おじさんは自らの弱さを自覚する
バリッシュにケープの治療を任せ、私はケルピーの召喚主であるハイドを探しに行く。
ケープから非常に面白い話を聞けたので今からハイドに会うのが楽しみでしょうがない。
ハイドがどこにいるのか、何人かに聞いて回った結果。サラマンダーが召喚主のケープを襲った日以降、精力的に見回りに出ているらしい。
本人は怪我をしたケープの分まで頑張ると言っていたらしいが。聞くところによればケープの容体は気にしても見舞いには行っていないらしい。
そして今日もまた見回りに出ているらしく、非常に仕事熱心な様子。それを邪魔してはならないと私は彼が戻ってくるのを門の前で待つことにした。
そろそろ日が暮れようかという頃に、ようやくハイドとその部下の一団が戻ってきた。
誰もが疲労困憊の様子だが、一人だけ私を見て顔色を変えた。おそらく、彼がハイド・ロス・タックだろう。
勿論、顔色が変わった程度で私のやることは変わりない。
「皆さま、お疲れさまでした。その努力、献身に私は敬意を表します。ところで、そちらにおられるのはハイド・ロス・タック様はおられますか? 少々お話を伺いたいのですが」
「すまないが、疲れているので」
「そのようなことを仰らず。朗報ですよ、ご友人のケープ・ラス・リッター様がお目覚めになられました。起きた直後は多少混乱しておりましたが、今は意識もはっきりしており記憶の損失なども一切ございません」
周りのハイドの部下たちはきな臭さを感じてだろうか、早々にその場から逃げ出した。
そして残るのはケープが目覚めたと聞いて足を止めてしまったハイドのみ。
「お話、聞かせて頂けますよね?」
私の友人に何をしてくれたのか。
逃がす気は一切ない。どんな言い訳を言おうが、ここから去る口実を考えようが全てを叩き潰して聞かせてもらう。言葉を用いる限り私が負けることはない。
そう、言葉を用いる限りは。
「は?」
ハイドは素早く枝、いや杖を取り出すと私の膝に向けて高速の水の球を放ち、倒れかけた私が手を着くと今度は目の前に杖があり。
スパンと心地よい程高い音と共に水の球が私の額を打ち抜き意識を奪った。
「……ダチ、トモダチ!」
誰かに揺すられ目を覚ました。そして目に飛び込んできたのはグレイの顔。
うん、中々に衝撃的だ。おかげで目が覚めた。
「グレイ? ああ、ううん。足が痛い? 頭が痛い? 二日酔い、ではないな」
「二日酔いでこんなところで倒れていたらボクだって助けないよ」
こんなところ? と周りを見回してすっかり日が暮れていることと、門前であることに気付いた。
それと同時にここで倒れていた理由を思い出した。
「ハイド、ハイドはどこだ? 私に魔法を」
「ああ、やっぱり。馬鹿なことを……。トモダチ、今砦内が大変な騒ぎになっているんだ。早く起きてリリーナの所に行ってくれない?」
「砦内が大変?」
一体何があったのか、詳しく話を聞きたかったが道中ではグレイに叱られて過ごした。
トモダチは弱いのだからと、護衛を付けないで歩くのは危険だと、魔物一匹倒せないでしょ、と。
全くもってその通り。否定のしようもなく過剰に心配させたとただひたすらに謝るしかなかった。
確かに、ここ最近は少し緩んでいたかもしれない。念願の米が手に入ったことや、リリーナとの関係を改善できたことで。
この世界は私には厳しい世界なのだ。それをすっかり忘れていた。
心配をかけてすまない、と謝ればそれは今から会う人に取っておいてと言われた。
今から会う人? と首を傾げていればある部屋に案内された。そこは開拓団の砦の中で最も偉い人がいる部屋。つまりそこにいたのは。
「おじさん! 見つかって良かった。心配したんですよ」
リリーナだ。随分と心配をかけてしまったようだ。
王都への報告書を仕上げ、王都に人をやった後にケープの下へ向かえばすでにそこに私はおらず行方不明。更に今回の一件の元凶であるハイドの行方も知れず。なので砦内にいる人全員を使って私とハイドを捜索していたらしい。
ああ、なるほど。確かに大変な騒ぎだ。ハイドの部下たちは私がどこで倒れているのか察していただろうが、下手に関わらないように何も言わなかったのだろうな。
とりあえずこの騒ぎを止め……。ハイドはまだ見つかっていないのか?
「はい。砦内をくまなく探させていますが発見の報告はまだ……。それで、おじさんはどこに? 門前? 何故?」
ああ、うん。ハイドよ。私は君の暴力の被害者であり、君にある程度の恨みはある。だが、今だけは君が逃げ切れることを祈っておこう。
このリリーナに見つかったらタダでは済まないと思うぞ。




