六本目 妖精剣マグナフィリア
六本目 妖精剣マグナフィリア
ずっときみと一緒。
わたしたちの大切なともだち。
紀元千七百五十一年に、カラハン大陸に存在する妖精の森にフローラという名の少女が迷い込んだ。
迷い込んだ者は妖精に食べられてしまうという話を聞いていたフローラは泣き叫んだが、助けは来なかった。
森から出ようとすると、更に深い所へと進んでしまい、気が付けば彼女は満をも超える妖精たちに囲まれていた。
その土地の妖精は全体的に淡い光を放つ小さな人形のようであった。
聞いていた話からは想像もできないほど愛らしい姿に、フローラはすっかり気を許し、しばらく共に遊んでいた。
フローラはお腹が空いてきたので帰ろうとすると、妖精たちは甘いお菓子を大量に生み出し、フローラを引き留めた。
フローラは両親が恋しくなったため、妖精たちは彼女を引き留めるために彼女の両親を造ろうとしたが、それは出来なかった。
ようやく彼女が帰るとなったとき、妖精たちは一本の短剣をフローラに渡した。
その剣こそが妖精剣マグナフィリアである。
彼女が森を出ると、外では既に六十年が経過していた。
混乱したフローラが妖精剣マグナフィリアを握ると、瞬く間に姿が変わり、フローラは二十代半ばほどの美しい女性へとなった。
その後彼女は妖精剣マグナフィリアの力を存分に使い、莫大な富や名声を手に入れた。
ここまでが彼女が晩年執筆した『妖精と時』に書かれている内容である。
フローラは森を出た後、百五十年以上生き続け、紀元千九百六十四年にその波乱万丈な生涯を終えた。
妖精剣マグナフィリアは彼女の墓に遺骨と共に納められたが、紀元二千年頃に盗掘されてしまった。
この剣は流れに流れて、今ではさる好事家の宝物庫に保管されている。
2021/10/07 加筆修正