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おじさんは東の開拓地で気付く

 誰かの手のひらで上手に転がされているような気がしてならない。


「では私と共に行く人ですが、護衛の他にこの地に詳しいグンズとバルカを同行させます。ですが今回の相手は複数の国です。不用意な発言は厳禁。食事以外は口を開かないくらいの覚悟で同行してください」


 派閥の長たちを集めた会議室。そこでリリーナは想定外の速さで来た返事に動じる様子なく、淡々と話しそれへの対応を皆に伝える。


 提案された会議への参加。出来る限り丁寧に喜んで参加することを伝えた二日後に開催日時と場所、そして参加者を知らされた。

 開催は一週間後。場所はこの提案をしてきた国、コハク。そして参加者は東の国王全員。


 順調を通り越してありえない速さだ。エルフ程度の小さな都一つの国ならば可能だろうが、聞いた話では町をいくつも抱えているような国ばかり。

 そんな国の王たちを数日に集めさせる? 普通であれば不可能。それともこのコハクと言う国は強大な国で他を属国として従えているとでもいうのか。

 更にこちらへの通達の速さ。完全にこちらの返答を見越して行動しているとしか思えない。


何が起きているのかは全く分からないが、主導権がこちらから程遠い所にあるのは確か。情報が少ないことは度々あるが、ほとんど分からない状況と言うのは非常に怖い。どんな裏があるのやら。

 怖いことだらけなので多くの護衛を付けたいが、相手におかしな印象を与えないようにサラマンダーやケルピーなど露骨な召喚獣は待機してもらう。


 私は誰かが言わなければ召喚獣とは分からないだろうし、グレイも私なら誤魔化せる自信があるので連れて行く。何せグレイがいれば最悪全てを無に葬れる。


 同行者に選ばれたバルカは素直に喜びを見せ、逆にグンズは厳しい条件に不満を口にする。


「ちっ、手柄の独り占めかよ」


「……手柄? 貴方は何を馬鹿なことを言っているのですか! 自分がどこに行くのか分かって言っているのですか!?」


 しかしそれがリリーナの逆鱗に触れてしまった。


「良いですか! これから向かうのは未知の国で、会うのはそれぞれの国の王なのです! 最悪、言葉一つで戦争になる可能性があるのですよ!? 人が数千、数万と死ぬ戦争です。それを引き起こした責任を貴方は取れるのですか! 貴方一人の手柄と、数万の命を比べるつもりですか!?」


 ただその怒りはあまりにも当然であり、その場にいる全員が何も言えなかった。

 最悪、自分が戦争の引き金を引くことになる。それは私を含め、リリーナ以外誰も考えてすらいなかった。

 先ほどまで同行するグンズとバルカに羨望の眼差しを向けていた派閥の長たちも、その責任の重さを理解して一斉に顔を背ける。


 その責任の重さにバルカは先程まで見せていた喜びの表情が消え、意味もなく周りに目を向けているが。


「……その通りだ。すまない。指示通り必要な時以外に口を開かないことを約束する」


 グンズは責任の重さを正面から受け止め、意外にもすぐに謝罪した。更に同行について嫌がる様子はなく、同行中は指示に従うことまで約束した。

 肝が据わっているな。そう言えばルルクス伯爵は腕に自信のある行動力のある者としてグンズを選んだのだったな。行動力があれば自然と肝も据わるか。


 そして内心見下していたグンズが責任の重さに負けず、立派な態度を取られては他の長たちもそれに負けられないと背けていた顔を前に戻す。


「私たちにお手伝いできることがあれば何でも仰ってください」


「ありがとうございます。今回は同行させることは出来ませんが、いずれは皆さんにも向こうに行ってもらうことになるでしょう。その時の準備は怠らないようお願いします」


 見事に全員にこれから行うことの責任の重さを理解させながら、それに怖気させることなく前向きな姿勢を維持させることに成功した。

 リリーナはそんな意図はないのだろうが、成果としては上々。これなら多少相手の手のひらで転がろうとも踏ん張れるだろう。


 安心して東の国に向かうことが出来そうだ。




 問題が発生した。

 東の国の会議に参加すべく移動を開始しようとしたわけだが、道が整備されていないため馬車は使えない。

 そのため、馬に乗って移動することになったのだが。


「ううむ。やはり無理か」


 筋肉の男、バリッシュが乗れる馬がいなかった。

 大柄な上に筋肉の塊のバリッシュだ。体重は成人男性の倍近くありそれに耐えられる馬がいない。

 とはいえ、バリッシュは護衛の中でも最高戦力。置いて行くわけにもいかず、バリッシュのみ徒歩での移動となった。

 そのため、移動はゆっくりとなったのだが。


「まあ、悪くないか」


 ここ最近はずっと忙しくゆっくりする時間がなかったため、草原をゆっくりと進むのは良い気分転換になった。

 まあ、この移動中にも出来ることをやろうと考えているため、そこまで休めるわけでもないが。


「ん? トモダチ、何それ」


 馬の乗り方を知らないグレイは小柄な体格なので私と相乗りしている。だから私はグレイの知恵を借りようと懐から手紙を取り出す。


「ああ、ルルクス伯爵に調べ物を頼んでいたんだ。大したことではない。ニックが召喚獣を連れていなかったのが気になっただけでな。ただ返事の意味が分からなくてな。グレイの知恵を借りたい」


「ボクに手伝えることなら喜んで」


 期待を込めて手紙を開く。手紙に何と書いてあるかは読めないが、すでにリリーナに読んでもらっており内容は把握している。


「ニックの召喚獣はすでにいない。召喚の儀を行った際に現れたのは小人ほどの小さな鉄の人形であった。創聖教の説明では時折召喚の負荷に耐えられず死んでしまう召喚獣がいるとのこと。またこの鉄の人形は創聖教が回収した。……私でも耐えられた召喚に耐えられないこの鉄の人形って何だと思う?」


 私は誤って何かの玩具を召喚したのではと考えている。召喚にも失敗する可能性がある。そうなると送還についても少し慎重になる必要が出てくる。召喚が失敗するのであれば送還も失敗するのではないかと。


 しかしグレイの考えはまるで違ったらしく、私の話を聞いて酷く驚いていた。


「……え? まさか、そんな! たまたま、じゃない。時折あるってことはその都度同じ対応をしているはず。つまり創聖教の目的は」


「どうした? どういうことだ、グレイ」


「トモダチ、ニックが召喚したのは鉄の人形なんかじゃない。ロボットだよ。充電が切れたロボットだ。それを創聖教が回収している。ロボットに使われている金属、チタンとかが欲しいなどの理由でない限り、創聖教が欲しているのは中身。データのはず。創聖教はロボットから知識を取り出そうとしているのかもしれない」


 ……何だと?


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