おじさんはルルクス伯爵を惑わす
本日二度目の更新となります。
台風にご注意ください。
「このような宵の口にどうしましたか?」
公爵家の召喚獣の肩書きか、それともセイドウの力か。微妙な時間帯であったがルルクス伯爵にあっさりと面会が出来た。
「実は報告したいことがございまして。まずはこの者たち」
そう言ってシャクドウとセイドウに連れて来させていたチンピラを差し出す。
こいつらは商工会で捕まった者たちとは別、私がルルクス伯爵邸に向かう道中で襲い掛かってきた者たちだ。
そのチンピラたちはそのまま屋敷の警備に連れていかれたが、問題はない。あいつらをルルクス伯爵に見せることだけが目的。
「実は商工会でも似たような者たちが暴れておりまして」
「なるほど。貴方たちが狙われていると」
そうだろう、普通ならそう訴えて来て警備を増やすように願うと思うだろう。だが、残念ながら違うのだ。
そんな警備が五人、十人増えようと意味はない。私はそれよりももっと力のある人物に味方となって欲しい。
「違います。狙われているのは、ルルクス伯爵。貴女です」
「……私が? 説明を求めても?」
驚きと疑いの視線。まあ、そうだろう。あの公爵家のニックがタイミングよく登場したということは、ルルクス伯爵も関与しているのは明らか。そもそも公爵家の人間が来ているのを領主が知らないわけがない。
ルルクス伯爵からすれば狙われているのはこちらだと分かっているのだ。
だからそこを突く。
「ご存知かどうか知りませんが、商工会がエルフとの商売のとっかかりを掴みました。私たちと共に来た商人がエルフの興味を引く品を持ってきたそうです」
「何ですって!」
知らなかったようだ。詳しくは商工会会長のルダンダに話を聞いてもらおう。ルルクス伯爵がルダンダに使いの者を出している間に私は話を進める。
「まさにその時に商工会が襲撃されたのです。幸い、あそこには戦士が多くおりましたのですぐに襲撃犯は捕まりましたが、商工会がエルフとの商売のとっかかりを得た直後での襲撃。目的はエルフとの商売の阻止。つまりはルルクス伯爵領の発展を嫌う者が画策していると思われます」
「……なるほど。ですがその場に貴方たちもいたのでしょう? 貴方たちが狙われているのでは?」
「その可能性は低いと思われます。何故なら私たちは商工会の中で商工会会長のルダンダに商品を見せてもらっていました。そんな時に外で騒ぎがあり、私たちが見た時にはすでに襲撃犯は捕まっていました。私たちを狙ったのであればもう少し警備の薄いときに狙うはずです」
ううむ、と手を顎に当て考える仕草をするルルクス伯爵。徐々に天秤がこちらに動いてきているのが分かる。
「だが、ここに来る最中も襲われたと言っていませんでしたか?」
「それです。それこそが狙いがルルクス伯爵である証。ルルクス伯爵だからこそ明かしますが、こちらをご覧ください」
狙い通りに物事が進んだ瞬間はいかなる時よりも嬉しい。私は笑みを浮かべぬように注意しながら懐から布袋を取り出してルルクス伯爵に中身を見せる。
「これがエルフを食いつかせた品。竜の鱗です。私は商人からこれを守ってほしいと受け取っていました。商工会は商人を守るがそちらは囮、本命である商品は秘密裏に私が受け取って守る。私は公爵家の召喚獣であり、この通り強力な護衛もいます。普通であれば狙わない。なのに道中で襲われました。おそらく情報が漏れていたのでしょう、だから竜の鱗を奪うために私を襲った。商工会と竜の鱗を預かっていた私を狙った以上、相手の狙いは明白ではありませんか?」
証拠が二つもあれば信憑性は増す。更にここにルダンダが来て証言をすればどうなるか。
これで私の言葉を信じさせられるか? 無理だ、しかしその必要はない。ただあのグラン公爵家のニックや、中央の貴族の刺客を疑ってくれればそれで良い。
リリーナ公爵令嬢を狙っていると見せかけて、本当の狙いは東で調子に乗って影響力を拡大させつつある自分ではないか、と。
少なくとも、これでルルクス伯爵は消極的な味方になってくれる。何せ竜の鱗を持つ私が襲われ、竜の鱗が奪われてしまえばエルフとの商売が出来なくなる。それによる不利益は、中央とのパイプを得る程度では到底補えるものではない。
「その竜の鱗、私の方で預かりましょうか?」
「いえ、これは商人より信頼された私が受け取った物。最後まで守り通すのが道理。ご安心ください。私は非常にか弱いですが、強力な護衛がおりますので」
この竜の鱗こそが私の命綱。渡すはずがない。そんなことはルルクス伯爵も分かっていただろう。言うだけ言ってすぐに諦めた。
「……そうですね。ルダンダからも話を聞きますが、警備を増やしておきます」
勝利を確信し、ルルクス伯爵邸を後にしようしたが。
「そうだ、ホンドーさん。以前にお話しさせてもらった、私の召喚獣を貸す代わりに、私の召喚獣の代わりをしてもらう件なのですが」
想定していなかった反撃を食らうことになった。




