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おじさんは戻って早々に謝罪に向かう

 サラマンダーが召喚主であるケープを攻撃し負傷させ、拘束中。

 その報告を聞いた直後、あまりの衝撃に倒れたくなった。


 何があったのか、おおよそ想像は出来る。私の記憶にある限りケープはサラマンダーを取り返そうとしていた。無理矢理、もしくは長時間説得などをしていてそれに怒ったサラマンダーが攻撃。怪我をさせた。


 獣人の国に向かう前に相談を受けていた。仲違いした召喚主とどうやって関係を修復したのか。その方法があるなら是非とも教えてほしいと。

 私はそれに答えられなかった。答えを知らないから。関係修復のために努力したのはリリーナだ。

 しかし知らないと無慈悲に切り捨てられるわけもなく、出来る限り話を聞こうとはしていた。


 獣人の国に行く際も関係修繕の意思があったため、そこまで大きな問題を起こさないだろうと思い向かったのだが。


「とりあえずは怪我をしたケープに謝罪と事情を聞きたい。その後にサラマンダーの言い分を聞いて。和解できるように妥協点を探る必要がある。ううむ、これを放置して中央には戻れない」


 サラマンダー暴走の責任はサラマンダーを護衛として雇ったこちらにある。どのような事情があれ、怪我をさせた以上謝罪は必要。

 ただ困ったことにケープは貴族でサラマンダーの召喚主。一般人などであれば金を積んで早期和解が見込めたが、貴族で召喚主となれば拗れることは確実。

 まずは謝罪に向かわないと。対応策は事情を聞いてから考えれば良い。


「おじさん、私も付いていきましょうか?」


「いや、サラマンダーを連れて行くように考えたのは私だ。私が責任を持って謝って来よう」


「ならばホンドー殿。私の力はいりませんか? コハク殿にいくつか魔法を教える代わりに回復魔法を教わっております。完全に治せるかは分かりませんが、多少は役に立つかと」


「バリッシュさん、本当で? それはありがたい。リリーナは獣人の国の一件を王都に報告しておくように。向こうから返事が来る前にこっちの問題は解決しておくから」


 勿論そんな当てはない。しかし心配そうにこちらを見ているリリーナをそのままには出来るはずもない。

 この程度何でもないと虚勢を張ることでリリーナを落ち着けてから、バリッシュと共に医務室にいるケープの下へ向かう。




 医務室はやはり開拓の最前線と言うこともあり、砦内の他の施設に比べれば充実していた。

 それは同時にここの利用者がそれだけ多い証でもあり、少なからずベッドで横になっている者はいる。

 そこで一つ問題が発生した。


「ケープってどいつだ?」


 顔を見たことはある。砦に来た時、学院にいた時ももしかしたら顔を見たことがあるかもしれない。

 しかし、その時はほとんど接点がなかった。仕事柄顔を覚えるのは得意だが、それは相手の顔を覚えようと思った時の話。付き合いなどないと考えていた人の顔まで覚えておけるほど頭に空きの容量はない。


 幸い医師がいたので直接尋ねる。


「ケープ? ああ、彼なら隅の仕切られているところにいるよ。ただ火傷が酷くてね、まだ目覚めていないしずっとうなされるんだ。話は出来ないと思うよ」


「切り傷、擦り傷は治せましたが、火傷は試しておりません。治る保証はありませんが」


「まずはやってみましょう? 治れば良し、治らなければ回復魔法について知れて良し、ということで」


 どっちにしろ得はある。と言うとバリッシュは笑顔でそうですな、と頷いてくれた。

 そしてケープの様子を見に行くと、医師まで一緒に付いてきた。どうやら回復魔法が聞こえてしまったようだ。


 回復魔法についてはバリッシュのものなのでバリッシュが拒否すれば医師に戻ってもらったが、特に気にした様子はなく、医師に何もせずにケープの下へ到着する。


「……結構酷いな」


 仕切りの奥には腕から肩へ、そして顔半分が火傷でただれているケープがいた。

 命に係わる大規模な火傷。これは謝罪だけでは済まないかもしれない。


「ではバリッシュさん、お願いします」


「任されよう」


 バリッシュは両手を胸の前に置き、目を瞑って集中する様子を見せると両手がほのかに光り始め、その両手をゆっくりとケープの顔へと近づける。


「おおっ!」


 目の前の光景に医師は嬉しそうな声を上げるが、私からすればあまり見たくない光景だ。

 ただれた皮膚が剥がれ落ち、その下にはすでに新たな皮膚がある。ただれた皮膚のぼとぼとと落ちていく様は見ていて気持ちの良いものではない。

 医師は反対に新しい皮膚とただれた皮膚の両方に興味津々のようだが。


「……ふぅ。初めてでしたので緊張しましたが、大体のコツは掴めました。今度は一気に出来そうです」


 顔から首の辺りまでをゆっくりと治し、そこで一度バリッシュは休憩を取った。単に集中が切れただけで魔力的にも体力的にも問題ないらしく、少し休めばすぐに再開すると言う。

 休憩の間に医師にケープを見てもらう。もしかしたら治される側が体力の消耗があったり、治した部分に何か問題があったりする可能性があったからだ。


 医師はバリッシュの回復魔法に非常に興味をそそられているようではあったが、優先されるのは興味よりも職務。名残惜しそうにケープの具合を見てくれている。


「どうでしたか、ホンドー殿。回復魔法は。実はこの魔法を使った際に筋肉の成長を促進させるのか、それとも阻害してしまうのか気になっておりまして。筋肉について私よりも知識のあるホンドー殿の意見をお伺いしたい」


「どう、と言われましても。素人意見と付け加えますが、見たところ回復魔法は再生のように見えました。火傷した皮膚を捨てて新たな皮膚が現れたでしょう。時間を早送りしている印象でしたので、鍛える際に使っても問題はないかと。勿論、実験、観察など必要だとは思いますが」


 なるほど、と話をしていると仕切りの向こうから。


「うわっ!」


「こ、ここは! サ、サラマンダーは! うっ」


 医師ともう一人の声。どうやら回復魔法のおかげでケープが目覚めたようだ。


「ケープさん、落ち着いてください。怪我をされているんですよ。すぐに治りますけど」


「ああ、くそ! そんなことよりサラマンダーはどうなった。ハイドはどこだ!」


 中に入れば暴れるケープを医師が必死に抑えている。

 目覚めて混乱している。これでは話もままならないと、バリッシュに目配せをする。バリッシュはすぐにケープを押さえつけて無理矢理ベッドに寝かせた。


「ケープさん、一度落ち着いてください。貴方はサラマンダーの攻撃を受けて倒れたんです。またそれについて謝罪に参ったのですが」


「違う、違うぞ! サラマンダーは悪くない! ハイドだ、ハイドの奴はどこに行った!?」


 ……何だこれは? サラマンダーは悪くないと、庇っているにしては様子がおかしい。それにハイド? ハイドって誰だ?

 え? ケルピーの召喚主? 何でそんな人が今回の一件に関わっているんだ?


 ……もしや、私の想像とは違う何かが起きたのか?


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