鬼に金棒
年々、自然災害は進化している。
雨の量が増えたし、風は強くなったし、やけどしそうなほど気温も高くなった。
では、古来より人類を畏怖させてきた雷は、どのような進化を遂げたのだろうか?
「お父さん、雷が鳴っているよ。こわいよ」
「なに、気にすることはない。人間に落ちる確率は極めて低いのだ」
「お父さん、でもここは広野で、あたりにはなにもないよ」
「心配するな。かがんでいればなんとかなるさ」
「お父さん、雷がだんだん近づいてきたよ」
「ううん。だいじょうぶだ」
「ぎゃっ。すぐ側に落ちたよ。次はぼくたちかもしれないよ」
「……」
「……」
「……遠ざかっていくな」
「お父さん、もう大丈夫かな」
「ああ、もう心配いらな――」
どーん。
雷はフェイントを覚えた。