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今日も今日とて敵対視  作者: リュウ星群
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第13.5話「本心」

 夏祭りに行く。それに伴い何が必要か。携帯やティッシュなどの必需品は言うまでもない。ならば何か。

 私が思うには、浴衣である。

 正直言って、夏祭りに参加したことはほとんどない。だが、夏祭りと言えば浴衣のイメージがある。なので、私服ではなく浴衣を着ていこうと思うのだが・・・・・


「ところどころ高いな・・・・・」


 ネットショッピングをスクロールしながら私はそう呟く。

 浴衣の相場価格は三千円から一万円前後。三千円という安い値段で済ませられるらしいが、生憎と気に入るデザインがない。かと言って次があるかも分からない夏祭りのために一万円以上支払うかと言われれば渋面だ。

 私は困りに困った挙句に、ある奴へ連絡を飛ばす。

 


 そして奴からの連絡が帰ってきた後。


「いらっしゃ〜い」


 私はモエカの家にお邪魔することになった。そう、奴とはモエカのことである。浴衣について相談してみたところ、家に来てくれと言われたのだ。


「サヤカちゃんに見せたいものがあってね」


 そう言ってモエカはタンスから何かを取り出す。


「私が昔着てた浴衣なんだけどね、サヤカちゃん着れるかなと思って」

「貸してくれるのか?」


 ばっちぐーと満面の笑みのモエカ。

 淡い青色ベースに花柄のついた浴衣。サイズも私に合いそうな小さめなものだ。


「ところで誰と行くの?」


 と、浴衣に見惚れているところでモエカが話題転換する。


「・・・・・その面、分かってて言ってるんじゃないか?」

「ムフフ」


 ご名答と言わんばかりの気持ち悪い笑み。

 これ以上話すとしつこくなる気がしたので、私は黙ったまま渡された浴衣のサイズを体に合わせて確認する。

 だが、そうは問屋が卸さない。


「佐木山君と出かけるからおめかししたくなったの?」

「そ、そんなんじゃない! 夏祭りならあるべき格好をしていこうと思っただけだ!」

「素直じゃないんだからぁ〜。まあ、私服の人も多いんだけどね」

「ぐぬ・・・・・」


 まんまとジャブを喰らった私は口籠る。どうしてこういつもワンサイドゲームになるのか。悔しながら、こいつの実力なのだろう。


「じゃあま、始めますか」

「始めるって何をだ?」

「そりゃ」


 モエカは決まってるじゃんと言わんばかりの舌ペロで答える。


「お着替えでしょ」

____________________________________


「・・・・・なんだか恥ずかしいな」

「いいじゃんいいじゃん、可愛いよ〜」


 モエカの手伝いがあって数十分後。私は浴衣を身にまとって姿見鏡の前に立っていた。

 自分で浴衣を着ていくと言い出した身だが、これをいざ当日に来ていくのだと想像したら唐突に恥ずかしくなってきて、今更撤回しようかと思っていた。

 しかし、そんなことに気づくはずもなくモエカはノリノリで事を進めていく。


「やっぱ髪型も変えたいよね」

「い、いや、別にこのままでも」

「だめだめ。ちゃんと可愛くしなくちゃ。男の子と夏祭りに行くんだよ?」

「男と意識する以前に、ヒデは敵だ!」


 確かに相手を意識している節はあるやもしれない。自分でも素直になっていないという自覚はある。だがこうでも言い訳しないと、なんだかプライドが許さないのだ。

 最近、私は敵対視を疎かにしてしまっている。もう少し、威厳とやらを保たなければ。


「ほらほら座って」


 そして私の抵抗など虚しく、その場の椅子に座らされる。


「サヤカちゃん」

「ん?」


 私の髪をいじりながらモエカは言う。


「あんまり敵対視にこだわりすぎなくてもいいよ」


 そして、まるで心を見透かしてきたかのような発言。

 あまりの驚きに口は開けど言葉に詰まる。


「サヤカちゃん、最近は佐木山君のこと敵じゃなくて友達として見てるでしょ」

「い、いやそんなことは」

「素直になりなよ〜」


 髪をまとめて、ねじり、留める。モエカの手付きはいつも自分でやっているのか、異様に慣れていた。


「それともあるいは」


 ニヤニヤ。モエカはいつもの数倍気持ち悪い笑みで一人考える。

 ただでさえ気持ち悪いのに、その内容を推し量れないところがなお悪し。


「じゃあさ、夏祭り二人で行くのはどう思ってるの?」

「ど、どうと言われても」

「デートなんじゃない?」

「は!?」


 私は驚愕の声を上げる。

 それは・・・・・・的を得ていたから。


「へへ」


 混沌の渦に陥る私など気にもとめずにモエカは一人でご機嫌そうに笑っている。

 もう今すぐにでもこの場からダッシュで離れたい。だが、まるでそれを許さないかのようにモエカの腕は私を掴んでいる。


「もう認めちゃおうよ。初めて作戦会議したときも、敵を友達として見てたしさ」

「え、私言ってなくないか?」

「顔で分かるよ」

「う、嘘だろ!?」


 私は自分の顔をペタペタと触る。

 ・・・・・・私は、そんなに顔に出やすいタイプだったのか?

 そうだとしたら、あのときも、あのときも、あのときも・・・・・・過去の色々な場面を思い出して顔が赤くなっていく。


「何を焦ってるのかは分からないけどさ。サヤカちゃんと佐木山君なら、敵同士じゃなくたって仲良くできるよ」

「・・・・・・」


 隅々まで心の不安を当ててくる。

 私は何も言うことができなかった。


「まともに会話ができないから敵対視。変なプライドもあって、話せるようになっても敵対視。何度も友人から避けられてきた。・・・・・・ヒデともそうなるのが、怖い」


 そして諦めた私は、思いつく限りの言葉をボソボソと吐き出す。

 何度もヒデはそんなことはないと約束してくれた。しかし、それでも、トラウマなのか不安が消えることはない。


「大丈夫だよ。私がついてるし」


 そしてよくわからない慰めで、モエカは私の頭を撫でてくる。


「よし、完成だよ!」


 下を向いていて気づかなかったが、あの会話の中でもどんどんと完成に近づいていたらしい。

 暗い空気となってしまったがそれもおさらば。私は鏡の中の自分を見て、モエカの実力に感激する。


「・・・・・・すごいな」

「えへへ、どんなもんじゃい」


 と、モエカは素直にドヤ顔する。

 そして私は立ち上がり、もう一度姿見鏡の前に立つ。先ほどは恥ずかしかったが、髪型まで変えてみればなんだかそれっぽい。これならば、と少し自信がつく。


「また当日うちにおいでよ、やってあげるから」

「・・・・・・分かった。ありがとう」


 そして私服に着替え直し、もう一度感謝の言葉を述べてからモエカの家を去る。


「佐木山君にはもう少し頑張ってもらわないとなぁ」


 そんな身勝手でもあり意気揚々な声を背にしながら。

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