九本目 裁断剣ケフリート
九本目 裁断剣ケフリート
来歴不明。
どんな事件に対しても、正しい裁定を下す剣。悪と見定めた者を、使用者を操り罰を与える。
しかし、剣に込められた正しさとは、紀元三千六十七年カラハン大陸に成立したサラーフ王国での価値観であり、近代にはそぐわないものである。
およそ百年ほど前、中央大陸南東の聖ユラシル共和国で使用されたという記録が残っているが、その結果は惨憺たるものであった。
裁判官に弁護人、告訴人の全てを殺し、そのまま片っ端から人を殺そうとしたところで使用者が銃殺された。それが裁断剣ケフリートにとってもの正しさであったのだろう。
一体彼の国でどのような価値観が用いられていたのか非常に興味深いが、残念なことにサラーフ王国を滅ぼしたアイバク王国が徹底的に史跡を破壊した為、その断片やその他の地に残された記録より察する他ない。
アイバク王国の記述に依れば、残虐な国民性であったらしいが、何分勝者の記録なので、信憑性に欠けている。
しかし、三十一世紀末の旅行家イブン=カルトの旅行記『十大陸周遊記』に依ってその可能性は補強される。彼がサラーフ王国への入国時、殺されても文句は言わない、というような類の書類にサインを求められたらしい。その時点で彼は入国を諦めたのだが、これを読めば少しはアイバク王国に依る記述の信憑性は増すと言える。
新しい資料が発見されれば何らかの新事実がわかるかもしれないが、それが私の命が尽きる前に発見されることは期待できない。




