんがホッと息を吐いた。


「いつ行きますか?」

「今日だ」

「や、やだサヤカちゃん大胆・・・・・!?」


 今日と言われて驚いたのは一緒だが、茶川さんがずば抜けて反応している。

 不審者を見る目で茶川さんをチラ見してからもう一度サヤカさんに視線を戻す。


「分かりました」

「うむ」


 すると、サヤカさんが突然クルッと後ろを向いた。そして小さくガッツポーズをする。・・・・・・本人は隠しているつもりなのだろう。


「あっ、今ガッツポーズした!!」

「い、いやこれは!!」


 言わないであげて。

____________________________________


 というわけで放課後。

 サヤカさんが道案内をしてくれるとのことで、サヤカさんの背を追う形で歩いた。


「にしても、学校から歩いて行けるなんて。随分近いですね」

「うむ」


 僕の言葉にサヤカさんが短く返す。どうやらスマホの画面に集中するのに精一杯のようだ。

 若干の危険性を感じて僕はサヤカさんの隣に向かう。突然気配を感じたせいで、サヤカさんはビクッと驚いてからこちらを見た。


「な、なんだ急に!?」

「あ、いや」


 と、ふいに。

 視界に映るサヤカさんが突然グラッと消えかける。道の段差に足が引っかかったのだ。


「おっ・・・・・と」

「お、おぉ・・・・・」


 とっさに僕が両手で両脇を捕まえたことで転ばずに済む。


「・・・・・こんなこともあろうかと」

「す、すまない。助かった・・・・」


 ひとまず転ばずに済んだのはよかったが・・・・・サヤカさんは自分が今どんな状態であるのかを自覚すると共に、それがたまたま通りかかった人達に見られた羞恥心で「くぅ・・・・っ」と小さく声を漏らした。

 サヤカさんの両足をしっかり地に着けてから手を離す。と、ふいにサヤカさんがこちらに手を伸ばしてきた。


「・・・・・手、繋いでてくれ」

「え?」

「また転ぶかもしれないから・・・・・ほら」


 そう言ってサヤカさんがもう一度僕の方へ手を伸ばしてきた。


「・・・・・はい」


 短く返事をして、恐る恐る手を握った。


「いい。いいよ、サヤカちゃん・・・・・」


 そして、僕たちは背後の気配に気づくことなくカフェへと向かっていった。

____________________________________


 ほどなくして到着したカフェ。入口からそのお洒落な雰囲気が漏れ出していた。そんな入口を通る前に、サヤカさんが僕と握る手をしばらくじっと見つめてから、そっと離す。


「入るか」


 そう言ってサヤカさんが扉を開く。僕はこういうお洒落なお店に来るのが初めてなので、若干の緊張を感じながら店内へと入った。

 店内には学校の課題に取り組む人や、パソコンを操作する人。まあ、まとめるとそれっぽい人たちが多くいた。

 レジに並んで、僕とサヤカさんがそれぞれ注文をする。そして、お互い飲み物が届いてから席につく。

 サヤカさんがコーヒーにミルクを入れてから、早速飲み始める。僕も続いてコップに口をつけたが、なぜかサヤカさんがこちらを凝視してくる。


「・・・・・ミルクは?」

「入れてないですけど・・・」


 と、なぜか悔しそうな顔を見せるサヤカさん。そして急にこちらに手を伸ばしたかと思えば、僕のコーヒーを強奪した。


「え、ちょっ」

「私だってブラックは飲める!」


 どうやらいつもの勝負魂が騒いでしまったようだ。

 強奪したコーヒーを勢いよく飲む。・・・・・が、その勢いの割に、実際に口に入れた量は少なかった。


「・・・・・ゔっ・・・・」

「えっ、まさか吐かないですよね!?」

「・・・・・ふぅ」


 流石に吐き出すことはなく、サヤカさんは嫌そうにゴクっと飲み込んだ。


「・・・・・ふっ」

「す、すごーい」


 何事もなかったようにドヤ顔を晒すサヤカさん。僕もツッコミづらく、適当に拍手しておいた。

 ん? あれ?


「僕コップに口つけませんでしたっけ」

「ん・・・・・・・あ」


 と、事の次第に気づいたようで・・・・・サヤカさんの顔が真っ赤に火照った。


「わ、わざとじゃ・・・・・気づかなくてだな・・・・・!」

「い、いえ、気にしないでください」


 慌てながらサヤカさんがスッとコップを返してくる。そして僕は確認を取るために中を覗き込む。コーヒーの跡は一箇所・・・・・やはり、間接キスしてしまったようだ。

 とんだミスに顔を真っ赤にして、サヤカさんは気持ちを落ち着かせるように自分のミルクを入れた方のコーヒーを飲み始めた。

 

「・・・・・ナイスッ!!」


 すると突然、声が聞こえた。気づかなかったが、僕たちの後に来たお客さんが隣に座ったようなのだが・・・・・なぜか悶えているようだ。布を深く被った格好も相まって、奇妙な様子だ。

 見なかったことにしよう。


「本題に入ろう」

「あ、はい」

「今日の勝負は、お互いを見つめ、目を逸らしたり閉じたりでもした方の負けだ」


 相変わらずシンプルな勝負だ。

 もう始めるつもりらしく、サヤカさんが肘をついてこっちをじっと見つめてきた。


「いくぞ」

「はい」

「始め!」


 そして勝負開始の合図とともに、互いの目をじっと見つめる。

 見つめて改めて思ったが、サヤカさんは僕と同じように表情が分かりずらい。その原因はきっとこのジト目にあったのだろう。まあ、出会って何ヶ月の今で、今更感はあるが・・・。

 三秒経って、すぐに五秒、七秒・・・・・。これは中々の長期戦になる、そう覚悟した十秒目で、突然、


「十秒間相手の目を見つめると、恋に落ちるらしいよ」

「!?」


 またまた、隣の人の声が耳に入る。

 どうやらそれはサヤカさんにも聞こえていたようで、驚いたように目を見開いては一気に後ろの壁へと後退した。勢い余って頭をぶつけ、両手で痛む箇所を押さえる。

 後頭部の痛みが和らいだころ、サヤカさんは若干の敵意を込めてその隣のお客さんへと視線を向けた。


「誰だ! ・・・・・って」


 するとサヤカさんは、回答が来るよりも先に誰なのか正体を把握したようだ。


「・・・・・ここで何をしてる、モエカ」

「え、茶川さん?」

「ははは! バレた!!」


 正解のようで、被った布を剥いでその正体を自ずと見せてきた。しっかりと茶川さんだった。


「場所さえ分かればついてきちゃうよ、当たり前じゃん」

「当たり前じゃないだろ!」


 しっかりとツッコミを入れるサヤカさん。

 正直僕も後をつけていたのには若干引いている。

 

「まあさ、そんなことはさておきさ」

「おい話を変えるな!」

「さっき言ったこと覚えてる?」

「ん、ん?」


 不満気味に聞き返すサヤカさんに、茶川さんが先の言葉を繰り返した。


「十秒間相手の目を見つめたら、恋に落ちるって」

「だ、だからなんだ」

「十秒経ったでしょ?」

「ん!?」


 僕も心の中でサヤカさんと同じ反応をした。


「た、経ってないが!!」

「いやいや、ちゃんと計ってたよ!」

「経ってない!!」

「経った!」


 まあ、確かに経ってる。僕も数えてたし。


「佐木山くんは何か感じないの?」

「えっ、えっと」


 まさかこちらに向いてくるとは。

 勘弁してほしい。以前サヤカさんに「可愛い」と言ってしまったときと言い、最近はサヤカさんを変に意識してしまっているのだ。そんな状態でこうもからかわれると動揺してしまう。

 それを察したのか、茶川さんは嬉しそうにニヒヒと嫌な笑みを浮かべる。


「うまくいったみたい」

「ヒデ!?」

「ちょっと!?」

「お客様お静かにお願い致します!」


 流石に声がデカかったようで、レジの店員さんに注意される。怒られたが、むしろ助かったと僕は心の底から思った。

 僕たちは一度、自身を落ち着かせるかのように静かにコーヒーを飲む。ちなみに茶川さんの注文はケーキだった。

 と、サヤカさんが声を出す。


「・・・・・負けた」

「ああ、そういえば」


 突然の茶川さんの乱入で勝負していたことを完全に忘れていた。


「言うことを聞こう」

「え、う、うーん」


 勝った方が命令するなどというルールは聞いていなかったので、僕はしばらく考え込んだ。そして、思いついたところでサヤカさんの方へと近づいた。

 サヤカさんは急に近くに来られて若干びっくりしたような顔をする。かまわず、僕は手を寄せて茶川さんには聞こえないようにした。そして、おそるおそる声を出す。


「今度、また二人で来ましょう」

「うん!?」

「そろそろ出ましょうか」


 だめだ、早く店を出よう。恥ずかしすぎる。

____________________________________


 お店を出た後、しばらくは帰り道が一緒ということで茶川さんも同行した。僕とサヤカさんは気まずさであまり会話しない。

 突然、茶川さんが寄ってくる。


「残念ながら聞こえてましたよぉ」

「こわ」

「今度は邪魔しないでおくねっ」


 そして茶川さんは言葉と共にニヤッと表情を作って離れた。


「・・・・・ありがとうございます」


 言わなければよかった・・・・・。


毎度更新が遅く、大変申し訳ございません....。

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