六幕
変な時間ですかUPします。
翌日、胡桃から得た情報を早く確認したい気持ちが先走り、暁良は誰よりも早く第三部隊の隊室に来ていた。
(今日、あの力の正体がわかるかも知れない……。
第一部隊の強さの秘密と言われてる位なんだ、霊血突破なんて技を十二聖である社長が知らないなんて事はないだろ)
気持ちが落ち着かないからか、暁良は足を貧乏揺すりをする様に小刻みに動かしている。
そして、逸るその気持ちが届いたのか隊室の扉が開かれた。
「おや、源君は今日は早いですね。そんなに幻魔殿に会いたかったのですか?」
「はい、会いたくて夜も眠れなかったですよ」
一誠が部屋に入って来て、茶化す様に暁良に言うが、それを冗談の様に返した。
しかし会いたかったと言う意味では本当の事であった。
そして、一誠の隣には待ち侘びた人物である轟鬼幻魔がそこに居る。
「ホッホッホッ嬉しいのぉ〜、お主がオナゴなら更に嬉しかったんじゃがな……。
まぁ、大天狗の時の話しは来栖君から全部聞かせて貰ったから事情は把握しておる」
幻魔は事情を全て知っている様だ。
「そして、その上で儂に会いたがると言う事は霊血突破の事を聞きたいのじゃろ?」
ドクンッと暁良は自分の心臓が脈打つのを感じた。
知りたい答えを教えて貰える事に少し興奮してしまう。
「今回、儂が訓練をするのは第三部隊にそれを教える為じゃよ。
じゃから訓練の時にちゃんと全員に説明してやるわい、訓練の時間迄、心を落ち着かせるのじゃよ」
暁良の心情は既に見透せられていた、そして心を落ち着かせる様に言われた暁良は、
「わかりました……、そう言う事でしたら訓練の時間迄待ちます」
皆んなが集まる迄、精神統一して待つ事にしたのであった。
集合時間が近づくにつれて、他の面々が隊室に入ってきた。
皆んなは暁良がいつもより早く来ている事に少しだけ訝しむが、幻魔が来ているからだろうと勝手に納得していく。
全員が集まると一誠がゴホンッと咳払いをした。
(始まるか?)
「それでは、皆さん集まった様なので始めましょう。
先日も申し上げたとは思いますが、本日は十二聖の一人、轟鬼幻魔殿に訓練を付けて貰います」
一誠が今日の予定を告げると、幻魔が一歩前に出てきた。
「さて、儂からの訓練の前にお主達には霊血突破と言う技術を認識してもらう」
認識してもらうと言われ、暁良は覚えて貰うの間違いでは?と思ったが黙って聞く事にした。
「普段お主達がやっている身体強化は、読んで字の如くに身体をただ強化しているだけじゃ。
そして、お主達は身体部分強化も問題なくやっておるじゃろ?」
幻魔の言葉に全員が静かに頷く。
「そしてやる事は同じ、ただしその対象は血液じゃよ……。
霊気を纏った血液は体中の各器官に流れ込み、通常の身体強化とは違った爆発力を生むのじゃ」
血液に流すと聞いて、暁良試しにやって見ようとするが、思いの外、上手く出来そうな気がした。
辺りを見回すと、暁良以外も試しにやってるだろう事が想像し易い程わかりやすい顔をしている。
「この状態は霊血状態の第一段階じゃ、そしてここから血液が流れこんだ細胞一つ一つに更に霊気を溶け込ますのじゃよ」
それを聞いて、暁良と姫乃以外の全員が苦虫を噛んだ様な表情へと変わった。
しかし、暁良はそれでもまだ出来そうな感じがした。
「やはり、この中じゃと普段から霊気操作を多用する轟鬼の剣術使いの、暁良が一番センスがよいのぉ」
成る程、そう言う事かと暁良は納得した。
「まぁ、先ずは全部説明させて貰おうかのぉ……。
今の暁良の状態は第二段階じゃ、そこから通常の身体強化で全体を強化して最終段階である、霊血突破じゃよ」
それを聞いて流石の暁良も難易度の高さに眉を顰めた。
「難しいじゃろ?この繊細な霊気操作は左を向きながら右を向けと言ってる様な物じゃからな」
全員が幻魔に視線を向けて次の言葉を待った。
「そして、霊血突破は其々深度があるのじゃよ。
その深度はパーセントで言うと、1〜10%では通常の身体強化で覆った対魔師の約1.5倍の強さの差が出る」
そんなに差が出るのかと全員が驚く。
「次に10〜20%は約3倍程出力が上がり15%を超えて来ると徐々に眼が紅く染まり始めるのが特徴じゃ、この様にな」
そう言った幻魔の眼は暁良と大河が大天狗を追い詰めた時と同じ眼をしていた。
そして、それ以外にも圧倒的な存在感を放っており、普段見ていた幻魔より圧が凄いのであった。
「因みに今の儂は25%って所じゃな。
大河と暁良が大天狗に見せた力と言うのがはこの辺りじゃな」
暁良は無我夢中だったとは言え、あの時の自分はそれ程の出力を出せてた事実に驚いた。
「まぁ、話しを戻して20%〜30%は約6倍程じゃの。しかし、この辺からは自身の肉体にも消耗が始まる段階じゃ。
その消耗とは使用後の圧倒的疲労感と虚脱感等の多岐にわたる症状が出る」
大天狗を追い詰めた後の、身体が動かない感じはそう言う事だったのかと暁良は理解した。
「まぁ、その消耗も霊血突破を使いこなせればある程度抑えられる故、普段から訓練をしっかりやると良いじゃろう」
その言葉に全員が「ハイ!」と返事を返した。
「ここから先はリスクが多くなる、出来る様になったとしても気軽に使うで無いぞい。
30%〜40%は12倍程の出力となり髪の毛の色素が抜け白髪となるじゃろう。
頭髪が気になるなら使わない様にするのじゃぞ」
幻魔はフォッフォッフォッと笑いながら冗談を言ってくるが、全員はクスリともしなかったのを見て「外したかの……」と言っていた。
「次に40%〜50%は24倍の出力が出る。
そして、ここ迄来ると別の呼ばれ方をする。それは鬼人化と呼ばれる様になるのじゃ、身体的特徴は出てこないが高揚感や全能感等や優越感等の心的な変化が現れる」
全員がその話しを黙って聞く事しか出来なかった……。
「以上で霊血突破の話しは終わりじゃ」
終わりと言う幻魔に暁良は思わず聞いてしまう。
「まだ残りの%を聞いてませんが……」
暁良の疑問に他のメンバーもコクリと頷く。
「ふむ、正直な話しをするとそこから先に踏み入った者は完全に人ではなくなるのじゃと予想している。
儂も今言った%は儂個人の体験や他の十二聖の話しを聞いた上での事じゃ……」
つまりは十二聖でも、50%は超えた事が無いと言う言葉の意味とも取れた。
「仮の話しをするならば、50%を超える様になれば鬼人化と呼ばずに鬼化と呼ぶ事になると儂は思っておる」
鬼と聞いて思わず姫乃に視線を向けてしまった。
だが、姫乃は興味がないのかいつも通りの表情であった。
「ついでじゃ、確証は無いが過去に鬼化してる者には心当たりはあるぞい。
のお?茨城童子いや、姫乃よ」
幻魔は姫乃にその様に話題を振った。
「そんな事言われても……、昔の事過ぎて覚えてないわ」
姫乃は申し訳なさそうに言葉を返した。
「あぁスマぬ、別に責めてる訳じゃないんじゃ、タダお主と酒呑童子には過去に人間として生きていた伝承が多くての可能性として考えていただけじゃよ……」
「そうね、そう言う伝承が多いのは私も知っているわ。
でも、本当に昔過ぎて覚えてないから、私に話題を振られても何も答えられないわ」
二人のやり取りで場の空気が少し沈んでしまっていた。
それに耐えかねた一誠が、
「では、幻魔殿には本格的に指導して頂きましょう!せっかくの技術です、しっかり学びましょう」
場の空気を変える様に話しを誘導してくれた。
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