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千の魔剣の物語  作者: 名も無き魔剣の所持者
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二十八本目 代償剣エトルリア / 二十九本目 飛翔剣ラインラント

二十八本目 代償剣エトルリア / 二十九本目 飛翔剣ラインラント


 何を犠牲にしたって叶えたい願いがあった。

 しかし、どれだけ手を伸ばしても、どれだけ身を削ってもソレには届かなかった。

 それでも彼女は挑み続けた。

 ソレを超えるために。

 そして、その先の――




 代償剣エトルリアは使用者の一部を代償に、力を手に入れることが出来る魔剣である、

 得られる力の大きさは、代償にした部分の大きさ、重要さによって異なることが知られている。

 とある研究記録によると、爪を代償にすれば、数分間願った力が二倍になり、片手を代償にすれば約十倍。腕を代償にすれば百倍以上もの力を手に入れることが出来たらしい。

 だが、当然代償にした部分は別次元へと転送されたかのように瞬時に消滅し、壮絶な痛みが使用者を襲った。代償剣エトルリアは、単体では到底実用に耐えない剣であった。

 そこで均衡塔は紀元三千二百年に、代償剣エトルリアを手放そうとしたのだが、同時期に再生剣ケルトファルトが発見されたため、指名英雄は両装備を頻繁に使用するようになった。


 代償剣エトルリアは、紀元五千九百二十三年からカラハン大陸を三十年間に渡って覆った災害『明けない夜』の討伐作戦中に、怯懦のエレと共に永久に失われてしまった。


 紀元三千七百五十年代に、指名英雄ラヴヘィルは代償剣エトルリア及び再生剣ケルトファルト、更に個人的に所有していた飛翔剣ラインラントを使用し、指名英雄としても、また()()最速としても名を残した。

 彼女には一つの願いがあった。

 世界で一番速く飛びたい。

 鳥よりも、風よりも、音よりも、そして光よりも。

 そのためだけに彼女は指名英雄となり、代償剣を得た。

 彼女はまず、脚を代償にした。飛翔剣ラインラントに掴まって飛ぶために、脚は必要なかったから。

 飛翔剣ラインラントだけ使用した場合では、最大秒速二十三メートルだったのが、脚を代償にすれば秒速二千メートルを突破した。

 彼女は生身で音を遥かに超えることに成功した。

 だが、それでも光には到底届かなかった。


 次に彼女は腕と脚を代償にした。飛翔剣ラインラントに身体を乗せるのに腕は必要なかったから。

 そして、彼女は秒速二万メートルを突破した。

 だが、それでも光には届かなかった。


 だから彼女は身体を全て代償にした。

 頭さえあれば——眼と、脳さえあれば、光よりも先の世界を見ることが出来るから。

 そして、彼女は秒速二十万メートルを突破し、而してなお、光を超えることは叶わなかった。

 再生の痛みで彼女はショック死寸前に陥った。


 しかし、それでもなお彼女は挑み続けた。

 彼女に代償にできるものは、もう精神(こころ)しか残っていなかった。

 だから彼女は、ラヴヘィルは躊躇なく精神を代償に捧げた。


 きっと彼女は光を超えたのだろう。

 だが、飛翔剣ラインラントは消滅し、同時にラヴヘィルも姿を消した。

 光の先の世界で、彼女は一体何を見たのだろう。


飛翔剣ラインラントには使用者を保護する機能があるので、秒速二十万メートルで移動しても搭乗者の頭がつぶれたりすることはありません。

ラヴヘィルが頭だけになっても死ななかったのは、彼女の異常な生命力によるものです。あるいは、執念と言い換えてもいいかもしれません。

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