ビニール傘と黒猫
彼らは横須賀に住んでいる設定となっていますが私自身が横須賀に住んでいなかったりそもそも行ったことが無かったりするので「あれ?ちがうぞ?こんな感じじゃない!ふざけんな」等感じる方がいると思いますが、そこらへんご容赦ください。
それでも少しでも近づけようと努力したいので、設定練り直し、調査等の為、少しだけ更新が停止します。ご容赦ください。所詮ガキが書いたゴミ話なので期待する方はいないと思いますが、運よくこの話にたどり着いた方は、是非布教していただきたいです。
長文失礼しました。(๑╹o╹)φ
さっき一週間に五回雨が降るって考えたばっかだよな?
時間の流れが速すぎて自分だけ置いて行かれたかと思った。
何度見返しても時計は四時。もう一日終わってしまったんだ。感がすごい。
みんな部活してるし、何してたんだ?俺は。
まぁいい。今日はゆっくり放課後の教室で本を読むって決めてたから。
家だと誰もいなくて逆に集中できないし、(読む気が失せる)カフェもなんか散財してる気がするしなぁ、と思っての決断だった。
数分後。雨が降り出した。マジかよ、スマホを取り出して、天気を見た。
「やったわ、これ。」
九時まで雨になっていた。しかも一時間後八ミリとかふざけてるだろ。
文庫本をぱたんと閉じて鞄にしまい、窓の外を見た。
さっきはポツポツだったのが少しづつ強くなってきている。早く帰らないとビシャビシャになる事は容易に想像できたので、教室を出て、下駄箱に向かった。
昇降口で外を見ると更に雨脚が強くなっていた。その向こう側にこちらへ歩いてくる桐岡が見えた。何で学校に帰ってきてるんだ?
少し疑問だったが、あいつは何をするかわからない奴だ。ということで片づけておいた。あと、さっきの桐岡、髪結んでたような、気が。
今日はやっぱり二日のうちじゃなかったか。五日の方だったか。と考えて歩いていると、靴に水が浸入してきた。最悪だ。今日は早く帰ろう。
そうこうして数分歩いていると、家の一本隣の道に、何やら人を発見した。
気になって少しふらっと歩いて向かってみると、そこにはずぶ濡れになっている桐岡がいた。ビニールの傘を持ちながら何やら建物を眺めている。
家……なのか。まさか、入れないんじゃ……。ふわっとした不安がよぎった。
話しかけてみるか、それで、何もなかったら何もなかったで良いし、何かあったらヘルプしよう。そう決めて、ついに話しかけた。
「あれ?もしかしてクラスの桐岡さん?」
そういうと、なぜか結んでいた髪をすごいスピードでほどいて、こちらを向いた。
「は、はい。」
「なんか、大丈夫?制服ビショビショじゃん。なんかあったの?」
「あ、あの、家の鍵を、その、どこかに、落としてしまったようで、それで、あの、親もちょっと来るの時間かかりそうかな、なんて。」
ちょっと首をかしげて俺の右下の方を向いた。
作り笑いが下手だった。完全に警戒されている。にしてもなんか濡れてる黒猫みたいでちょっとヤバい。なんかヤバい。話すのが早くなっている。
しかも声、初めて聴いた。高すぎでもなく低すぎない声。
「へぇ……ん?ヤバくね?それ、親とは連絡とったの?」
「いや、あの、取ってません。」
「じゃあさ、ちょっとウチで雨宿りしてかない?」
「え、いや、でも、親御さんに迷惑じゃないかと、その、おも……」
「今ウチに親いないんだ、どっちも仕事行っててさ、八時くらいまで帰ってこないんだ。それに、なんか家に入れない女の子を見捨てて、『はい。さよなら。』とかできないタチでさ。」
何言ってんだ俺、完全にイタい奴じゃん、早口で、なんだよ「出来ないタチ」
って。何言ってんだ。やらかしただろこれ。もう無理だ。何で苦手な人種に声かけちまったんだ。クソ、クソ、クソ。頭の中で地団駄を踏んだ。
「やましい事とか、何も無いからさ、そこで待ってても、風邪ひくだけだぜ?クラスには、毎日全員が揃ってて欲しいからさ。」
自分で考えてもないことが勝手に喉から出ていく。
完璧に心を(自ら)えぐられた俺は、回答を待った。
人形みたいな少女を前にして。
その少女はこちらにガラス細工のような目を向けて深呼吸して言った。
「少しの間。よろしくお願いします。」
待て待て待て待て待て待て待て待て、落ち着け。
深呼吸をした。ふぅ。今何が起こってる?
さっきから俺の頭は機能していないようだった。
考えろ考えろ。さっき宜しくって言われて?そこから家上げて?タオル持たせて?階段上がってきたと。それで今自分の部屋の机の前にいると。
自分でも理解できなかった。何で、輝いて見えている桐岡がいて?何で宜しくなんていったんだ?……考えれば考えるほど心拍数が上がっていき、雨も次第に強くなってきている気がする。ほんとにこの家に?しかも風呂場に?桐岡がいるのか?完全に参ってしまった。どうしようどうしようどうしようどうしよう。あぁ、そうか、まずは服出しといたほうがいいな。やっとのことでその答えを導き出した。
爆速で制服を脱いであまり変じゃない長袖に着替えた。
それで?俺の服でいいのか?なんか、やっぱちょいブカブカ目の方がいいよな。いいよな。いいんだよな?冷や汗を流しながら服を選んだ。
これ、この服を、桐岡が……。いや、だめだ、そんなことを考えては。
こんな時でも良心はしっかりと機能すると知った。(もうすでにバグってる。)
螺旋階段を降りて洗面所の扉を開けた。
シャワーの音がする。よかった。この状況で風呂から出てたら人生終了のお知らせが聞こえてたはずだ。胸を撫で下ろす暇もなくそこらへんに、しかし出来るだけ風呂から遠いところに服を置いた。
やった。爆速で洗面所から出てきた。扉を閉めた。扉の向こう側でぱたんと、風呂から出てきた音を聞いた。間一髪。扉のこちら側で俺の心臓は、向こう側に聞こえてしまうぐらいに鼓動していた。
死ぬ。このままだと俺死ぬ。緊張で俺死ぬ。出てきたとこであと数時間、運が良くても一時間以上。桐岡とふたりで家にいるなんて、マジで死ぬ。
話すことないし、何したらいいんだ?俺は。
そこでキッチンに置きっぱなしになっていたスマホを取り出して「女子と気まずいとき する事」と打ち込んだ。
いつも円なんて見えないのに、二回、円が回った後に検索結果が出てきた。
とりあえず、「好きな人と」っていうのは避けて、適当にサイトを開いた。
『気まずさを気にせず黙ってみる』
そんなことできるかよ。逆に気まずくなるだけじゃないか。
『気まずい雰囲気から堂々と逃げてみる』
逃げれないんだわ。
『失敗談で乗り切る』
まあこれはありかもしれん。
『おいしい食事を用意』
美味しいって感じるものってなんだ?でも、食事はさすがに出せないし、いや、時間によるか。今は、コーヒーでも出すか。あれなら誰でも飲める?
か?まあいいや。判断を間違った気がしなくもないが次を見た。
『可愛い動物の動画を観る』
いや、それこそ「あ、この人話すことないんだぁ」って思われるだけじゃないか。クソ、他に何かないのか。
そうこう考えているうちに、桐岡が出てきた。マジか。慌てて反射神経でスマホを伏せた。
桐岡が髪を結んでいた。マジか。マジか。俺を殺す気なのか。そうか。
風呂上がりで少し頬を赤くして俺の服を着ている。何で俺が着ている時と全然違うんだよ、あの服。そんなにあいつがいいのか。クソ。
何にもはなすことが無くて辛いとき、(ここまで三秒)思いついた。
あ、あ、そうだ。服のサイズを聞こう。
「その服、サイズ大丈夫?」
「はい、ありがとうございます。」
「なんか、あったかい飲み物いる?コーヒーとか。」
口が独り歩きしている。まぁ、でもさっきの美味しい料理を用意。は達成できそうだ。
「じゃあ、コーヒーを。」
桐岡が服を抱えていることに気が付いて、慌てていった。
「うっす。あと、服貸して。洗濯する。」
ここでも喋ったことに後悔。常に後悔。
さっさと二階に行って、さっさと洗濯きを回した。
「三十分か、終わるの。」
これで、三十分間桐岡と一緒にいなければいけない事が確定した。
全ての俺の行動に後悔した。
またさっさとさっき来た道を引き返して、キッチンに移動した。
棚からコーヒーを出した。桐岡が飲めない口だと悪いから、甘い雰囲気であまり濃くないのにしよう。親父に感謝した。こんな気遣いができるようになるなんて、俺感動したよ。
濃くならないようにささっと入れて、持って行った。
桐岡がスマホをいじっていた。
親と連絡取れたのかな、
「お母さんとは連絡取れた?」
また口が勝手に動き出した。
「はい、七時半位には、着くようです。よろしくお願いします。」
「今日九時ぐらいまで雨だから、全然いいよ。はい、コーヒー。なんか入れる?」
「じゃあ、ミルクを。」
「うぃ。」
マジか、絶望した。いま五時やぞ。二時間て、あぁ、絶望。
ミルクの容器を出して、気づいた。こいつ飲めるのかよ。
ミルクだけって、俺の気遣いが、台無しじゃねえか。
意地を張って俺はブラックで飲んだ。さっきからマジで気まずい空気が流れている。
なんかしゃべらないといけない。そんな使命感からか、俺が思ってもいなかったことが、でも過去に望んでいたことが、口から零れた。
「あ、あのさ。ちょっと頼みたい事があるんだけど。」
「?」
「ちょっとメイクしてみてくんない?」
何言ってんだ。今日一番やってしまったと思った。
さっきまですました顔でコーヒーを飲んでいた桐岡が、派手にむせた。
「ごべんなざい。」
あぁ、ふられたか。
「コーヒーこぼしてしまって。」
倒置法?を使ってしゃべる人を久しぶりに見た。
ティッシュを差し出しながら、めっちゃ顔が赤くなるのを感じた。
耳まで多分赤くなっていたと思う。ゴミ袋を差し出して、またさっきのダイニングテーブルに座って黙った。もう何も言うな、俺。自分に暗示をかけた。
そこで、
「さっきの、良いですよ。」
と正面から言葉がかえって来た。
「え、え、ほんとに?あの、嫌だったら……。」
「いえ、別に嫌ではないです。ただ、さっきはびっくりしてしまって。」
何だ、神イベか。俺の人生運営ありがとう。まさか、桐岡の、が、見れるなんて、あぁマジか。
「でも化粧をするものが」
「あぁ、それなら、さっきの洗面所に死ぬほどある。母さんが化粧品の会社いるんだけど、それで、なんかいっぱい使ったことないのが、棚にある。」
「ふうん、あと、ドライヤー。」
「あ、それは、入って右の一番上の扉。」
「ありがと。」
去っていった。ああああああああああああぁ。マジで疲れる。今日初対面だし。ああああああああ。
そんな時、ふと思いついた。ラインを開いて、
「今日何時に帰ってくる?」
と父に聞いた。
「今日は少し早く帰れそうで、六時くらいか?」
「六時?」
「どうした?まさか……」
「いや、別に、そんなことではなくて、ちょっと気になっただけ。」
「いつも聞いてこないお前が聞いてくるとは、そういう事なんだろう。今日は、父さんと母さんは、どっかで食事をしてから帰ろうかな。何時くらいまで時間をつぶせばいい?」
なんでこんな時に勘がいいんだあの親父。まぁでも、少し時間が出来るならいいや。
「八時くらいまで。」
「いいぞ、息子よ、頑張りたまえ。お前、料理が得意だろう。腕を振るってうまいもん食らわせろよ?出来たら写真でも送ってこいよ。」
いつも使わない口調を使って、今日は特別機嫌がいいようだ。
でも、まぁ、親が帰ってこなくなって良かった。父にはバレたけど、まぁ
母には言わないだろう。言わないでくれ。頼む。心の中で祈った。
さて、空いた時間を何に使うか。父のラインを見返した。
『腕を振るってうまいもん食らわせろよ?』
そうか。八時までいないのか、ならいいか。と考えた。
問題は次だった。
『出来たら写真でも送ってこいよ。』
デキタラシャシンデモオクッテコイヨ?頭の中が再びパニックになった。マジか。何考えてんだあの親父。
腹の中かがふつふつ煮えてきているのを感じながらも、二階に行って防湿庫から愛用のカメラを取り出した。
階段を降りて、ストっと机の上に置いた。
?……。??…。???????????
「え何してんの俺?」
自分で持ってきたはずなのに急激に驚いた。
撮ろうとしてたのか?桐岡を?そんなアホな。でも少し撮ってみたいかもしれない。桐岡を。
カメラはそのまんま放置しておいて、冷蔵庫の中を見た。
ソース・ソース・ソース・ソース・卵・トマト・キャベツ・玉ねぎ・しめじ・牛肉?・その他ふつうの冷蔵庫の中身。
これで何作れってんだよ。まじで。その時、携帯が震えた。
母さんからラインが来た。
「あんたも大人になったわねー!ちゃんと紳士に行動するのよ?もし、ハメを外すようなことがあったら、タンスの三段目にあるから。あと、今日の夕食、ビーフストロガノフのはずだったけれど、お肉が傷んじゃうから二人で食べなさいよぉ?がんばれ!」
こいつもか。こいつもそうなのか。クソ。爆速でバラされたじゃねえか。クソ親父、覚えてろよ。なんだよ、気が利くと思ったのに。裏切られた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
長い溜息をついた。
桐岡がやってきたのはそのすぐ数分後。ちょうど俺が玉ねぎを切り終わったころだった。
次回、五月十七日にまたいらして下さい!
五月あたりに修学旅行に行くらしいのでそこでは頭いい友達と短編作ろう!と思ってます。
乞うご期待!!