二十七本目 永遠剣セツナ
二十七本目 永遠剣セツナ
貴方は私で私は貴方。
一人きりで世界の果てへ堕ちていきましょう。
永遠剣セツナは災害『嗤う聖焔』を発生させたとみられている剣である。
紀元前七百三年、中央大陸の南部にて、災害『嗤う聖焔』が発生した。
燃焼とは詰まる所ただの酸化現象である。
しかし、『嗤う聖焔』は焔と名の付くものの、物質的な燃焼、山火事のような災害ではない。
『嗤う聖焔』は青白い焔のように見えるが、実際はそこに熱はない。
地面を這うように焔が広がっていくが、地面には焦げ跡一つない。
ただ、触れた人間の精神のみを燃焼させる効果を持つ。
焔に触れた人間は三秒以内に全身を焔に包まれ、約一分の燃焼後、見かけは一切の外傷はないモノが現れる。
彼は完全に精神を焼き尽くされており、どのような治療を施しても決して再び立ち上がることはなかった。
人を動かすのは精神である。それ以外にはあり得ない。
『嗤う聖焔』は三百六十一ペクトグリム(現在の共通単位では約八千ヘクタール)まで延焼し、二千人余りの犠牲者が出たという記録が残っている。
次ような御伽噺が南部地方の寒村に伝わっている。
一人の女性が永遠を望んだ。
けれど永遠なんて何処にもなくて、在るとすればそれは世界の果てにしかなくて。
故に彼女は嗤って停滞を選んだのだ、と。
災害『嗤う聖焔』は発生後二十日で自然に鎮火した。
発火元にて、永遠剣セツナと身元不明の女性の遺体が発見されたことをここに記しておく。
→二十六本目




