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子爵令嬢はかつての学友に呆れる

 間が悪い、というのはどのような場所でもあること。対処法は様々だが、その一つは場をリセットすること。

 間が悪いことをなかったことにする。


「グンズさん、バルカさんでよろしいでしょうか? どうやら私たちについて連絡に不備がありご存じない様子。ですので一度こちらの立場をご説明いたします。どこか話が出来る部屋に案内していただけませんか? 後そこの人たち、そのサラマンダーとケルピーは私たちの護衛ですので接触は控えてください」


 開拓団の偉い二人を巻き込んでこの場を離れれば、新入りであるはずの二人では話しかけづらく止められないと思ったのだが。


「待てよ、おっさん! 召喚獣の分際で勝手なことを」


 考えが甘くサラマンダーに声をかけていた召喚主が食いついてきた。やはり召喚獣を低く見ている者に知られていると中々に面倒だな。

 無視するか、しかしそうするとグンズとバルカから甘く見られる可能性がある。普通なら何の問題もないのだが、今後のことを考えると……。


「ケープ! 私たちの役割を邪魔しないで頂きたい! 話があるのならば後で聞く。今はおとなしくしていろ!」


 リリーナが一喝! それだけでサラマンダーの召喚主、ケープを黙らせた。

 召喚獣でおじさんな私と違い、リリーナは公爵令嬢。しかも北の最前線に行ったことは知っているはず。それなのに今は東のここにいる。その意味を考え、答えが出ずとも自分たちが容易に関わって良い案件ではないのは察せられるはず。

 ケープは私たち召喚獣を強く睨むも動くことはなかった。


「それでは案内をお願いします」




「大丈夫でしょうか、ポーラは」


 会議をする部屋があると言われそこに案内される途中、リリーナが不安な顔をして振り返りながらそう言った。

 実は案内を受ける直前にポーラがサラマンダーたちの召喚主の説得を買って出たのだ。

 ポーラについてはリリーナの親友と言うこと以外に知らず、真意が読めなければ説得が可能なのかも分からない。だからポーラの召喚獣であるグレイに目を向ければ、ボクが補佐する、というので任せた。


 はっきり言って大丈夫かと問われれば何も言い返せない。ポーラについて何も知らず、グレイについても交渉能力が高いと考えたことがない。攻撃面で言えば世界一なのだが。


「信じなさい」


 半ば投げやりな答えだがそれ以外に答えようがない。私はグレイを信じる、だからリリーナはポーラを信じろ。

 そうですね、とリリーナが前向きになったところで会議室の扉が開いた。




「くそっ! あのおっさん、召喚獣のくせに!」


 会議室から離れた別室。そこでサラマンダーの召喚主のケープ・ラス・リッターが壁に向かって八つ当たりの蹴りを放ち、ケルピーの召喚主のハイド・ロス・タックは無言で椅子に座りながらも貧乏ゆすりをしている。

 みっともない。それ以外の感想が浮かばなかった。


 私は貴族の手本とも言えるリリーナと共に育った。それから見れば私はまだまだ貴族として自覚も覚悟も足りないのだろうが、目の前の二人は貴族なのかすら怪しいだろう。

 そして先程からあのおじさん、ホンドーのことを見下しているようだが、あの人は北の要のボルダー辺境伯相手に交渉し、東の盟主と言えるルルクス伯爵から認められているような人だ。それに、詳しくは知らないが学院で起きた問題も解決した様子。

 

 彼らにホンドーと同じことが出来るだろうか。無理だろう。半分の成果も出せない。出せていないから彼らはここにいるのだ。

 

「みっともないから止めたら? 何を言おうと、何をしようと召喚獣は帰ってこないよ」


「は!? ポーラ、ふざけんなよ。人の召喚獣を奪いやがって! あいつがいなくなった所為でここの巡回もままならないんだぞ」


「ケープの言い様は乱暴ですが事実です。返して頂きたい。色々と支障が出ているんです」


 はは。もはや笑えてくる。召喚獣に頼らなければ何も出来ないのに、それを粗雑に扱って。更に見下しているのだから。

 思えばボルダー辺境伯もルルクス伯爵も召喚獣に頼ることはあっても、頼り切ってはいなかった。命令している姿もほとんど見ていないし、放任していることが多かった気がする。


「じゃあ無理矢理連れ戻せば? 出来ればの話だけど」


 リリーナも私もどちらかと言えばボルダー辺境伯たちのように召喚獣を自由にさせている。だからたまにお願いすれば、今のように私の護衛として控えてくれる。

 だって召喚獣は、強いから。


「何か勘違いしているのかもしれないけど、私たちはサラマンダーとケルピーを捕まえて従わせているわけじゃないよ? あのおじさんが一緒に来ないかと誘って行動しているだけ。そもそも、何で召喚獣が召喚主の下から離れているの? 私たちが連れているより、そっちの方が問題じゃない」


 召喚獣には知能があり、戦闘能力があり、私たちよりも優れた何かを持っている。だから敵対しないために、友好であるために生涯の相棒として傍らにいてもらう。

 それを怠ったから、学院では問題が起きた。生涯の相棒とは決して表向きの体の良い言葉ではないのだ。

 忘れてはならない事実だったのに、どうしてこの二人はそれを忘れてしまったのか。


 原因の一つは学院なのだろうが……。


「勝手に出て行っただけだ。俺は何も命じていない」


「命令されるのが嫌だから出て行ったんじゃないの? 蔑ろにしていたんじゃないの? 私が知る限り、ボルダー辺境伯もルルクス伯爵も召喚獣を対等に、大切に扱っていたよ」


 私は、どうだろうか。グレイをキモ可愛いと思っているし、大切にも思っている。ただ対等かと言われれば違う。どちらかと言えば、私が引け目を感じている。グレイの方が多分、優秀だから。

 だから僅かに私とグレイの間には距離感があるが、それが悪いとは思っていない。グレイも特に気にしている様子はなさそうだし。


「……僕たちにどうしろっていうんですか」


「知らないよ。好きにすれば? でも召喚獣は帰ってこないだろうね」


 私はリリーナのように、ホンドーのように優しくはない。わざわざ手を差し伸べて助けて上げようなんて思わない。

 それに、どうすれば良いかなど分かっているはずだ。召喚直後の不用意な言葉で召喚獣との仲が最悪になり、今は関係を修復して改善中の人を知っているはず。


 色々と悩んで、回り道をしていたが、リリーナは本気で向き合っていた。

 後は君たち次第。好きにすればいい。


 うな垂れて、何も言わなくなった召喚主二人を置いて私は会議室に向かった。


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