十九本目 宵闇剣イウナ
十九本目 宵闇剣イウナ
宵闇は全てを包み込む。
地上に在るものは全て宵闇の前には無力である。
宵闇剣イウナは、紀元五千九百二十三年からカラハン大陸を三十年間に渡って覆った災害『明けない夜』をもたらした剣である。
あるいは神が人類を滅ぼすために遣わした剣とも言われる宵闇剣イウナは、ある日突如として天より降ってきた。
曰く、その剣の身は闇という概念そのものであったとか。
闇は古来より人の心を蝕んできた。
文明が発達し、技術が進歩した結果、明かりを自由に操れるようになった我々にも、その恐怖が本能に刷り込まれていたのだろう。
侵食する闇に人々は逃げ惑い、大陸より脱出しようとする過程で七つの国が滅び、数千の人が命を落とした。
宵闇剣の侵食を重く見た均衡塔は、認定英雄を七名派遣し、事態の収拾を図った。しかし、七名の認定英雄の内、怯懦のエレ、悲嘆のエマルーレ、百爛のトゥインスの三名が命を落とし、呪怨のガルバルディが再起不能になるという大損害を出した。更に取り返しの付かないことに、調停剣ユスティルカ及び代償剣エトルリアが永久に失われてしまった。
均衡塔はそれだけの犠牲を払ってようやく、災害『明けない夜』はカラハン大陸のみに押し留めることに成功した。
以来、世界情勢は混乱に陥り、暗黒時代が幕を開けた。
認定英雄に二つ名が付くようになったのは、五十六世紀前半からです。
きっかけとなる剣はいつか出てくるかもしれません。
→二十本目




