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狼の獣人は思わぬ再会を果たす

「戦士だ! 戦士を出せ!」


 魔法の強さは認めよう。脅威だと。俺たちでは対処法がないと。

 しかし戦いは戦士の数と質で決まる。貧弱な盾ではどれほど優秀な魔法が使えようが、使う前に喉元を食いちぎればよい。


 他の国主どもは俺に呆れた視線を向けているが、馬鹿者どもが。

 広大な国なことは俺も認めている。戦士の数も広大な国に似合う数を用意しているだろう。

 しかしその広大さが足枷となる。広いが故に村や町の数も膨大。そこを守るために戦士を置けば、当然こちらに差し向けられる戦士の数には限りがある。

 となれば、重要となってくるのは戦士の質だ。戦士の質で勝てれば、まだ希望はある。ダイリは勝てるかもしれない。


 戦士の質をこの目で確認しない限り、俺は負けを認めるつもりはない!


「戦士、ですか? 護衛なら連れて来ていますが……。しかし、国主自ら戦うと言われましても。……見極められるほど強いんですか?」


「ダイリの国主は代々最強だ!」


 強さを疑われるなど、ダイリでは最大の侮辱!

 思わず飛び掛かりそうになるも理性で何とか衝動を抑え、唸り声も出さないように気を付ける。


「あー、お嬢ちゃん。ダイリはな、国主が死んだらその時の最強の獣人が国主になるんや。だからダイリで一番強いんはダイリ。ちなみにレキは人気投票で一番の奴が、ゲンブは十の名家で持ち回り。カコウとうちらコハクは同じ家から国主を選出しとる。すまんな、教えんでも問題ないと思っとたんやけど、ダイリがこんなことを言うとは……」


 強さがないから他の国主は皆軟弱なのだ。強くない奴がどうして生き残れると言うのか。

 ただ女はコハクからの説明を聞いて全てに納得したように頷いていた。

 全てに理解を示すとは所詮この女も軟弱の部類。……いや、魔法は侮れん。軟弱ではないのかもしれん。


「ええっと、ちょっと待ってください。……分かりました。ダイリさんがそれでご納得頂けると言うのであれば、戦士を出しましょう。場所はすぐそこの庭園でよろしいですか?」


「構わん!」


 寺の者には悪いが、気が抑えられない。遠くへ移動するなどとても我慢できない。

 では、と言って俺は一足早く庭園へと飛び込む。気が急いたこともあるが、それ以上に戦いの場となる庭園の様子を確認しておきたかった。


 足場は土、石、砂利と様々。大半が土だが砂利には注意しないと足を取られる。逆に石は強い踏み込みが出来るので利用したい。

 障害物は様々だが、注目すべきは中央の岩。魔法で溶かされたとはいえ障害物としては十分。いや、溶けた部分が危ないのではないか?

 溶けたところを見てみるが、流石に冷えたのか固まっている。ただ岩は熱いだろうし、溶けたことで危険な突起などが出来ているかもしれない。注意する必要はありそうだ。


 さて他には、と庭園の様子を探っているとぞろぞろと人がやってきた。俺の所の護衛や他の獣人、そして獣人以外も混ざっていることから護衛がまとめてやってきたということか。

 観戦か。なるほど。


 戦士の質を知っておきたいのは皆同じ。他の国主は護衛に見てもらわねばどれほど強いのか理解できないから呼び出したのだろう。

 そして獣人ではない護衛の中に一人だけ見たことのある奴がいた。


「貴様は!」


「おや? 貴方は確か」


「ん? バリッシュさん、お知り合いで?」


 西の平原で出会ったおかしな生き物を連れていた変な奴! こいつが護衛なのか。


「ふは、ふはははは! お前程度が護衛なのか! 俺にても足も出ず、ただ一度俺の態勢を崩すのがやっとだったお前が!」


「はい? 手も足も出ず? ……ああ、バリッシュさん。もしかしてここに来る前のあの一件のお相手の方で?」


「うむ。あの時の血の気の盛んな相手ですな。いやはや、獣人。しかも国主だったとは気付きませんでした」


 何たる幸運! 戦士の質を見ると言う目的は終えたが、ここは更に強欲にその先の利益も頂くとしよう。

 このバリッシュ? という戦士の質はそこそこに良い。攻撃能力は非常に低いものの、俺の攻撃を耐え続けていた根性は評価に値する。

 感覚では対カコウの大型獣人との戦闘に近い。あちらの方が防御こそ弱いが攻撃能力は高い。


 ここでバリッシュと言う戦士を圧倒して観戦している女にダイリの、獣人の力を見せつけて安易に手を出して良い存在ではないことを示す。そして向こうの介入を許す間もなくダイリが他の獣人の国を滅ぼして統一すればよい。

 獣人の国全ての力があれば女の国など恐れる必要などない。


「だとすると、可哀そうなことになりますね。まさか自分が遊ばれていたと思い知らされるなんて」


 ……今、何と言った?

 言ったのはバリッシュの隣にいる、……何だあいつは? 護衛、ではない。筋肉はないし、足取りもとろい。年齢もゲンブほどではないが歳を経ている。全盛期ではないことは明確。

 ああ、魔法使いなのかと一瞬納得しかけたが、あの女もその動きには戦いの心得があるのは見て取れた。しかしあのおっさんからは何も見て取れない。


「誰が遊ばれていただと……。ふざけたことを言うな! 俺はそいつを切り裂いて真っ赤にしてやったぞ! 生きているとは思わなかったが、大怪我を負わせたぞ!」


「……え? 切り裂いて、大怪我? 私には傷跡もなく至って健康的に見えるのですが?」


「……魔法だ! コハクの回復魔法で怪我を治してもらったんだろう! その手の小細工は俺には通じん!」


「はい? では貴方の中ではバリッシュは生死不明となるほどの大怪我を負いつつコハクまでやってきて、回復魔法を受けて今は元気な姿だと、そう仰るわけで?」


 そんなこと本当にあり得ます? とばかりにこのおっさんは俺を馬鹿にして目で見てくる。

 バリッシュの前にこのおっさんを八つ裂きにしてやろうかと思ったが、そのおっさんの前にバリッシュが立った。


「まあまあ、それくらいにしておきましょう。私が戦ってそれで終わりなのですから。その結果で全てははっきりします」


 ……ふん、確かにな。ここで俺がバリッシュを倒してしまえばあのおっさんがただの嘘吐きになるだけ。言葉ではなく、力で語るやり方の方が楽だしな。


「バリッシュさん。技を使ってはいけませんよ。今はまだ付け焼刃にも劣る技。いつも通り戦った方が強いのですから」


 技の封印? 随分と舐めた真似をしてくれる。俺を誰だと思っているのか。

 ならば良いだろう。一瞬だ。速攻でバリッシュを倒し、俺の強さを全員に刻み込んでやる!


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