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千の魔剣の物語  作者: 名も無き魔剣の所持者
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三十一本目 虚凪剣カレン / 三十二本目 夕凪剣ペラシール / 三十三本目 朝凪剣セナ


あけましておめでとうございます。

三十一本目 虚凪剣カレン / 三十二本目 夕凪剣ペラシール / 三十三本目 朝凪剣セナ




 にへら、と君が相好を崩す。


 やっと、君を守ることができた。


 だから、これからもずっと隣に居させてくれないか。




 一対多の戦闘において、また護衛の戦闘において、グランフェリス流以上に優れた剣術は現在存在しないと断言できる。


 常に三本目の剣を戦闘の選択肢に組み込む特殊なこの流派は、紀元四千二百年前後に無朗の剣士、グラムによって編み出された。


 彼の生涯は数々の謎に包まれているが、ここでは彼()が虚凪剣カレン、朝凪剣ベラシール、夕凪剣セナを生んだ経緯について語ろう。




 剣士グラムには三人の大切な友人がいた。


 親友、あるいは幼なじみとも呼ぶべき存在だ。


 剣士グラムーその時点では剣士ではなかったーと二人の友人は剣を執った。


 お互いを、そして何よりも大切な一人の少女を守るために。


 ヤシャツミ王国第十六王女、王位継承権は繰り上がって第一位。王は不在、故にいつでも王を名乗ることができる少女。カレン・ヤシャツミ。


 それが少女の名と、小さな肩にのしかかる肩書きだった。




 ヤシャツミ王国は紀元二千六百九十年に、中央大陸を席巻したモルディアス帝国軍によって滅ぼされた。


 三年前から国外を巡っていたカレンらはその難を逃れたが、竜翼の虐殺を引き起こした帝国軍師カナタの容赦ない追撃に曝され、二十人はいた供回りも、カレン、グラム、べラシール、セナを残して皆死んだ。


 彼らは潜伏を余儀なくされた。


 王国騎士として剣術を修めていたベラシールと共に、グラムと侍女のセナはカレンを守るために剣を執った。


 彼らは逃避行中に優秀な師に付いたのだろう(そしてその師は晴朗流の始祖であり指名英雄でもある、教戒のニヒラだと推測される)。


 剣の腕は瞬く間に上達し、更にはカレンを守ることに特化した連携まで出来るようになった。


 一騎当千とまではいかないものの、一人で百人の騎士を相手にしても勝ち越せるようになった。


 三人で協力すれば千人を相手にまともに立ち回れるようになった。


 そこまでの異常な強さを手に入れたのにはいくつかの理由が推定されるが、最も大きかったのは、やはり彼らの背後にいた守るべき存在だろう。


 グランフェリス流の八の掟、其の八にある通り、『人は何かを守るときに一番強くなれる』のだ。




 三騎当千、しかし十万人には敵うまい。


 カレン一行が中央大陸を脱出する直前に、帝国軍師カナタは十万人の兵を動員してカレン一行を包囲し、決戦が始まった。




 戦いは十日間の昼夜に渡って行われたため、十日間戦争と呼ばれている。


 まず初めに三人の中で最も体力が低かったセナが脱落した。


 彼女は最期に上級騎士二十七人を道連れにして散った。


 開戦から丸三日が経過していた。


 八日目にベラシールがグラムを庇って左腕を失った。


 出血に耐えられないと判断した彼は、軍師カナタの元へ単独で肉薄し、終にその刃をカナタへ届かせることなく果てた。


 残り約三メートルであった。


 残されたグラムは、セナとベラシールの遺志を継ぎ、彼らの剣を使って戦い続けた。


 十日目の日没寸前、ようやく帝国軍が撤退を始めた。


 ここに、十日間戦争は幕を下ろした。




 帝国に残った資料によると、十日間戦争による死者は三万七千二百十名、重傷者は六万二千六百二十八名、軽傷者は零人であったという。無傷であったのは、軍師カナタ含めたったの六十三名であった。


 帝国史上最悪とも言われるこの戦争の戦果は僅か三人だった。




 帝国軍の撤退を見届けたグラムは敬愛する主の元へ訪れ、声を掛けた。


 カレンから返事が返ってくることはなかった。


 彼女はもう、事切れていた。




 カレンの遺体には傷一つ無かった。




 セナが握っていた剣は魔剣となり、夕凪剣セナと名付けられた。


 ベラシールが握っていた剣は魔剣となり、朝凪剣ペラシールと名付けられた。


 凪のような平和な場所を夢見た彼らの願いが、ただの剣を魔剣へと変えた。


 グラムが握っていた剣は魔剣となり、虚凪剣カレンと名付けられた。


 グラムから溢れ出た後悔と無念とカレンの悲哀と苦痛が、ただの剣を魔剣へと変えた。




 三本の魔剣を携えサイギルド大陸へと渡ったグラムはグランフェリス流を開いた。


 彼のような無念を抱える人を一人でも少なくすることが、彼の生涯の目標となった。




 三本の魔剣の能力は、絶対に勝たなければならない戦い、それも誰かを守るための戦いにおいて、守る相手が生きてさえいれば、使用者が力尽きてもなお、戦い続けることが出来るようになるというものである。


 この能力は三本が揃っていて初めて発揮される。


 現在虚凪剣カレン、夕凪剣ペラシール、朝凪剣セナの三本は、サイギルド大陸にあるグランフェリス流の本道場に保管されている。




 以上が一対多で守ることに特化した剣術、グランフェリス流の始まりの歴史、そして虚凪剣カレン、夕凪剣ペラシール、朝凪剣セナが生まれた経緯である。



カレンの死因は心身の衰弱でした

十日間に渡る三人の親友の戦いと、その内二人の死はカレンの心を摩耗させ、三年の逃亡生活もあって、彼女は限界を迎えてしまいました

元々彼女は身体が弱かったのもあります

だから彼女は剣を執れませんでした

三人が執らせなかったという理由もありますが


グランフェリス流が三本の剣を使うのは、十日間戦争の終盤にグラムが二本の魔剣と一本の剣を駆使して戦い、戦いの中で編み出した剣術であるためです


カナタの近くにあったはずのベラシールの剣を、グラムが持っていたのは、魔剣だと見抜いたカナタが自身の親衛隊長に持たせて戦わせたからです

帝国随一の腕であったはずの親衛隊長が魔剣をもってしても、カレンを守るグラムには勝てませんでした


重傷者の数が多いのは、敵の数を効率よく減らすためです

一人重傷者を出せば、その救助に一人か二人は必要なので

逆に軽傷者が零なのは、三人が強すぎて一度斬れば確実に重傷または致命傷を与えたためです


三人の師が教戒のニヒラだと推測される理由は、グランフェリス流で使われる技の一部が全く同じであるからです

彼についてもいつか書きます


騎士でも従者でもないグラムがカレン一行に加わった理由は秘密です

彼の心情を察してください



以上、本編に入れられなかった補足でした。

ちなみに作者はカナタ君が結構お気に入りです。

彼も魔剣持ちなので次に書くかも。



読んでくださりありがとうございました。


→三十四本目

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