十一幕
いつもありがとうございます!。
遠くから此方に向かって音が鳴り響く。
音はガシャガシャと何かがぶつかり合う音とズーンと軽い地響きが聞こえてきた。
当然こんな状況で、こんな音を出すなんて今回の討伐対象以外はあり得ないのである。
そして、遠くからでもわかる存在感。
そこから溢れ出る妖気は生者に導かれているように惹かれ、身体にへばり付いてるかと錯覚する程の気持ち悪い妖気。
(大天狗とかとは違う質の妖気……、流石に油断すると俺でも吐きそうになりそうだな。
他の奴等は大丈夫か?)
暁良は周りを見ると、全員の表情は険しいが耐えれないほどでは無いとわかった。
ただし、夏希を除いて……。
夏希は顔面を蒼白とさせていて、とてもじゃないが前線には立てない様相だった。
彼女は先日、何とか精神を持ち直したばかりなのに、今回の大天狗級相手はキツイかもしれない。
そう判断した暁良は、
「夏希!お前は下がってフォローに回れ!一誠さんもそれでいいですね?」
暁良が勝手に決めてしまった事ではあるが、一誠も同じ事を考えていたのだろうか「問題無いですよ」と返してくれた。
顔を青くしてる夏希は「わ、わかりました……」と下がっていった。
そして、第八部隊からも二人が後方に下がっていた。
恐らく彼等は遠距離支援型の霊装なのだろう。
三人が後方に下がり、最前線で戦うのは十七人である。
彼等の視線の先には、餓者髑髏が這いずる様に此方に向かってきているが、遠くに居るにも関わらず、その大きさは全員が視認出来る程、大きかった。
(何だ、あの大きさ……餓者髑髏は大きいって言うのは知っていたが、ここ迄とは思わなかった)
全員が遠目から確認出来た大きさは全長約三十メートルはあるであろうサイズてあった。
餓者髑髏が近づくにつれ妖気がへばり付く感覚が更に強くなる。
(この妖気そのものが毒を浴びたみたいに身体を阻害しやがる……。
動けない程じゃないが、体の動きが鈍い)
「さて、見ているだけでは倒せませんよ!皆さん、見ての通り相手はあれだけ大きいのです。
その攻撃力は桁違いだと思います。ですので、首を一点集中で落としましょう」
一誠の指示で、第三部隊が「了解」と応じて攻撃を開始する。
第八部隊はアインスがハンドシグナルをすると、全員が其々が散り、攻撃を開始した。
(お前を倒して、花菱捜索に戻らなきゃ行けないんだ!邪魔するんじゃねぇ!)
暁良は早速、霊血突破を起動して己の限界を突破していく。
「はぁぁぁぁぁ!!」
気合の咆哮と共に暁良は真っ直ぐと餓者髑髏に突っ込んで行く。
当然だが、餓者髑髏は突っ込んで来た暁良に腕を振るって迎撃しようとする。
その動きは以前の暁良ならば対処が出来なかったであろうが、何と餓者髑髏の振るった腕の上を駆けて走る暁良だった。
そのまま敵の首目掛けて一直線に向かおうとするが、やはり大妖怪、そう簡単には行かない。
餓者髑髏の腕の上を走る暁良は、突如として足を止められた。
「なっ!?」
暁良は足元を見ると、腕から大量の骨の手が足を掴んで来ようとしてくる。
餓者髑髏は大量の骨が集合して出来た妖怪。
群れにして個であり、個にして群れなのであった。
つまり全身が凶器であり狂気なのである。
それに気付いた暁良は早々に餓者髑髏から距離を取った。
スタッと仲間の所まで跳躍して戻った暁良に一誠は、
「先走っては行けませんよ」
軽く注意を促してきた。
「すいません」
そして、それを素直に謝罪した。
「ツヴァイ、ドライ、フィーア掻き乱せ」
その指示を受けた三人は、餓者髑髏の背後や死角から果敢に攻撃するが、餓者髑髏の身体から生えてくる骸達に防がれてしまう。
「情報……大事」
アインスは戦ってる三人を指差して言う。
「完全な死角から攻撃してても防がれている。つまり、アイツは私達が死角と思ってる所は死角じゃない」
「つまり、死角は無いって事ですね……」
一誠が言った事にアインスはコクリと頷いた。
そんな相談とかをしてる間にも、第三部隊と第八部隊は果敢にも戦っていた。
「せいやぁぁぁ!!」
未知瑠の攻撃は骨の一部を砕くが、砕かれた骨は直ぐに新しい骨えと入れ替えられた。
「喰らえよ!」
悠太の棒術によって餓者髑髏の足の小指を粉砕して切り離したが、まるで意思を持つ様に骨同士がくっ付いていった。
「キリがないわね!」
姫乃の蹴りで粉砕した箇所は、そのまま別の形を成して、姫乃に襲い掛かってきた。
健と拓も二人で協力して、餓者髑髏に攻撃するも、全てに意思があるように攻撃を阻まれ、骨の形を変えて攻撃してくる。
「不味いかもねこれ……」
「そうだね」
二人もこの状況は不味いと思っており、それは全員が感じている事でもあった。
「これは首を刎ねても意味は無さそうですね……」
一誠の言葉に近くに居た暁良とアインスは頷いた。
アインスはハンドシグナルを送ると、最初に前線から下がった二人が戦場から離れていく。
「おい、何を指示したんだ?」
暁良は去って行った二人の事を聞いた。
「勝てるかわからないから、全員が脱出出来る道を作らせ、そこに追っての足止めをさせる為のトラップを作らせに行かせた」
「感謝します……、正直勝てるかは微妙ですね」
一誠は素直に感謝を述べたが、暁良としては花菱の事が分からないまま、引き返す何て選択肢は、今の所なかった。
(今のままじゃダメだ!火力が足りてない、足りてないなら火力を上げろ!俺はその手段を知っているだろ!)
霊血突破を使い、大天狗の時みたいに皆を助ける。
暁良は今、その想いだけで血液を燃やし出した。
ドクンッ。
(あの時見たいに危機感を募らせろ!此処でやれなきゃダメだ!血液を燃やせ!細胞に燃料をくべろ!)
ドクンッドクンッ。
(まだだ!もっと!もっとだ!)
ドクンドクンドクンッ。
"そんな力、使わないでも俺を解放しろよ"。
頭の中には久しぶりにアイツの声が聞こえて来た気がする。
(お前は黙ってろ!今はお前に用は無い!)
"カカカッ、まぁ良いさ、いつかお前は必ず俺に頼る時が来るからな。其れ迄じっくり待つとするさ"。
頭の中から声が消えた時、暁良は動き出した。
「ハァァァァ!!不知火!!」
(まだだ!あの時とはまだ遠い!)
そんな思いで動いているが、それでも百鬼夜行メンバーより、既に速さが出ていた。
そして、その速度はどんどん上がっていく。
「もっとだ!!もっと!!」
(出力を上げろ!こんなんじゃまだ足りない!守りたい者を守れない!)
いつの間にか暁良の瞳は真紅に染まる程に充血させていた。
更に髪の毛からは色素が失われて白髪化もさせていた。
「まダだ!コいつをタオスのには足リなイ!」
(コイツを倒して花菱達を探さないと行けないんだ!)
暁良は暴走しはじめていた。
それは誰の目から見ても明らかであった。
傷を負っている訳でも無く、至る所から出血も始まっていた。
これは訓練が未熟な状態で30%を超えている反動でもあった。
「姫乃君、暁良君を止めます。手伝って下さい」
「わかったわ」
二人は暁良に攻撃を仕掛け、気絶させにいった。
暁良も、まさか味方から攻撃されるとは思わなかった為、不意を突かれる形で攻撃を食らってしまった。
「な、ん……で……」
その言葉と共に暁良は意識を手放した。
「全員撤収します!今はまだ餓者髑髏に対抗する手段がありません。
アインス君、誘導お願いします」
一誠は全員にそう指示をすると、アインスが保険を掛けていた策に、乗っかる事にした。
「わかった……全員着いてくる」
戦いは敗走となったが、幸いにも隊員から死者は出なかった。
これからも頑張っていきますので、どうぞ宜しくお願いします。




