十幕
修正中。
幻魔と未知瑠が帰り、話し相手がいなくなった暁良は、個室に備えてあるテレビを見て時間を潰していると、部屋に誰かが入ってくる気配を感じた。
「やっほ〜元気?」
視線を向けると暁良は思わず絶句した。
そこには昨日殺し合いをした相手である茨城童子こと橋姫が立っていた。
「なっ! お前なんで……」
「あれ? 来たら不味かった?」
そんなふざけた返答をしてくる橋姫に警戒レベルを最大まで上げた。
「あっ、大丈夫だよ! 貴方達にはもう何もしないよ?」
「どう言う事だ?」
イマイチその言葉を信用できない暁良は、心意を聞いてみた。
「だって貴方が私の探し物だったしね!」
「はっ? 何を言って──」
「──あれ? もしかして自覚ないの?」
「ちょっと、何を言ってるか分からないから、詳しく頼む……」
まずは話しを聞いてみる事にした。
「説明する前に聞きたいのだけれど、昨日の事は覚えてる?」
「……戦ってる途中で意識が飛んだからハッキリとは覚えていない」
素直に答えて良いのかは判らないが、少しでも情報が欲しい為、暁良は本当の事を言う。
「そっか〜、まだ完全にくっ付いて無さそうだね」
「一体何の事だ?」
「ふ〜ん。そうなんだ……」
「俺に分かる様に話してくれ」
一人で色々と納得している橋姫に、暁良少しだけ苛立っていた。
「あぁ、ごめん。説明するね?」
「……」
「まず、私の探し物って言うのが酒呑なの。そして、その酒呑の魂が貴方の魂魄にくっ付いているのよね」
「……酒呑って」
茨城童子から出る名前で酒呑と言われている者など一人しか居ない。
それは大江山の妖達を束ねる兇悪な鬼、酒呑童子の事だろう。
「貴方を見た感じ……これは推測だけど、貴方の魂は酒呑の魂と融合しようとしてる状態なのかもね」
「融合……」
暁良の呟きにお構いなしに説明する橋姫。
「輪廻転生ってあるでしょ? 本来は魂を輪廻の輪の中で浄化し、新しい容器に入れるのだけど。その場合、容器の中に魂は絶対に一個しか詰め込まないの。──でも貴方の場合は一つの容器に複数の魂が詰め込まれた歪な状態なの。だから、貴方の魂に酒呑が張り付いてるんじゃないか? って思ったのよ」
「えっと……融合するとどうなるんだ?」
「普通なら、ちょっと魂の記憶的なのを夢で見る程度だけど、とても強い魂をもつ酒呑の場合、融合した時に肉体にも影響があるわ」
肉体にも影響があると断じる橋姫。
「肉体にも影響とか怖いわ!」
もしかしたら、あの悪夢が現実になり、自分が自分で無くなるのかも知れないと考えてしまう。
「現に、貴方が意識を失ったと思われた後、貴方は私と互角以上に戦ったわよ」
何が嬉しいのか分からないが、笑顔で語る。
「なっ! あれは夢じゃないのか?」
「貴方が夢だと思ってる理由は良く分からないけど、あの瞬間、貴方の強い感情に酒呑が力を貸したのだと思うわ」
強い感情と言われた暁良はあの時の衝動を思い出す。
──目ノ前にイル美シい女ヲ屈服サせたい!
(あの感情が俺の感情……?)
暁良は、あの時感じた感情が自分の物かもしれない事に拭いきれない恐怖を感じる。
「まぁ……色々と言ったけど、結局は貴方の魂がベースなのだから、貴方が何にも折れない強い意思を持ってれば、酒呑に呑まれないと思うよ?」
「結果的に、お前に殺される状況から助かったから結果オーライだが、今後の自分が心配になる……」
自分の未来が暗雲立ち込める事に軽い目眩を起こしそうになった。
そして、ふと疑問に思った事を続けて投げかけた。
「そう言えば、何で酒呑童子の魂何で探してるんだ?」
「ん〜、単純にまた酒呑と遊びたいなぁ〜て思っただけだよ〜? それで探してた所に酒呑の匂いが持つ尾上山近辺でしたから、あそこに拠点を構えただけだよ?」
「お、おぅ」
まさか、自分の橋姫が現れたのが自分の所為だと思ってもいなかった暁良。
「酒呑の気配はきっと、貴方が夢を見てる時に強く出て来るのかな? 私は偶に出てくる薄い気配を辿ったって事ね!」
「俺が戦闘で意識を失った事によって、酒呑童子と確信したから対応がこんなにも変わったのか?」
「……それもあるけど、貴方自身も気に入ったって言うのも理由かな〜」
「そうか……」
お気に入り宣言された事に一抹の不安を覚えてしまう。
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一通り話しに区切りが付いたので他の疑問を聞いてみた。
「ところで……昼間なのに人里に居て橋姫は問題無いのか?」
「う〜ん。まぁ、かなり力は制限されちゃうけど、一応、私は人里で暮らしてるよ?」
「はっ?」
過去に何度か人里で暮らす妖怪の話しは聞いた事あるが、こんなに強い妖怪が人里で暮らしてるとは思ってもいなかった。
「山に住んでるんじゃないのか?」
「山に住むとか嫌だよ! お風呂とかもないし! 山はあくまで拠点であって遊び場だよ! 山ガールって奴?」
こんな俗物的な妖怪がいるのか……と暁良は顔を引き攣らせた。
「因みに何処に住んでるんだ?」
「直ぐ其処のマンションだよ」
そう言って指を刺す方角を見ると、病室の窓からでも分かる建物……所謂タワマンがあった。
「……」
「何で黙るの?」
さっき迄、話してた重い会話より、今してる会話の方が、ある意味衝撃が強かった。
「ま、まぁお前の事は分かった……」
これ以上メンタルブレイクしない為、早々に話しを終わらせる事にした。
「そぉ? 今、やってるお仕事とかの話しも出来るよ?」
「い、いゃ大丈夫だ!」
これ以上、伝説級の妖怪イメージを壊されたくない暁良は、何も聞かない事にした。
「お前は今後どうするんだ? 人を襲うって言うなら、また討伐する為に戦う事になるが……」
「貴方の事気に入ったって言ったでしょ? だから貴方の為に大人しくするわ」
「でも、俺は対魔師でお前は妖怪だぞ? 何時かまた戦う事になるかもしれないぞ?」
「でも私はもう戦うつもりないよ?」
「そういう問題じゃないのでは……」
「貴方が私を裏切らないなら、もう人間を殺さないと誓っても良いよ?」
とんでもない発言をしてくる鬼である。
「……何が裏切り行為か教えてくれ」
少し考え、そう答えた。
「ん〜。それじゃ大事な場面、大事な局面で貴方が私を信じられない状況になった時、それでも私を信じてくれる?」
「……分かった約束しよう。お前も約束守れよ?」
「だったら私も貴方を決して裏切らないわ! 約束……だね!」
橋姫との、この約束は将来大事な事になる様な気がすると暁良は予感した。
「あっ! でも変な奴にナンパとかされたら半殺し位はするから〜」
笑顔で宣言されてしまった……。
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