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おじさんは知り合いを見つける

 ついに東の最前線に向けて出立する。

 長かったような気もするが、騒動のおかげか短かった気もする。

 見送りに来てくれたルルクス伯爵とセイドウに手を振り、町を出る。

 リリーナとポーラは東の最前線よりもエルフの森の方が気になるらしく、先ほどからあれこれと話し、ストロンガー夫妻は二人だけの世界を作り上げている。

 その中でももはや有頂天としか形容できないのが。


「いやぁ、楽しみですねえ。セーイチさん、グレイさん」


 商人のマイケルだ。ずっと商工会に引きこもっていた影響か、エルフの森に近づくその一瞬が楽しくて仕方がない様子。


 対して私とグレイは。


「トモダチ、早く終わらないかな」


「そうだな。とりあえず東以外の所に行きたいな」


 やる気をなくして馬車の中で寝そべっている。


 東でやることはもうない。私たちの目的は元の世界への帰還。そのための手段として竜が作った召喚魔法、その召喚魔法を人でも使えるように改造された召喚魔法、そしてその二つの召喚魔法から送還魔法を作り出せるほど魔法に精通している知者を探している。


 三つの内、竜が作った召喚魔法について手を打ってあるから問題がない。

 人が使うために改造された召喚魔法は創聖教が所持しており、そちらについては権力者や南の大陸の関係者とパイプを作ることで対応しようと考えている。

 魔法を改造できるほどの知者については候補すらいないが、学院長のバロンが元研究者だったように、魔法の研究団体は国が抱えているはず。そちらに頼むことも視野に入れている。


 ではこれから東に行くことで手段の三つのどれかを手に入れる、もしくは手に入れるための有効な何かがあるだろうか。いや、ない。

 竜が作った召喚魔法の場所は分かっている。北だ。東は一切関係ない。

 人が使うための召喚魔法は創聖教が所持している。それに対処するための権力者との繋がりもルルクス伯爵で十分。東にルルクス伯爵以上の権力者はいない。いや、獣人の国の王やエルフの王などはルルクス伯爵よりも権力者だろうが、創聖教に対して何の影響力を持たないので意味がない。

 そして魔法を改造できる知者は東にいるだろうか。いるようには到底思えない。エルフや獣人に僅かな期待を寄せるのみ。


「絶対に成功してみせますから、期待していてください」


 そんなこちらの気持ちも知らず、マイケルは楽しそうだ。その楽しさを欠片でも分けて欲しいものだ。そうすればこの移動の時間も退屈せずに済む。

 あー。マイケルの商売の成功も意味はある。マイケルの影響力が増せば母国での発言力が増し、南の大陸で動きやすくなる。

 

 今はまだ下準備の時期。そう思えばこの馬車の移動も、……退屈なのは変わらないな。ただ気持ちの切り替えには十分。


「さてグレイ。これからの作戦だが」


「東の最前線がどうなっているか次第」


 うむ、その通りだな。はい終了。

 結局のところ、東の最前線で時間を取られるのは必然。予定では二年、よりもやや少ない期間は東の最前線でリリーナたちは指揮を覚える必要がある。しかし五十年以上生きた私でも二年は少しばかり長い。

 だから北の時と同じように手柄を上げて早々に別の所に行きたいと言うのが本音。


「自分の足で、行きたいところに行ければ非常に楽なのだが」


 最大の問題は私の自由だ。私はリリーナの召喚獣。勝手に離れて行動するわけにもいかず、またリリーナの召喚獣、公爵家の召喚獣と言う後ろ盾がなければ私は早々に死ぬ。その程度にはこの世界は生きるのに厳しい世界だ。


「シャクドウみたいに派遣の形であちこちに行くとか。護衛ならバリッシュに出会えたし、そういう人を雇えば?」


 案としては悪くはないのだが、問題が多い。

 まず自由度がそれほど変わらないということ。行動を縛る人物を変えるだけ。それと護衛もバリッシュのような紳士に必ず出会えるとは限らない。むしろあれは稀有な例と言える。

 また派遣された先の人物の人間性も気になる。信用できないし、この世界は召喚獣に厳しい。


 やはり現状ではリリーナから離れるのは難しい。ならば早々に東の最前線で功績を上げて呼び出させるようなことをすればよい。

 幸い、東の最前線にはルルクス伯爵が教えてくれた爆弾があるのだからな。

 ハッハッハ!


「はぁ。何でわざわざ問題があると分かっている場所に行かなければならないのか」


「それは分かる。ボクも問題のある部署に行けと言われたら嫌だと言いたくなるよ」


 私とグレイは最初の時と同じように馬車の中で寝そべり、これから起こるであろう問題を考え、やる気をなくした。


 


 エルフの森、と言っても妖精が飛んでいたり、不思議な木々があったりなど幻想的な要素は一切なく、至って普通な森だった。

 北のあの熱の魔石が多く眠る谷程度の感動は期待していたのだが。


 それからマイケルが先導しエルフの町に着く。事前に連絡をしてあるので問題なく入れる。ただ木で出来た簡素な門の前に檻があり、その中の生物には見覚えがあった。


「……グレイ。あれは」


「え? ああ。何でこんなところにいるのか分からないけどあれは」


 檻の中にはサラマンダーとケルピーがいた。


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